かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と謳われた日本の半導体産業は、なぜ衰退し、どうすれば復活できるのか。
最終回となる第3回では、伝説のゲーム機「プレイステーション3」の開発に携わった藤原氏のキャリアと、日本のスパコン開発を黎明期から率いてきた中島教授の知見が交錯。堀江氏が展開する宇宙ビジネス(ロケット開発)との驚くべき共通点、国家の安全保障、そして日本が再び世界を驚かせるための「グローバルマネー獲得戦略」の全貌が語られた。
・その1:「LLMの覇権争いは完全に資金力」米中の“力技”に苦戦した起業家とホリエモンが語る、生成AIブームのリアル
・その2:「データセンターと原発はセットか?」NVIDIAを追うAI半導体開発の最前線と、精度を落として電力を下げる新潮流
スパコンの夜明け、そして若手不足への危機感

堀江:先生、もともと何をやられていたのですか?
中島:もともと学生の時はまさにこういうコンピューターのハードウェア、まさにGPUのご先祖様みたいなやつを実は作っていたんですね。もうそれ、でも1986年くらいですから。
堀江:ああ、そうなんですね。それは相当ご先祖様。
中島:40年くらい前の、もうGPUって名前すらなかった時代ですね。タンスくらいの大きさのコンピューターを研究室で作っていましたけれど。一番のルーツはそこになります。で、卒業してメーカーに行ってスパコンを作り、いろんなコンピューターを作り、ちゃんと売り物になるコンピューターを作り、バブル崩壊で大学に戻ってきましたということですね。
堀江:スパコンブームがありましたね。
藤原:あの当時、世界一でしたよね。パフォーマンスとしては。
中島:当時、作ったスパコンは、今のシリコンバレーのコンピューターミュージアムにちゃんと飾ってあります。
藤原:Intelの本社の1階にあるIntelミュージアムにコンピューターが飾ってあります。
中島:もちろん私が一人で作ったわけじゃないですけれど。まだ私、新入社員ペーペーでした(笑)。
堀江:いや、でもすごいなぁ。生き字引ですね。
中島:だから問題はね、後継者が、じゃあ若手が育っているかという、今の問題はむしろそっちですよね。みんながね、「NVIDIA買えばいいじゃん、Python書けばいいじゃん、もうAIがPythonも書いてくれるから、もうプログラムいらないじゃん」という風にみんなが思ってしまっているので。
堀江:確かに。
中島:うちの研究室はね、留学生比率が75%なんですよ。留学生はやっぱり「国のために半導体技術、そういったものが必要だ」というので、うちに来てくれるんだけれども、日本人比率が下がっているというのは、やっぱりね、みんながそう思っちゃっているんでしょうね。
「ラピダス」の現状と、設計ツールの米国独占

堀江:まあでも半導体と言っても、その実際に製造するファウンドリー的なところと、設計するところってまた全然違うじゃないですか。その、なんか必要とされる技術というか。
中島:階層が全然違いますよね。
堀江:割となんか水平分業されているイメージがあるんですけれど。
中島:日本は昔は垂直統合みたいな、各社が全部持っていましたよね。逆に言うと、GoogleとかNVIDIAはそれを真似しているんですよね。日本の昔のスタイルを真似して、ハードもソフトもサービスも全部やっていると。日本は水平って言って、結局何も残らなかったわけですよ。個人的にはやっぱり、垂直統合できるようなものを一つ持っておかないと、と思います。
堀江:まあでも垂直統合するにはやっぱり、グローバルでGAFAMクラスの売上がないと厳しいですよね。
中島:そうなんですよね。
堀江:独自設計のチップを作っている会社なんて数えるほどしかないわけで。それこそね、AppleとかTeslaとか、Googleとかって話になってしまいますので。
藤原:Teslaもね、結局多分やると思うんですけれど、自分たちでファウンドリー・Intelと一緒に作るとイーロン・マスクが言っていますけれど。リチウムの精製工場まで作ってやっているので、彼らはもうそこまで踏み込んで垂直統合をやろうと実際にしていますよ、やっぱりね。
堀江:ガス田まで開発しようとしていたらしいですよ、SpaceXは。さすがにテキサスはガス田がたくさんあるんで、生成設備だけでいいだろうみたいな感じであるみたいですけれど。
