堀江貴文氏は6月28日、心臓血管外科医の板谷慶一氏を取材。「予測医療」の重要性などについて話を聞いた。板谷氏が進める血流解析、普及のためには何が必要か?(初回配信日:2017年6月30日)
まずは医学研究者に利用してもらうことが重要
堀江 この血流解析をどうやって普及させるんですか?
板谷 3つルートがあると考えています。ひとつは王道ですが、医療用の治験を繰り返していって保険診療に組み込んでもらう。次は興味や関心がある患者さんを増やして、個人レベルで普及させていく。これが大きな力になれば国も認めざるを得なくなると思います。最後は、僕自身が手術し、治療をして結果を出していく。そして、専門家を口説いていく。この中で僕個人ができるのは3番目のルートなんです。
堀江 僕も「予防医療普及協会」というのを作っているので、「病気になる前に治しましょう」「病気にならないようにしましょう」というのは、すごく興味があるんです。
板谷 ありがとうございます。
堀江 でも、保険に組み込まれるには、すごくハードルが高いでしょうね。
板谷 そうですね。
堀江 この血流解析は、1回、いくらくらいでできるんですか?
板谷 ソフトウェアは各病院に年間100万円で、買取で300万円でライセンス契約しています。
堀江 じゃあ、患者さん一人いくらというわけではないんですか?
板谷 患者さんからのニーズもあるので、そういうケースも受けています。例えば、「この血管の枝だけ見てください」という場合は研究目的の解析であれば1件5万円から、スーパーコンピュータによる全体の解析は1件10万円から受けています。
堀江 結構、良心的な価格ですね。
板谷 ええ。良心的だと思います。例えば、IT系の流体解析のプロにこの仕事を依頼すると、1件300万円くらいかかるそうなんです。
堀江 それでやっていけるんですか?
板谷 (笑)。ただですね。例えば、エンジンの設計だったら1回やって、それで終わりですが、患者さんは次々にいらっしゃるので、数をこなせばやっていけるかなと思っています。
堀江 でも、安すぎますよ。いや、僕が何を言いたいかというと、必ずしも安いことがいいわけじゃなくて、こういうのはある程度のお金をもらって、それを宣伝費に回して普及させるという方法もあるわけじゃないですか。
板谷 そうですね。でも、今の段階では医学研究者たちへのアプローチが一番大事だと思っているんです。医学研究者が例えば30例くらいの解析をやったら、ひとつの論文がかけるくらいの金額でないといけない。すると1件10万円くらいが限界になるわけです。
堀江 なるほど。
板谷慶一/Keiichi Itatani
心臓血管外科医、流体力学者 1977年生まれ。東京大学医学部卒業。血流シミュレーションなどを開発し、血流エネルギー損失の計算法を発明。血流解析のパイオニア。2015年血流解析会社「Cardio Flow Design」(http://cfd.life)を創設。