堀江貴文と東北大学大学院歯学研究科教授・菅野太郎氏
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【堀江貴文×菅野太郎東北大学大学院歯学研究科教授】革新の歯周病治療器「ブルーラジカル」開発秘話

歯周病治療の新たな一手として注目されている『ブルーラジカル』。その開発に携わった東北大学大学院・歯学研究科の菅野太郎教授と堀江貴文氏が対談。従来の超音波スケーラーではできない、青色レーザー光と過酸化水素を組み合わせた新技術の秘密に迫る。

従来の歯周病予防の限界

堀江貴文と東北大学大学院歯学研究科教授・菅野太郎氏
©ZEROICHI

堀江貴文(以下、堀江) 菅野さんが開発した治療器は、歯周病菌を殺すんですか?

菅野太郎(以下、菅野) そうです。

堀江 超音波で?

菅野 そこが、ちょっと違います。歯科医院に行くと歯科衛生士さんが超音波スケーラーという器具を使って、歯と歯茎の間の歯垢を取り除いてくれますよね。でも、あの超音波スケーラーは歯垢を取るだけで殺菌はできないんです。しかし、私たちが開発した歯周病治療器『ブルーラジカル』は、器具の先端まで穴が開いていて、そこをプラスチックファイバーが通り、超音波振動をしながら青色レーザー光と過酸化水素を出しています。青色レーザー光と過酸化水素を合わせると『ヒドロキシルラジカル』という活性酸素が出て殺菌までできるようになるんですよ。

堀江 へー。

菅野 歯周病菌が水の中に浮いている場合であれば、歯磨き粉やうがい薬に入っている殺菌剤で殺すことができます。しかし、歯周病菌も生き物なので簡単に殺されたくない。そこで、自らの身を守るためにバイオフィルムという膜状になって外からの刺激を遮断します。お風呂のお湯を2日間くらい張りっぱなしにしておくと浴槽がヌルヌルしてくるじゃないですか。あれがバイオフィルムです。歯のヌルヌルも同じです。そのようなバイオフィルムになってしまうと、現在、歯科で使用している殺菌剤はほとんど効きません。もっとも効くのが過酸化水素です。しかし、口の中ではわずか3%の濃度のものしか使えないため、今まであまり効果がなかったんです。

堀江 そうなんですか。

「ヒドロキシルラジカル」でバイオフィルム内を99.99%殺菌

堀江貴文と東北大学大学院歯学研究科教授・菅野太郎氏
©ZEROICHI

菅野 しかし、青色レーザー光で過酸化水素を活性酸素に変えるとバイオフィルムの中の菌を99.99%殺せます。歯周病になると歯と歯茎の間に深い歯周病ポケットを形成するんですが、従来の超音波スケーラーで歯周ポケットの歯垢を取り除こうとしても、どうしても取り残しが出てきてしまう。また、6mm以上のポケットになると超音波スケーラーで歯垢を取り除いても歯周病の完治は難しくなります。

堀江 じゃあ、これまではどうしていたんですか?

菅野 歯周病ポケットが6mm以上になると外科手術をします。歯茎の肉を切って剥がし、歯周病菌のバイオフィルムや歯石を取って戻す。でも、これはむちゃくちゃ痛いんです。だから、患者さんも外科手術はやりたくない。すると「それなら歯を抜きましょうか」ということになる。重度の歯周病の患者さんは「外科手術をするか、抜歯をするか」という選択になります。でも、ブルーラジカルを使えばバイオフィルムの中の歯周病菌を99.99%殺せるので、6mm以上の歯周病ポケットがあっても歯茎の肉を剥がさずに治す選択肢が出てきました。それが従来の超音波スケーラーとの大きな違いじゃないでしょうか。

堀江 なるほど。

その2に続く

Text:村上隆保

菅野太郎(Taro Kanno)東北大学大学院歯学研究科教授
1967年生まれ。宮城県出身。東北大学歯学部・同大学院を卒業後、スウェーデンのイエテボリ大学客員研究員などを経て現職に。約17年かけて歯周病治療器『ブルーラジカル P-01』を開発。2024年より販売を開始した。