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JAXA『はやぶさ2』プロジェクトマネージャー津田雄一が語る「はやぶさ2の挑戦」その1

堀江貴文氏は1月15日、『はやぶさ2』プロジェクトマネージャーの津田雄一氏を取材。着陸予定のはさぶさ2について話を聞いた。(初回配信日:2018年2月26日)

まさに想定外。チャレンジを超えたチャレンジ。

堀江貴文(以下、堀江)はやぶさ2の着地っていつでしたっけ?

津田雄一(以下、津田)2月18日の週に着陸する予定で、今は最終段階。

堀江 リュウグウってデコボコし過ぎてやばいみたいですね。岩が多い?

津田 多いですね。

堀江 岩って感覚的にどれくらいの大きさなんですか?

津田 とにかくいろんな大きさの岩があるんですけど、僕らが気にしてるのが、サンプラーホーンっていうサンプルを採取する装置があって、岩の高さが70cm以上あるとサンプラーホーンの先端より先に、探査機のボックスの底面が着いてゴツンと当たってしまう。70cmより小さい岩しかないところにしか着陸できないので、そういう岩がないところを探すと、広さが6m四方の場所と12m四方の2箇所の選択肢があって、今そのどちらが最適か検討しているところです。それぞれに良い悪いがあるので。

堀江 良い悪いというのは?

津田 まずターゲットマーカっていう再帰性反射素材でできた直径10cmほどの球体があって、それに探査機がフラッシュ光に当ててその反射で位置を認識しながら着陸するんですが、それに近ければ近いほど着陸しやすいわけです。そのターゲットマーカを去年の10月25日に落としたんですけど、6m四方の場所っていうのは、ターゲットマーカから比較的近くて12m四方の場所はちょっとだけ離れてる。広いけども遠い、近いけど狭いっていう二択で、それのどっちにしようか考えてます。

堀江 ターゲットマーカは1個しか入ってない?

津田 5個です。

堀江 5個もう全部ばらまいたんですか?

津田 いや、1個だけです。複数ばらまく事はできるにはできるんですけど、2個を識別するっていう別の作業が必要になっちゃうんで。探査機が自動でやる必要があるのでAだと思ってたものBだったり、BがAだったりすると間違った場所に着陸する可能性が出てくるので、そういう難易度をあげるようなことせずに、今回はターゲットマーカ1個で。

堀江 残りのやつは何のために積んでるんですか?

津田 はやぶさ2は3回タッチダウンできるのでそのために。1回目2回目のタッチダウンはターゲットマーカはそれぞれ1個なんですけど、最後の3回目のタッチダウンだけは「ピンポイント・タッチダウン」といって、より精度よく着陸するために2個余計に乗っけていたんです。ターゲットマーカを3個使って、順番にターゲットに近づく場所に落としていきながら、最後に3個目のターゲットマーカの近くに降りようってことを考えていた。でもそれはかなり難易度が高い技術なので、我々もタッチダウンを成功させてから、技術的なチャレンジとしてそれをやりましょうってことで用意してたんですけど、リュウグウという小惑星は今そのチャレンジとして想定してた事よりはるかに難易度の高い状態だということが分かったので、ターゲットマーカ1個を使って、なんとか成立させようとやっているところですね。

堀江 サンプラーホーンだけがタッチダウンして、それでバランス取るんですか?

津田 そうです、カカシのような状態ですね。タッチした瞬間に、サンプラーホーンの先が押し込まれる。

堀江 へー。

津田 先っぽが押し込まれたのを検知して、これは地表に着いたからサンプルを集めてすぐ上昇っていう瞬間計をやります。

堀江 なるほど。サンプルってどうやって収集するんですか?

津田 サンプルはサンプラーホーンの根元に弾丸を発射する…

堀江 あぁ、前もやったやつですか?

津田 そうです。はやぶさ1でやったのと同じですね。1では残念ながら弾丸が発射できなかったんですけど仕組みは同じです。タッチした瞬間に根元から弾丸を発射して、跳ね返ったものがサンプラーホーンの根元まで駆け上がっていって、カプセルの中に入るという仕掛けですね。元から小惑星の表面がどんな状態でもサンプルが採取できるようになっています。どんな硬くても弾丸を打てば必ず何かが跳ね返ってくるから、砂地でも岩盤でも何かは取れると思ってるんですけど。流石にデコボコがひどすぎると、はやぶさ2でも対処できなくて。

堀江 へー。

津田 今はリュウグウのことを知ってるから、見たからもう少しサンプラーホーン長くしとけばもっと安全だったんじゃないかとか、色々思うところはありますけれども、作った当初は誰も行ったことないので。

堀江 観測もできないし(笑)それはデコボコすぎたっていうのは、こんなデコボコとは思わなかったいう感じですか?

津田 そうですね。やっぱり計画するときに、はやぶさ1の経験、失敗も成功も全部もう1回調べ直して、アメリカの探査機による小惑星の写真などをいろいろ見て、小惑星の表面ってどんな状態だからそれらに対処できる探査機としてはやぶさ2はこういう形にしたんですが、そのどれとも似てなかったのがリュウグウで。

堀江 (笑)

津田 デコボコは想定してたんですけど、デコボコな小惑星であってもどこかには平べったいところがあって、必ずタッチダウンできる場所はそれなりの確率であるだろうと思ってたんですけど、リュウグウは一様にデコボコしていて。

堀江 なるほど(笑)

津田 なので苦労してるところですね。

堀江 もっと平べったいところが広がっていてみたいな感じで想像はしてたんですか?

津田 元々は着陸精度50mと言ってたんで、100mぐらいの大きさの広い場所の真ん中を狙ったら結果として何かの誤差があっても問題ないかとは思っていたんですけど、今は6mとか12mって言ってますから、技術的にはとんでもなく当初の予定より狭い場所でやらなきゃいけなくなってます。

その2に続く

津田 雄一(Yuichi Tsud)
はやぶさ2 プロジェクトマネージャー 宇宙科学研究所(ISAS)宇宙飛翔工学研究系准教授工学博士。