堀江貴文氏が、2026年春に就航を目指す航空スタートアップ・ジェイキャスエアウェイズの共同代表の白根清司氏、梅本祐紀氏に話を聞いた。最新鋭機ATR72-600を活用した、地域航空の可能性に迫る。
地域航空に適した機体ATR72-600の魅力
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堀江 使用する機体はATR72-600なんですか。あまり見ないですよね。
白根清司(以下、白根) はい。日本ではまだ20機程度しか使われていないはずです。でも、これから増えていくと思いますよ。我々はATR72-600の新造機をリースするんです。
梅本 フランス南部の街・トゥールーズに2025年10月に納品されるので、それを自分たちで取りに行くんです。でも、1500kmくらいしか飛ばないので5、6回くらい着陸しながら日本に帰ってきます。
白根 飛行距離が短いんです。関空から沖縄県の石垣空港くらいまでしか飛べません。
梅本 でも、それをツアーにしたら面白いかなと思っています。みんなで飛行機を持って帰ってくるツアー。
堀江 それ、お客さんを乗せてもいいんですか?
白根 普通は社員じゃないとダメですが、関係者ということで乗れる可能性があります。
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堀江 ちなみに、ATR72-600は1機いくらぐらいするんですか?
梅本 約35億円です。
堀江 そんなもんなんだ。
梅本 1機、持ちますか?
堀江 いや、飛行機はいいなあと思って。とりあえず、1機で運行するんですか?
梅本 はい。でも、半年後に2機目を導入します。
堀江 リースだと年間いくらくらい払うんですか?
白根 月に3000万円くらいです。
堀江 じゃあ、年間3億6000万円か。
梅本 ATR72-600って座席数が70席くらいなんですよ。これって大型バスの約2台分です。ですから、バス2台分くらいの人数のツアーを旅行代理店に組んでもらって、チャーター機で好きな場所に旅行してもらうという企画も進めていきます。
スポーツチームを支える空の輸送
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白根 あとスポーツチームにチャーターしてもらえないかなとも思っているんです。地方のサッカーチームやバスケットボールチームが移動する時にすごく苦労しているという話を聞いたんです。
堀江 サッカーのJ2のチームとか苦労しているみたいですね。J1のチームは大都市を本拠地にしていることが多いので新幹線で楽に移動できるけれど、J2のチームは地方都市が多いじゃないですか。サイバーエージェント創業者の藤田晋さんは「FC町田ゼルビア」のオーナーをやっているので、自分のチームの試合をよく見に行くらしいんです。それで、J2の試合は地方都市が多いからってホンダジェットを買ったのに「町田ゼルビアがJ1に上がっちゃったから、ホンダジェットをあんまり使わなくなったんだよね」って言ってました。だから、そういうニーズはあると思います。
梅本 そうですよね。ですから、3機まで増えるとチャーターがだいぶできるようになると思うんです。
雪国での航空運用の課題と可能性
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堀江 ATR72-600は、離着陸の時にどれくらいの長さの滑走路が必要なんですか?
梅本 1500mあれば十分です。
堀江 1300mだときついですか?
白根 微妙ですね。着陸はできるけど離陸ができないとか。あと、天候によって滑走路の状況が変わってきますので……。
堀江 なるほど。
白根 お客さんを減らせば、なんとかなることもあります。ATR72-600にご興味がおありなんですか?
堀江 うちのロケットの基地(北海道大樹町)の横に滑走路があって、そこが1300mに延伸したので使えるかなと思ったんです。
梅本 このワンサイズ下のATR42-600ならいけるんじゃないですかね。
堀江 でも、こうした地域航空は北海道でやってほしいですよ。
白根 実は北海道も考えているんです。これまで国や自治体が管理していた道内の7つの空港(新千歳、稚内、釧路、函館、旭川、帯広、女満別)が民営化していますよね。ですから、それらの空港を結べるような路線があるといいなと思っているんです。ただ、雪が多いのでまずは西日本から始めることにしたんです。
堀江 ATR72-600は雪が多いと使えないんですか?
白根 使えないわけではなくて、やはり、いろいろと制約が多いんです。
堀江 北海道は本当に交通の利便性が悪いんですよ。
白根 鉄道もなくなってしまいますしね。
堀江 でも、ポテンシャルはすごくあると思うんです。北海道って広いから移動距離が長いじゃないですか。それに空港もいっぱいあるし。
梅本 そうなんです。冬の雪の心配だけです。
堀江 でも、空港はちゃんとしてますよね。
白根 今、医療関係で苦労していますよね。ビジネスジェットでお医者さんを運ぼうということをやっているんですが、未だ実用化できていません。
堀江 そうなんですね。
白根 だから、ニーズはあると思うんです。
Text:村上隆保
白根清司(Seiji Shirane)株式会社ジェイキャスエアウェイズ共同代表
日本航空株式会社(JAL)で豊富な実務経験を重ね、安全領域においてシニアエキスパートとしての地位を構築。その後、中核メンバーとしてスカイマークの立ち上げに参加、そのほか多数の新規航空会社の立ち上げやコンサルティングプロジェクトを推進。関西航空機市場への参入など、様々なプロジェクトにおいてアドバイザーとしての経験を持つなど、航空業界におけるさまざまな課題解決に従事。
梅本祐紀(Yuki Umemoto)株式会社ジェイキャスエアウェイズ共同代表
複数のスタートアップをIPO(新規株式公開)へ導いたシリアルアントレプレナー。2018年に東証プライム市場へ上場したand factory社は創業期から参画。インバウンド × 宿泊領域の事業を立ち上げ、都内中心に10店舗以上を展開。2021年の独立後からはコンサルティング活動を開始し、IPO直前期の複数のスタートアップにおいて、事業開発支援をハンズオンで実施。