12薬局が切り開く、ペット医療の新しい分業構造
株式会社12薬局(東京都世田谷区 代表取締役 石原 玄基)は、ペット専門の調剤薬局として事業を展開するスタートアップである。同社は2026年1月、シリーズAラウンドにおける資金調達の1stクローズを実施した。
本件は、単なるスタートアップの資金調達ニュースにとどまらず、動物医療の現場が抱える構造的な課題に対し、どのような分業とインフラ化が進みつつあるのかを考える上で示唆に富む動きである。
高度化する動物医療と、現場に集中する負荷
近年、ペットは「飼育対象」ではなく「家族の一員」として位置づけられるようになり、動物医療に求められる水準も年々高まっている。診療内容は高度化し、治療薬の種類や管理も複雑化している一方で、動物病院の運営は依然として人手に依存する部分が大きい。
特に調剤業務は、獣医師やスタッフにとって欠かせない業務でありながら、診療時間を圧迫しやすい領域である。人材不足が常態化する中、診療の質を維持しながら業務負荷をどう軽減するかは、多くの動物病院に共通する課題となっている。
「外部調剤」という選択肢の提示
12薬局が提供するのは、動物病院に特化した調剤受託サービスである。自社開発のオンライン処方箋システムを通じて、病院から調剤業務を受託し、専門薬剤師が調剤した医薬品を飼い主へ直接届ける仕組みを構築している。
重要なのは、このモデルが動物病院の役割を奪うものではない点である。診療や治療方針の決定は獣医師が担い、調剤という専門性の高い業務を外部化することで、病院は本来の医療行為に集中できる。この分業構造は、人材不足下における現実的な解の一つとして機能し始めている。
全国320以上の病院に広がる利用実績
同社のサービスは、すでに全国320以上の動物病院で利用されている。これは、単なるアイデア段階ではなく、現場で一定の受容が進んでいることを示している。
一方で、同社自身は「まだ投資フェーズである」と位置づけている。門前薬局の拡大、新たな調剤商品の開発、配送体制の強化など、構想している施策は多岐にわたる。今回のシリーズA資金調達は、これらを同時並行で進めるための基盤づくりと捉えるべきであろう。
投資家が評価した「構造への着目」
今回のラウンドには、複数の投資家が参加している。共通して語られているのは、動物医療における調剤業務が抱える構造的な負荷への問題意識である。
外部調剤という選択肢を早期に構築し、実際に運用してきた点は、ファーストムーバーとしての評価につながっている。また、動物病院、飼い主、ペットという三者の関係性を前提に事業を設計している点も、長期的な成長可能性として見られている。
データと連携が生む次の可能性
12薬局は、調剤業務を単なるオペレーションとしてではなく、動物医療に関わるデータが集積される接点としても位置づけている。電子カルテや薬歴を扱う他社サービスとの連携は、調剤と診療の分断を防ぎ、より滑らかな医療体験を生む余地を持つ。
これは、医療分野全般で進んできた「役割分担と情報連携」の流れが、動物医療にも波及し始めていることを示唆している。
ペット医療を「続けられるもの」にするために
同社が掲げるのは、「いつでも・どこでも・どんな状況でも」ペットと飼い主が安心して治療を継続できる環境づくりである。この言葉は感情的なスローガンではなく、医療提供体制をどう持続可能にするかという問いに直結している。
調剤業務の外部化は、病院の業務効率化に寄与するだけでなく、結果として診療待ち時間の短縮や対応品質の安定につながる可能性がある。それは、ペットと飼い主が医療にアクセスし続けられる環境を支える、目立たないが重要な要素である。
会社情報
会社名:株式会社12薬局
所在地:東京都世田谷区南烏山6-33-36(関東本局)、大阪府大阪市北区菅原町2-14(関西支局)、埼玉県川口市源左衛門新田6-4(どうぶつの総合病院前店)
TEL:03-5314-1720(代表)
事業内容:動物用調剤薬局の運営、動物医療関連サービスの提供
URL:https://12pharmacy.co.jp/
ZEROICHI編集部の注目点・取り上げ理由
編集部が本件に注目した理由は、「ペット×スタートアップ」という表層的な文脈ではない。
評価すべきは、動物医療の現場に内在していた業務負荷を、分業とインフラ化によって解きほぐそうとしている点である。
12薬局の取り組みは、診療の高度化と人材不足という相反する課題に対し、「誰が、どの工程を担うべきか」を再設計する試みである。派手な技術革新ではなく、医療を支える裏側の構造を変えようとする動きとして、記録する価値があると判断した。
■原文リリース(参照)
原文リリース発表日付:2026年1月14日
タイトル:ペット専門薬局の12薬局、シリーズAの資金調達1stクローズを実施
原文リリースURL:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000133703.html
※本記事は、原文から一部編集・要約して掲載しています。
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