オールタイムレンタカーの会員数3万人突破と都心展開を伝える告知画像
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「レンタカーは、まだ不便だった」 24時間無人貸出で“移動の自由”を取り戻すバリュートープの構想

車は、所有するものから、必要なときに使うものへと変わりつつある。だが、その変化はそのまま移動の自由を意味しない。カーシェアは手軽である一方、長時間利用や長距離利用では割高になりやすい。

従来型レンタカーは料金面で合理性があっても、店舗営業時間という制約が残る。都市生活者の移動は、便利になったようでいて、なお埋まっていない空白を抱えているのである。

その空白に対して、別の設計で向き合っている企業がある。バリュートープ株式会社(東京都渋谷区 代表取締役 佐久間晶夫)である。同社が運営する「オールタイムレンタカー」は、24時間無人貸出・スマホ完結・長時間利用に向く料金設計を組み合わせた、カーシェア型レンタカー事業である。

公開リリースでも、同社は「カーシェア型LCCレンタカー」として事業を展開し、東京都渋谷区を拠点にステーション拡大を進めている。 

本記事は、代表取締役の佐久間氏への取材と公開情報をもとに構成したものである。

読み解くべきなのは、単なる便利なレンタカーサービスではない。レンタカー市場が取りこぼしてきた「時間の自由」を、無人運用によって再実装しようとする試みである。

レンタカー市場には、まだ埋まっていない「時間の空白」があった

レンタカーは、長時間利用やレジャー利用では依然として合理的な移動手段である。しかし、その合理性は、店舗の営業時間内で借りて返せることが前提になってきた。

早朝出発や深夜返却の需要があっても、店舗型オペレーションではその自由度を十分に担保しづらい。結果として、ユーザーは前日から借りる、翌日に返すといった余分な時間負担を引き受けることになる。

一方で、カーシェアは24時間利用しやすいが、長時間・長距離では料金負担が重くなりやすい。ここに、既存サービスのあいだに横たわる分断がある。すなわち、「無人で借りたいが、カーシェア料金では使いたくない」という需要である。

佐久間氏の取材発言からも、バリュートープの着眼点はまさにこの中間領域にあったと読める。

これは新奇な需要を作り出したというより、既存市場の中で見過ごされてきた不便を掘り起こしたという方が正確である。

バリュートープがやっているのは、「レンタカーのDX」ではなく「移動体験の再設計」である

オールタイムレンタカーの表面上の分類はレンタカーである。だが、その貸出・返却の運営は、カーシェアと同様に非対面で完結する。

予約、利用、返却までをスマートフォンで完結できる設計であり、店舗常駐型の受け渡しを前提としていない。いっぽうで料金体系は、月会費や距離料金を軸とするカーシェア型ではなく、長時間利用に向くレンタカー型である。

スマートフォンを使ったバーチャルキーによる無人貸出のイメージ図
スマートフォンを活用したバーチャルキーの利用イメージ。

公開リリースでも、同社は24時間利用可能なカーシェア型LCCレンタカーとして会員拡大と拠点拡大を進めている。 

この組み合わせが意味しているのは、単なるDXではない。既存レンタカーの受付業務をスマホに置き換えた、というだけでは説明しきれない。

取材で見えてきたのは、佐久間氏が事業を「車を貸す仕事」ではなく、移動体験を提供するサービスとして捉えている点である。

そこで売っているのは車両そのものではない。時間制約なく移動できる状態であり、店舗営業時間に縛られない都市生活の自由度である。

なぜ佐久間氏は、この市場の穴に気づけたのか

バリュートープ株式会社代表取締役の佐久間晶夫氏
バリュートープ株式会社代表取締役の佐久間晶夫氏。

この事業の説得力は、創業者の課題認識が抽象論ではなく、当事者感覚から始まっている点にある。

佐久間氏自身、もともとレンタカー利用者であり、深夜や早朝に使いたいのに店舗時間に縛られる不便を実感していたという。創業の着火点は、業界分析の机上結論ではなく、利用者としての実感にある。

さらに重要なのは、その課題認識を事業化するための実装経験を持っていたことである。

前職では、サービス企画、新規アプリ導入、コールセンター運営、DX推進など、非対面でサービスを成立させるための実務に長く携わっていた。

つまり着想は「ユーザーの痛み」から生まれ、実装は「運用設計の経験」から支えられている。人物としての経歴と事業構造が、無理なく一本につながっているのである。

この会社の競争優位は、テクノロジーではなく「運用」にある

バリュートープを技術企業としてだけ捉えると、本質を見誤る。取材で一貫して見えてきたのは、同社の競争優位がテクノロジーそのものではなく、無人でも破綻しない運用を組めることにあるという点である。

たしかに、スマートフォンを軸にした無人貸出は、見た目にはテックドリブンな事業に映る。

しかし、実際に差がつくのはその先である。どこに出店するか。駅近の利便性と駐車場採算をどう両立するか。問い合わせやトラブル時の負荷をどう抑えるか。無人でありながら不安を極小化するには、どのような導線を設計するか。