中島:だから掘ったらエネルギーが出てくる国の真似はできないですよ。
堀江:確かに。じゃあ省電力なわけですね。だからエッジコンピューティングとかに使われるわけですか。
中島:いや、もちろんそれをベースにしつつ、本当はデータセンターまでカバーしないと、結局やられっぱなしになりますよね。データセンターでの推論プラスアルファ、ということになるわけですね。
堀江:製造までやっちゃうわけですか。
藤原:マニュファクチャリングに関しては、当然我々もファブレスなので、それこそTSMCさんだったりとか、あとご存知のとおり北海道千歳でRapidusさん立ち上がりつつありますので、製造はそういうところにお願いをするんですけれども、その後の完成品に関しては、我々が基本的にメーカーとしてエンドユーザーにお届けをすると。そのアセンブリをまた、海外だったらFoxconnさんとかSupermicro さんとか色々ありますけれども、ああいうところと一緒になりながら提供していくという、そういうモデルですね。
堀江:というところが結構ライバルで世界にはあると。
藤原:そうですね。もう有名なところはもうたくさんメディアも出てますけれど、本当にシリコンバレーなんかに行くと、本当に次のGroq、次のNVIDIAを目指している我々のようなスタートアップというのはもう星の数ほどありますし、また最近ですとやっぱり中国とか、あとインドとかもね、頑張っていますけれど、そういった国からも実際にもうシリコンを作って実際のパフォーマンス示しているところも出てきていますので。
堀江:勝ち筋はあるんですか?どの辺が強みになるのかと。
藤原:まずは一つは「選択肢を出す」ってことが我々としては大事だと思ってまして。今だと本当にもう、それこそアメリカ・NVIDIAか、もうそれこそ中国・Huaweiかみたいなところしかないのが今世の中の状況ですので、そこにやっぱり「日本で作られたものがありますよ」という選択肢を与えること自体は一定の意義があるのかなと思っているんですね。
あとやっぱりいろんな今こういう国際情勢の中で、やっぱりそのアメリカとか中国とかの依存度を下げたいと思っているのは、この企業だけではなくて、国もやっぱり同じ思惑で動いていますので。
やっぱり特に日本みたいにエネルギー自給率が低いところは、なおさらこんなNVIDIAだとかGPUみたいな大量電力を消費するような半導体をこのまま仕入れ続けていいのかという危機感を持たれているんですね。なので実際我々みたいなこんなアーリーステージのスタートアップでも、東南アジアの国とか企業からの問い合わせというのはやっぱり結構来たりするんですね。その裏にあるというのは、やっぱりエネルギー事情。そこが一番大きいですね。
堀江:エネルギー事情がね、確かに。いや、今回のホルムズ海峡の封鎖で思い知りましたね。トランプが戦争を仕掛けられるのも、アメリカはサプライチェーンを一通り、その経済安全保障的な文脈でちゃんとカバーしているんですよね。中国も最近全部カバーできるようになったらしいです。あの、最近までヘリウムとか、自国のそのサプライチェーンで安定供給できなかったらしいんですけれども、最後のミッシングピースがヘリウムだったらしいです。
藤原:なるほど。
堀江:そしたらホルムズ海峡封鎖されて、あのカタール産のヘリウムが入ってこなくなっちゃって、結構困りましたよ。うちのロケットの会社(インターステラテクノロジズ)なんか。ヘリウムないと終わるんで。風船じゃないんで(笑)。
アメリカはね、自国内にヘリウムを備蓄しているのを知っていましたか?油田に封入しているんです。もともと油田とかガス田から取れるんですけれど、そこに封入しているという。「すごいことやっているな、この国は」と思いましたけれど。何でもやっぱりアメリカでは手に入るんですよ。日本はね、すぐ入ってこなくなりますよ。石油化学製品とかだけでも、すぐ入ってこなくなりますからね。
藤原:国土の大きさの差というのもありますし、そもそも地面にあるものの量が違いますからね。
堀江:日本は戦争しちゃダメな国だなとすごい思いましたよ。というくらい本当に脆弱ですね、この国は。なので、あの、そういう形でこう、ハードウェアのね、なんか半導体ってそもそもね、あの1990年代以前は結構そのジャパンイズナンバーワン的なところの文脈で、半導体って結構すごかったわけじゃないですか。なぜこんなダメになっちゃったんですか?
