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「間が合う」とは何か? 【東工大大学院教授・三宅美博が語る コミュニケーションの質と未来への応用 その3】

堀江貴文氏は2月27日、東工大大学院教授の三宅美博氏を取材。「コミュニケーション」の質や応用などについて話を聞いた。(初回配信日:2017年3月6日)

コミュニケーションの質を測れば、組織の健康状態がわかる

三宅 そして、僕らは、この仕組みを何かに応用できないかと思っているわけです。例えば、「うなずくロボット」。

堀江 へー。

三宅 遠隔教育などをする場合、教師がカメラに向かって一方的に話すのは、かなりの苦痛なんですよ。

堀江 その気持ち、わかります(笑)。

三宅 カメラのわきに一人でもいいから生徒がいて、ちょっとでもうなずいてくれたりすると、とても楽になる。

堀江 はいはい。

三宅 ですから、うなずくロボットを使えば遠隔教育などで教師が話しやすくなるということがひとつ考えられます。もうひとつは「ビジネス顕微鏡」ってご存知ですか?

堀江 知っています。もう10年くらい前からやっていますよね。

(※……「ビジネス顕微鏡」とは、組織内コミュニケーションの定量分析ツール。「職場で誰と誰がよく会っているか」や「スーパーで人がどう動いているか」などを可視化することができる)

三宅 僕もビジネス顕微鏡の研究を一緒にやっていて、僕らは人と人がどれだけ同調しているかを測っているんです。例えば、ビジネス顕微鏡のサービスで使用するセンサーの中には加速度計が入っているんですが、このセンサーをつけた2人が同調していたら2人の振動数は近くなると思いません?

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堀江 近くなるでしょうね。同調しているんだから。

三宅 逆に、同調していなかったら振動数は離れているはずですよね。

堀江 はい。

三宅 すると、誰と誰が会っているかを調べた時に、AさんとBさんの振動数の差とBさんとCさんの振動数の差を比べると、どちらの組み合わせがより同調しているかがわかるわけです。先ほどの実験からすると「同調しているほど間が合いやすくなっている」ということですから、会った回数だけでなく、どちらがコミュニケーションの質が高いかがわかる。

堀江 そうですね。

三宅 まだデータを取っている最中なんですが、ちょっと面白いなって思ったのは、上司と部下って長時間会っているわりには、同調していないんですよ。

堀江 そうなんだ(笑)。

三宅 ですから、この研究を進めていけば、コミュニケーションの質が高い組織かどうかがわかる。組織の健康診断ができるわけです。

堀江 面白いですね。

三宅 あなたの会社は危ないぞ、みたいな。

堀江 間が合ってないぞ、と。

その4に続く

三宅美博 Yoshihiro Miyake

東京工業大学大学院総合理工工学研究科教授。1959年生まれ。東京大学大学院薬学系研究科博士課程終了後、金沢工業大学助教授、東京工業大学大学院准教授を経て、現職に。共創システム、コミュニケーション科学、認知神経科学などが専門。