株式会社リスポ(東京都港区、代表取締役:黍田龍平)は、EC向け積立決済SaaS「Respo(リスポ)」の提供を加速するため、プレシリーズAラウンドのファイナルクローズを完了し、1stクローズと合わせ累計2億円の資金調達を実施したと発表した。
本ラウンドには、農林中金キャピタル株式会社、グローバル・ブレイン株式会社とShinhan Venture Investment Co.,Ltd.が共同運営する新韓-GBフューチャーフロー投資事業有限責任組合、かんぽNEXTパートナーズ株式会社(JP LIFE NEXT1号投資事業有限責任組合)、個人投資家の澤田秀太氏が参加している。
今後は、積立決済(Save Now, Buy Later=SNBL)の市場創出を一段と推し進め、導入企業の拡大、業界横断的な展開、マーケティングを強化していく方針である。
Respoは、企業の自社ECに“積立決済機能”を容易に組み込めるSaaSであり、タグ埋め込みやAPI連携を通じて短期間で導入可能である。消費者は毎月の積立によって計画的に支払いを行い、所定額に到達すると商品・サービスを購入できる。
いわゆる後払い(BNPL)とは異なり、負債を前提としない購入モデルである点が特徴で、計画性と安心感を両立する決済体験を提供する。すでに家電、家具・インテリアなどの高価格帯ECで導入が進み、今後は旅行、ファッション/アパレル、コスメ、アウトドア、コレクターズ商材などへ拡張を見込む。
EC市場は拡大を続ける一方、広告費高騰と競合激化により新規顧客獲得の効率が低下している。企業はLTV向上やリピート率改善を軸とした“既存顧客深耕”に舵を切っており、Respoが提供するSNBLはこの潮流に合致する。
積立期間中のコミュニケーション(公式LINE等)を通じたカゴ落ち防止やクロスセル、購入達成時のキャッシュバック・特典付与によるロイヤリティ向上は、価格理由で離脱していた層の回収と関係性の長期化に資する設計である。導入側にとっては、積立という「未来の購買予約」を通じて需要の平準化と収益予見性の向上が期待できる。
SNBLが注目される背景には、消費者の慎重化と持続可能な消費志向の高まりがある。計画的に貯めて買うという生活文化は日本に根づいており、学費・旅行・年金などに通底する“積立の作法”をECに移植するRespoのアプローチは親和性が高い。
代表の黍田氏は、SNBLを「単なる決済手段ではなく、事業者に新たな顧客接点と持続的成長をもたらす仕組み」と位置づけ、日本の消費習慣に根ざしたモデルでグローバルに通用するサービスを志向している。
本調達資金は、①ユーザー体験向上に向けた機能拡充、②導入企業拡大に向けたマーケティング、③多業種展開を見据えた営業推進に投じられる。Respoは「積立購入」という選択肢の一般化を通じて、消費者には健全な購買、事業者にはLTVの持続的向上と新規セグメント開拓を提供する。
結果として、ECの集客依存を相対化し、プロダクト価値とコミュニケーションで関係を醸成する“次の成長様式”を描く構えである。
会社概要等
・会社名:株式会社リスポ
・代表取締役:黍田龍平
・設立:2021年5月
・事業内容:積立決済機能を導入できる「Respo(リスポ)」の開発・運営
・URL:http://respo.io/
・サービス資料請求フォーム:https://respo.io/business/request
ZEROICHI編集部の注目点
第一に、「計画的消費×EC」という社会実装の方向性である。価格起点の瞬間意思決定を後押しする後払いから、家計の安定と納得感を前提とする前払い型へと軸足を移すSNBLは、消費を“加速”ではなく“整流”する仕組みであり、生活者の安心と企業の予見性を同時に高める点で持続可能性に資する。
第二に、積立期間という“時間の資産化”である。従来は離脱が発生していた「検討中の時間」を、通知・提案・特典の設計で価値化し、関係の深度を増すCRMの新レイヤーを形成している。
第三に、導入の軽さと業界汎用性である。タグ1行からの実装は中小規模のECにも門戸を開き、旅行や高額耐久財、趣味嗜好の“推し活”領域など、需要形成が時間を要するカテゴリーで波及余地が大きい。
ECの成長は、広告依存とディスカウント競争の限界に直面している。RespoのSNBLは、価格弾力性の高い領域で“買えないから買わない”を“準備してから買える”へ反転させ、企業には「未来の売上の可視化」、生活者には「目的のために貯める歓び」を提供する。
日本に根ざした積立文化を現代のECに結び直す本件は、決済の進化を越え、購買体験の設計思想を更新する挑戦と評価するに値するのである。
※本記事は、原文から一部編集・要約して掲載しています。