中島:結局、半導体部門というのを各社持っていたんですけれど、やっぱり投資したものを回収するときにガタッと値崩れすると、もう足を引っ張ってしょうがなかったですね、各社とも。みんなとにかく半導体部門を切り離して、最初は潰したわけではなくて、別会社に切り離していましたよね、各社とも。切り離されちゃうと、やっぱり自力だとね、景気がこんなになっていたら会社潰れちゃうじゃないですか。それでみんな消えてしまったということですよね。
堀江:そういうことですか。
中島:だからやっぱり半導体単独で生き残るというのはそもそも難しくて、やっぱりこう、なんていうか、本業がちゃんとあって、半導体が多少波があっても支えてくれるような、ある程度の規模がないと多分無理だろうなと思いました。
堀江:なぜ Intelはうまくいったんですか?
中島: Intelはそれはやっぱり、なんていうの、売れる数が安定しているからでしょうね、多分ね。だってずっと作り続けてますよね、ソフトウェアと抱き合わせで。今はもうWindowsの他の選択肢がいろいろ増えてきましたけれど、当時はだってね、もうWindows一択だったでしょ。まあ後からAppleがだんだんシェアを増やしてきましたけれど、それでもまだまだですよね。
堀江:まあだけど僕は結局、資本力の差だった気がするんですけれど。シリコンバレーのその投資のサイクルじゃないですけれど。
中島:うん。だからやっぱり一定の収入が見込める産業じゃないと、各社バラバラに持ってて、こんなになってちゃ多分持たないなとは思いましたね。
堀江:でもなんか統合する動きもあったけれど、結局うまくいかなかったじゃないですか。一瞬ありましたけれどね。結局ダメでしたよね。実際、製造部門とかも台湾とかに行ったわけですよね。
中島:そう。製造部門もそうだし、さっきの垂直統合の話にするとね、その設計ツール、ソフトウェアも各社持っていたんですよね、当時はね。あれも今は全部米国製にもう変わっちゃって、もう国内製品はもう何も残っていないんですよね。Synopsys・Mentor Graphics(現Siemens EDA)・Cadenceの三社に押さえられてしまって。だからもう下からどんどん設計のための道具が全部削られていって、で、上はAIで削られていって、もう今だからどっから元に戻せばいいのかという話です。
堀江:Rapidusとかどう考えているんですかね。
中島:結局Rapidusに関しては、あまり言ってはいけないことがあるんだと思うんですけれど(笑)、やっぱり工場からスタートしていますよね。だから例えば設計ツールがあるかというと、おそらく自前では調達できないので、さっきの米国製品をとりあえず使うと。だから下はいいんだけど、そうすると、じゃあ何を作るのかというところは、今まだほぼ何もない状態ですよね。
堀江:何もない状態なんですか。
中島:だから、じゃあ何年後に、じゃあRapidus製の、じゃあ例えばAI半導体ができるのかというところは、今もう模索中だと思いますね。
堀江:誰が主導しているんですか?
中島:今のところやっぱり国ですよね。我々はまずは工場がないというところから多分始まった発想だと思うんですよ。
藤原:我々からすると、Rapidusさんを使おうと思うと、こちら側に相当やっぱり設計能力とかないとですね、今TSMCさんみたいにいろいろツールが揃っているような、まだファウンドリではないので、こちら側の体力が求められる。なので結果、今あそこを使うと意思表明されている会社さんはやっぱり大手さんに限られているんですよね。そこはやっぱり技術力というよりは、やっぱり資本力だったりとか、ある程度細かいところまでできるとかじゃないと、ちょっと現状は難しいのかなという印象はありますね。
堀江:どの辺までやらなきゃいけないんですかね。僕もそんなに詳しくないですけれど。
藤原:まあだからいわゆる本当にね、IPを結構作れるところじゃないと厳しいですよね。
中島:まあ一番、例えば今だと大学でこういうハードウェアの研究をしようと思ったら、ここに並んでますけれど、いわゆるFPGAボードで回路を組むというのが一番コスパがいいわけですよ。じゃあFPGAで動いたものを、じゃあ最後はLSI(集積回路)にできればいいんだけれども、そのために必要なツールとか、あるいは工場も含めて、やっぱり相当な厚みのある層がないとですね、ここで動いたからといって、そう簡単にはASIC(専用IC)化できないわけですよ。だからそこが全部揃うまでは、じゃあ「Rapidusさんお願いね」という風になかなかならない。
