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「間が合う」とは何か? 【東工大大学院教授・三宅美博が語る コミュニケーションの質と未来への応用 その1】

堀江貴文氏は2月27日、東工大大学院教授の三宅美博氏を取材。「コミュニケーション」の質や応用などについて話を聞いた。(初回配信日:2017年2月27日)

スポーツでパスが通るのは、2人の間が合っているから

堀江貴文(以下、堀江) 三宅さんは“間(ま)”の研究をされているんですよね。

三宅美博(以下、三宅) そうです。「間が合う」って、どういうことかを研究しています。堀江さんは間ってなんだと思います?

堀江 コミュニケーションのタイミングとかじゃないですか。

三宅 そうです。スポーツを考えてもらうとわかりやすいと思うんですが、例えばバスケットボールでは味方にパスを出しますよね。そしてパスを出した相手は走りながらボールを受け取ったりする。当たり前のことだけれども、この「パスができる」っていうのは、よく考えてみると大変不思議なことなんです。

堀江 そうですね。

三宅 人間はそれぞれ主観的な時間を生きています。例えば、堀江さんが感じている5秒と、僕が感じている5秒は違う。でも、その主観的な時間をうまく合わせて2人はパスをしているわけで、2人の主観的なタイミングが合うことを僕らは「間が合う」と呼んでいます。

堀江 なるほど。

三宅 こうした間の研究をするために、メトロノームの「カチ、カチ、カチ……」というリズム音に合わせて、「ピッ、ピッ、ピッ……」とボタンを押してもらう実験をしました。被験者が「リズム音と押したボタンのタイミングが完全に合っている」と思う状況を作り出してもらったんです。

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堀江 はい。

三宅 そして、メトロノームの音とボタン押しの音が同期しているかどうか確認してみたら……。

堀江 ズレていた。

三宅 ええ。そのズレって「メトロノームの音が鳴る」のと「ボタンが押される」のとどちらが先だと思いますか?

堀江 ボタンを押すのが先ですか?

三宅 そうなんです。でも、普通に考えると音を聞いてから指で押すわけですから、音よりも後になるはずなんですよ。でも、そうではなくて音が鳴る前にボタンを押していた。

堀江 それは予測しているからでしょう。

三宅 その通り。だから、「間」というのは「予測的に生成している時間とかタイミング」のことで、「間が合う」というのは、そのタイミングを合わせることではないかと考えているんです。

堀江 ああ。

その2に続く

三宅美博 Yoshihiro Miyake

東京工業大学大学院総合理工工学研究科教授。1959年生まれ。東京大学大学院薬学系研究科博士課程終了後、金沢工業大学助教授、東京工業大学大学院准教授を経て、現職に。共創システム、コミュニケーション科学、認知神経科学などが専門。