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心臓外科手術の負荷を減らす方法とは?【心臓血管外科医・板谷慶一が語る 「予測医療」の重要性 その2】

堀江貴文氏は6月28日、心臓血管外科医の板谷慶一氏を取材。「予測医療」の重要性などについて話を聞いた。負荷を減らすパワートレインの設計思想とは?(初回配信日:2017年6月28日)

血流によって心臓の負荷を見る「予測医学」

板谷 僕は心臓血管病に対して、「どういう診断ができて、どういう治療が選べるか」という次のステージに行きたいと思っているんです。例えばクルマのエンジンには熱による損失とか、摩擦による損失とか、いろいろなパワーの損失がありますよね。エコカーはこの損失を減らしてパワートレイン(エンジンの動力をタイヤなどに伝えること)を増やすという設計思想を持っている。人間で言えばエンジンは心臓です。血管が狭かったり、弁からもれていたりすると、そこで血流が乱れてエネルギーが失われます。僕はその損失を減らして心臓のパワートレインを増やしたい。心臓のパワートレインとは血液が酸素を全身に届ける力です。僕は、パワートレインのことも考えて手術をするべきだと思っています。

堀江 はい。

板谷 今現在、心臓の機能に問題がなくても、病気が悪化すれば、心臓の負荷が増えていきます。心臓の負荷を見ていれば「まだ心臓はお元気のようですが、このままいくとまずいことになりそうです」ということが言える。取り返しがつかなくなる前のタイミングで手術をすることができる。

堀江 心臓外科手術ってきついですもんね。

板谷 きついです。

堀江 あれは、基本的には開胸手術なわけですもんね。

板谷 そうです。

堀江 肋骨も割るんですか?

板谷 胸骨ですね。

堀江 胸骨か……。

板谷 胸の骨を切って、人工心肺を取りつけます。

堀江 負担はでかいですよね。

板谷 でかいですね。同じ手術でも病状が進行していればしているほど、患者さんのリスクは上がっていきますし、手術を行う側の難易度も高くなります。

堀江 うーん。

板谷 でも、それは追い込まれてから手術をするからそうなるんです。例えば、ある患者さんは冠動脈のプラークが1年間で3倍くらいに増えていて、別な場所にもプラークが増えていた。もし、半年後に一度検査をしていれば、冠動脈にステントを入れるなどの血管内治療ですんだ可能性もある。

堀江 ステントだったら、開胸手術をする必要はないですもんね。

その3に続く

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Photograph/Edit=柚木大介 Text=村上隆保

板谷慶一/Keiichi Itatani

心臓血管外科医、流体力学者 1977年生まれ。東京大学医学部卒業。血流シミュレーションなどを開発し、血流エネルギー損失の計算法を発明。血流解析のパイオニア。2015年血流解析会社「Cardio Flow Design」(http://cfd.life)を創設。