堀江:ここでもできないですか。
中島:そうですね、はい。一時期は大学の付随しているサービスとかで、もうだいぶ前のプロセスノードですけれど、作れたんですけれど、今はもう大学レベルでやるというのはもう物理的に無理ですよ。
堀江:この間東北大行ってきて、なんか半導体センターみたいなところありましたけれどね。そこはまあでも16ナノとかそれくらいのやつだったらうちでも作れるんですよと。
中島:以前作ったチップはそこに並んでますけれど、今はどちらかというとね、もうお金かかりすぎて。あとチップの中ではなくて、その外の外のスピードを早くしようと思ったら、もう億円単位で買ってこないと、作れないですね、今はね。
藤原:こういうやつですね。このいわゆるインターコネクトとか言いますけれど、この通信の部分というのが、これまたIPとして買ってこなきゃいけないんですね。そういったところが多分もう今1IP数億円です。
中島:もう今また海外製品にもう全部抑えられている感じですね。国内でそこをゼロから作れるメーカーは多分いないと思うんですよね。
堀江:あれくらいの演算量になってくると、それこそそっちの方も結構いろんな技術出てきてますもんね。
中島:そうですね、足回りの方が今はもう大切になっています。中よりもね、外を支えてやらないと、いくら中だけ作っても使いようがないですね。
堀江:メモリーとかもそうですもんね。
中島:そうですね、メモリーインターフェースが特にそうですよね。
堀江:メモリーとそのプロセッサーのインターフェース。
中島:今やもうインターフェースというか、もう貼りますからね。ペタッと貼るんだけど、じゃあその技術はどこが持っているんだという話ですよ。
堀江:こういうチップを作ったとして、そういうところはどうクリアするのですか?
藤原:今まさに、その外部のそういった技術を持っている会社さんと、実はいくつかお話をしてまして。我々自身はその技術を持っていないので、適切なところから仕入れて協力いただいて、一緒に作っていくという流れになりますね。
堀江:大変だ。
藤原:そうですね。あとはまあ実際シリコンバレー行って思うのが、やっぱりもう主戦場はチップ単体ではなくて、先ほど言ったみたいに外部との通信メモリとどうするんだ、サーバー間の通信をどうするんだ、ラック間の通信をどうするんだ、またデータセンター間の通信をどうするんだとかですね、あとその内部のオーケストレーションって、いかにこの利用率を上げるためのソフトウェア制御のところですね。のところがどうなっているんだというところで、もう完全に上のレイヤーも含めた総合戦になってきているんですね。なのでチップ単体ももちろん大切なんですけれど、全部のトータルシステムとしてどのようなパフォーマンスが出せるか、提案ができるかというところに、もう完全に主戦場が移行している感じはしますよね。
久夛良木健氏の下で学んだ「垂直統合」のキャパシティ

堀江:難しそうですね。よくこんな難しそうなところで戦おうとしていますね。
藤原:ただ、私のバックグラウンドも少しわかるのは、私、元々先生はスーパーコンピューターの世界ですけれど、私は元々民生で「プレイステーション」をずっと作っていまして。なので私がやっていたのはプレイステーション2とプレイステーション3で、その当時ソニーは本当にゼロからチップを作っていましたよね。その上にコンパイラ載せて、OS載せて、SDKライブラリでその上にゲームソフトを載せるってことを、それこそ全部一気通貫でやっていた時代だったんですね。
堀江:久夛良木(健)さんの時代。
藤原:久夛良木さんの下で働いていたんですけれど。ただそれもやはり経済合理性の理由で、プレイステーション4からやっぱり外部から調達するようになって。で、当時プレイステーション3のために作った工場も、基本的にはもう手放す、封鎖する方向になって。まさに先ほどおっしゃったような、日本の停滞期に入っていくわけですけれど。
