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【堀江貴文×ATRヤマト代表吉田宗玄】燕三条から始まる空への挑戦、飛行機づくり

新潟県燕三条で、LSA(軽量スポーツ航空機)開発を目指す株式会社ATRヤマト代表の吉田宗玄氏が、堀江貴文氏と対談。燕三条という土地が持つ歴史と、吉田氏がこの地を選んだ理由に迫る。

燕三条という土地の魅力

燕三条・家内制手工業
出典: K,Tamura

堀江貴文(以下、堀江) 僕、燕三条(新潟県)に降りたのは初めてです。

吉田宗玄(以下、吉田) そうなんですか。燕三条は、昔でいう『家内制手工業(職人が原材料などを調達し、手作業で商品を生産し販売する)』の町です。

堀江 吉田さんは、燕三条に来てから飛行機を造り始めたんですか。

吉田 はい。飛行機を造るために、ここに会社を作りました。

堀江 『鳥人間コンテスト』とかに出ていたわけではないですよね。

吉田 出てないです(笑)。

堀江 うちのインターステラテクノロジズ株式会社の社長は、東京工業大学時代に『鳥人間コンテスト』に出て優勝したチームの人間なんですよ。

吉田 へー、すごいですね。

堀江 僕は日本のベンチャー企業が飛行機をたくさん造るようになれば、日本の航空産業はもっと発展すると思っているんです。そのためには『鳥人間コンテスト』に出た学生とかが、自分で飛行機を造れるくらいにならなければいけない。裾野を広げなければダメなんです。

吉田 確かにそうですね。

堀江 アメリカには世界最大級のエアーショー『Oshkosh(オシュコシュ)』があるじゃないですか(オシュコシュの正式名称は『EAA AirVenture Oshkosh』)。そこに数十万人が集まってくる。しかも、みんな自分が造った飛行機で飛んで来るんですよ。日本もああいうふうになるといいなと思います。

飛行機開発へのきっかけ

堀江貴文とATRヤマト・吉田宗玄氏
出典: K,Tamura

吉田 私がシステムキッチンメーカーのクリナップ株式会社で働いていた2004年頃に、米MIT(マサチューセッツ工科大学)のメディアラボと共同研究をしていたことがあるんです。そのときに、たまたまアメリカの飛行機雑誌を読んでいたら『LSA(Light Sports Aircraft/軽量スポーツ航空機)』という新カテゴリーが法制化されますという記事を見つけたんです。私はもともとLSAより軽い『ウルトラライトプレーン(超軽量動力機)』に乗っていたので、もしかしたら、LSAは今後アメリカで人気になるんじゃないかと思ったんです。

堀江 なるほど。

吉田 それで日本に帰ってきてから、日本のLSAの状況を確認したんですけど、誰に聞いても「わからない」という返事ばかりなんです。日本ではLSAのことがほとんど知られていませんでした。

堀江 基本的に日本はアメリカの後追いをするはずなので、LSAもだんだん広まっていくと思いますけどね。

吉田 そうなんです。だから、「ここで何もしないと日本だけが世界からどんどん遅れてしまう」「誰かがなんとかしなくてはいけない」「それなら、もう自分で造るしかないか」と思ったんです。それで、小型飛行機を造る会社を2007年に設立しました。(LSAは2022年に日本の航空法にも明記され、一定の制限下での試験飛行が可能になった)

堀江 それで、今、2機目となるLSAの試作機を造ろうとしているわけですね。

吉田 そうですね。最初に造った機体を見直して、新しく造り直したいと思っています。というのも、どうも来年あたりにアメリカでLSAの法律が変わり、さらに大幅に緩和されそうなんです。それで、市場がどう変わっていくかを確認するために今年は『オシュコシュ』に行こうと思っています。

堀江 なるほど。

吉田 LSAのあるメーカーが、今まで2人乗りだったのを4人乗りを前提にした開発をしているという情報があるんですよ。そして、それを発表するとしたら『オシュコシュ』なので、市場の方向性が確認できますから。

機体は軽く主翼は着脱可能に

堀江貴文とATRヤマト・吉田宗玄氏
出典: K,Tamura

堀江 今、新しい機体の設計はできているんですか。強度計算とかは終わっているんですか。

吉田 今は主翼の構造を修正したり、細かい部分を全部見直している段階です。

堀江 LSAって、主翼に燃料タンクをつけるんでしたっけ?

吉田 この機体では主翼にはつけていません。座席後部につけています。これには理由があって、構造や造りをシンプルにして機体を軽くするために主翼は全部布張りなんです。布といっても最新のナイロン系の物です。そうすると構造的に主翼に燃料タンクを設置しにくくなるのですが、あわせてこの機体では主翼を取り外しができるようにもしているからです。

堀江 着脱できるんですか。

吉田 はい。なぜかというとLSAをトレーラーやトラックに乗せるためです。アメリカだと飛んでいて危険だなと思ったら、どこかに不時着します。すると、そこからLSAを移動させなければいけないので、簡単に翼が外せてトラックに乗せられることが必要なんです。また、完成機を売るときにどうやって持っていくのかという問題もあります。さすがに、世界中に飛んでいけないですよね。

堀江 そうでしょうね。

吉田 そうすると、コンテナに入れなければいけなくなる。

堀江 セスナの170とかは、どうやって持ってきているんですか?

その2に続く

Text:村上隆保 Photo: K,Tamura

吉田宗玄(Muneharu Yoshida)株式会社ATRヤマト 代表取締役/工業デザイナー
1969年1月9日生まれ。奈良県出身。
大阪芸術大学卒業後、日本マランツ・フィリップスコーポレイトデザイン東京、クリナップ株式会社などを経て、2007年に工業製品の企画・開発・デザイン主体のメーカー 株式会社ATRヤマトを新潟県・燕市に設立。現在、小型飛行機の研究開発を進めている。

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