こうした論点は、プロダクトだけでは解けず、現場運用の設計能力に依存する。

公開リリースでも、同社は都心主要エリアに継続的にステーションを開設しており、渋谷、新宿、品川、六本木、新橋、文京、池袋などへ展開を広げている。

これは単なる拡大ではなく、都市部での運用密度を高める戦略として読むべきである。 

都心で成立しているのは、単に便利だからではなく、構造的に需要があるから

都心では、車の所有コストが高く、保有より必要時利用の合理性が高い。加えて、公共交通が発達しているため、普段は車が不要でも、特定の瞬間だけ車が必要になる場面が多い。

買い物、送迎、荷物移動、撮影や業務用途、早朝深夜の移動など、公共交通だけでは埋めきれないニーズが点在している。

オールタイムレンタカーの車両が並ぶ貸出拠点の様子
バリュートープが展開する「オールタイムレンタカー」の車両イメージ。都心部を中心に、24時間無人貸出に対応する運用体制を整えている。

バリュートープの都心戦略は、この構造に依拠している。

市場全体としても、同社は自らをカーシェア市場のプレイヤーというより、レンタカー市場の未解決領域を取りにいく存在として位置づけていると読める。

会員数は2026年1月時点で3万人を突破し、若年層支持を背景に伸長していると公表されている。これは、単なる一部愛好者向けのニッチではなく、都市生活と整合した需要が一定規模で存在していることを示している。 

無人化はコスト削減策ではなく、人手不足時代の供給モデルである

この事業を「無人だから安い」とだけ読むと、核心から外れる。無人化の本質は、価格訴求のための小手先の工夫ではなく、店舗依存型モデルが抱える供給制約への対応にある。

営業時間を維持するには人員が必要であり、人件費は上がり、深夜早朝の稼働は採算に合いにくい。人手不足が進む社会では、この制約はさらに重くなる。

その意味で、バリュートープのモデルは、レンタカー店舗の運営効率を改善する話にとどまらない。人を張りつけなければ成立しない供給構造そのものを変える試みである。

公開情報でも、同社は無人運営を前提に24時間利用可能なサービスとして展開しており、これは都市部でのモビリティ供給の新しい形式の一つといえる。 

その先に見ているのは、都心のレンタカー事業ではなく、交通課題への仕組み提供である

現時点での主戦場は都心である。しかし、取材から見えてくる未来像は、単に自社の貸出拠点を増やすことではない。むしろ、無人運営の仕組みそのものを標準化し、他地域へ展開可能なモデルへと育てていく方向にある。

この発想は重要である。都心では、自社で拠点を持ち、需要密度の高いエリアでドミナントを形成することに意味がある。

だが地方では、同じ直営モデルをそのまま横展開するより、既存レンタカー会社や駐車場事業者に対して、車載機、アプリ、集客、営業時間外対応などの仕組みを提供する形の方が合理的である可能性が高い。

そうなれば、バリュートープは単なるレンタカー事業者ではなく、無人レンタカーの運用基盤を供給する企業へと変化していく。

ここで見えてくるのは、台数拡大の物語ではない。仕組みの標準化と、運用ノウハウの外部提供という拡張可能性である。

ZEROICHIが今、バリュートープを取り上げる理由

バリュートープを取り上げる価値は、便利な新サービスを紹介することにはない。

重要なのは、この会社がレンタカー市場が取りこぼしてきた時間自由度を、無人運用によって再実装しようとしている点にある。

ここで見えているのは、新しいレンタカーの話ではない。所有から利用へ、店舗依存から無人供給へという時代変化が、どのように具体的な事業として立ち上がるのかという問題である。

しかもその競争力の源泉は、派手な独自技術ではなく、運用、立地、顧客導線、問い合わせ設計といった、一見地味だが模倣しにくい現場の仕組みにある。

テック偏重でも、価格訴求偏重でもなく、社会の変化に対して供給の仕方そのものを組み替えている。そこにこそ、本稿が注目する理由がある。都心での移動利便性の向上に留まらず、将来的には人手不足時代の交通供給や、地域事業者の無人化支援へも接続しうるからである。

ZEROICHIが本稿で照らしたいのは、「便利なサービスがある」という事実ではない。時代の構造変化を先に掴んだ企業は、何を見て、どのように事業を組み立てているのか。

その輪郭である。バリュートープは、その問いに対して具体的な形を持って答え始めている企業の一つである。

企業概要

会社名:バリュートープ株式会社
代表者:佐久間 晶夫
設立:2020年1月
資本金:107,000,000円
所在地:東京都渋谷区桜丘町29番35号
事業内容:カーシェア型レンタカー事業
URL:https://www.valuetope.com/

引用・参考

※本記事は、取材および公開情報をもとに構成している。事実関係や固有情報については、公開情報を参照のうえ確認した。