ただ私がたまたまその現役でいた時期というのが、その日本が強い時代、本当に垂直統合で、あんな1億数千万台のハードウェアを販売する経験を私自身がしていたので、「キャパシティはあるはずだ」と。なので、やっぱりここで1個この事例を見せればですね、日本人は後に続くのは得意な民族ですから、なんかこう最初突破口を出せればですね、そういった形がまた後に続いてくるんじゃないかという期待も込めて、高いハードルではあるんですけれど、やらせていただいているというところはありますね。
堀江:プレステ、よくやっていましたよね。
藤原:ありがとうございます。
堀江:買いましたよ、3も。買いました、買いました。
藤原:だいぶ値段上がっちゃいましたけれどね、ゲーム機もね。メモリの値段のおかげでちょっと上がっちゃいましたけれど。
堀江:メモリのせいなんですか。
藤原:そうですね。メモリとトータルの調達コストが上がっているというのはありますけれど。
堀江:あれ、でもやめたのはもったいなかったですね。
藤原:それも皆さん今だからおっしゃられますね。ただ、やはり中島先生みたいに、単一の、例えばもうゲーム機プラットフォームのために工場を作って、それを維持できるかというと、まあやっぱり難しいです。作るのにやっぱりもうそれでも4桁億円の投資してますんで、なかなか単一の事業だけで回すというのは難しいというのは、当時は正しい判断だったのかなとは思いますけれどね。
堀江:まあでもソニーもね、イメージセンサーの事業が今絶好調じゃないですか。なんかGPU的なものも残しておけば。当時はでも、3DCGくらいしかアプリケーションがなかったということですよね。まさかAIが来るとはですね、という時期ですよね。あれ、プレステ3って2006年とか2007年とか、8年くらい。
藤原:そうですね、はい。私が当時いた時というのは、NVIDIAというのは逆に我々提案を受ける側でして、これ皆さんもう歴史知ってますけれど、本当に当時のNVIDIAってGPUしか作っていなくて、正直倒産する寸前の会社だったんですね。
堀江:セガが出資して。
藤原:セガが買って、すぐ株をちょっと売られたので、持っておけばよかったって話はあるんですけれど(笑)。実際NVIDIAを救ったのは日本のゲーム会社のセガですし、それがもう瞬く間に、この30年でバッと立場が逆転したというのは、やっぱりちょっと忸怩たる思いが業界にいる人間としてはあります。やっぱりね。
堀江:まあでもNVIDIAもGPUしかなくて、一生懸命それを頑張っていたということですよね。
藤原:そうですね。彼はもともと今のその「CUDA」というソフトウェアの前のご先祖さんというのはCGというのがあって、あれはもともとグラフィックス用のシェーダーって言われる表面の計算をある程度汎用化するために作ったのが、そのCGというプログラミング言語で、それが昇華したのがCUDAという、今まさにAIを使っているじゃないですけれど、もともとやっぱオリジンというのは3Dグラフィックスなんですよね。
堀江:そうですよね。まさかね。
藤原:そうですね。たまたま本当にもう行列演算の塊というのがこっちでも使えたというところですよね。
堀江:いや、やっぱじゃあそれは業界の人からすると瓢箪から駒なんですかね。
藤原:そうでしょうね。あとやっぱりジェンスン(・フアン)がやっぱりこの先を読む力というか、そこはあると思いますね。一気にバーッとあっちに舵切ったというのは、やっぱり英断だと思います。やっぱりね。
堀江:もうだってね、ほとんどAIって言ってましたよね。
日本の「言語の壁」が生んだ強みと、宇宙ビジネスへの展望

堀江:いや、そうですよね。そう考えると、でも僕も株は買えなかったですけれどね。まさかこんなになるとは思わなかったから、買っときゃよかったなと思いましたけれど。そういうことですね。僕もあれですよ、シリコングラフィックスの頃から使っていましたから。
藤原:SGI、懐かしいですね!
堀江:高かったですよね。
藤原:しかもよくね、発熱して火が出るって有名な(笑)。電源周りが怪しいのは一応有名でしたけれどね。
堀江:INDIGO2とか使っていました。
藤原:パープルのド派手なやつ。
堀江:そうそうそう。
藤原:懐かしいですね。
堀江:懐かしいです、めちゃくちゃ懐かしいです。だからあれを汎用のグラフィックをPCで使えるグラフィックカードみたいなやつで使っていたんですよね。
藤原:なるほど。
堀江:いやなんかそういうグラフィックカード作っているメーカーでバイトしていたこともあるので。
藤原:そうですか!
堀江:そうなんですよ。だからなんとなく、流れはわかるんですけれど。なるほど。そういうことですね。ああ、なるほどなぁ。なかなか多分僕ね、思ったんですけれど、その日本ってこう「言語の壁」があって。というのは、僕たちってそのすごい高度な科学技術を自国語で学ぶことができるじゃないですか、100%。だから人材が逆に僕、流出していないと思っているんですよ、比較的。これが例えば東南アジアとか行くと、もう高等教育が英語になっちゃうから、英語で高等教育を受けた者はもう世界中で働けるんで流出してしまうんですよね。日本って比較的流出していなくて、そこは結構実は僕は強みだと思っていて。AIによってその中国語だろうが、大体中国語と英語ですけれど、論文って読めるじゃないですか。日本にいても世界中の論文が全然普通にリアルタイムに入ってくるわけで、ネットでつながっているから。ってなると、逆に海外に行くインセンティブ、あんまなくなるんじゃないかなと思っていて。なので、わりかしその高度な人材がいるんで、こうあまりお金のかからない基礎研究みたいなものって、それなりに予算もあるからそれなりにやれるんだけど、その後のやっぱ結局、僕「力技(資金力)」だと思っているんで、その力技ができるかどうかみたいな。そこが。だから例えばシードで100億集まりました、よし行くぞみたいな。日本ではなかなかできないわけで、そこが大きな差になってきていると感じますね。
藤原:はい、全く同感ですね。なんでよく投資家さんとお話をしても、「じゃあオタクってよく何ゲーなの?」ってよく言われるんですよね。要は「とにかくディストリビューションして面を取りに行くタイプのゲームなのか、何なのか」って聞かれるんですけれど、私はもうこれ言ったら本当にちょっと乱暴な言い方になるんですけれど、極論、お金集めという要素も大きいと思っているんですね。なので我々、実はホームページも含めて情報発信って実は英語でしかやっていなくてですね、もちろん日本の会社なんですけれど。なので基本的には英語圏で展開をしていわゆるお金を、グローバルなマネーをいかに引っ張ってこれるかと。これはやっぱりゲームを決める大きな要素だということは自分も実感してやらせてもらっているところはあるんですね。もちろん技術は大切なんですけれど、そこの要素というのはかなり大きいなっていうのは、やっぱり中にいても思うところがやっぱりあります。
堀江:やっぱそうですよね。なのでせっかく僕、この取材シリーズってそういうところばかり行っているんですけれど、いいのがいっぱいあるんですよね。「もっとこれ金かけりゃいいのに」みたいな。
藤原:幸い日本は、よその国もそうかもしれないですけれど、とはいえ、この重点分野の一つに半導体が選ばれてますんで、やっぱりその公的なお金、要は助成金だったりとかですね、をやっぱりしっかり使うと、日本企業ならではのアクセスとして使えますので、そこを使いつつも、やっぱり海外の次の成長のための、それこそ何百億とかというマネーですね、を引っ張ってこれるかというところは、セットでやっていくところが、やっぱりもう一つの戦いかなとは思いますけどね。
堀江:じゃあ、プレステ3で止まった夢が再開すると。
藤原:はい。あとこの世界一を取っているスーパーコンピューターとですね、民生とスパコンで今力を合わせてやっているんですけれど。
堀江:スパコンってなぜスパコンって呼ばれていたのですか?
中島:それはやっぱりお店で買えるコンピューターの100倍とか1000倍とか速いのが常に「スーパーペケペケ」ですよね。
堀江:基本的な設計は変わらないですか?
中島:いや、それもどんどん変わっていってて。というのは、私が会社でやっていた頃、ベクトルコンピューターというのが標準的な扱いを受けていたわけですけれど、やっぱりさっきのメモリインターフェースにお金がかかりすぎるんですよね。そんな数が出るわけでもないので、やっぱりお金をどんどん削ろうと思ったら、「その普通のCPUをたくさん並べましょうと、ベクトルを捨てましょう」みたいな流れにみんな行っちゃうわけですよ。
堀江:行っちゃってますよね。
中島:だからそういう意味では、やっぱり開発費をいかに下げるかという話もあれば、「二番じゃダメなんですか」って人もいつつ、でも一番目指したいという人もいつつ、形はどんどん変わっていくわけですよ。だから今のそのスパコンというのは、そのコンピューターのCPUの一個一個の中身よりも、その例えば10万ノードとかね、20万ノード、どうやってネットワークに繋ぐかって、そっちの方ですよ。
堀江:だからなんかそうですよね。もうエネルギーいくら使ってもいいからやれと。
中島:でもエネルギーいくら使ってって言うとね、電気代払えないから半分止めるみたいなことになるわけですよ(笑)。
堀江:なるほどなるほど(笑)。そういうことなんですね。いやでもあの、ぜひ頑張っていただきたいなと思います。
藤原:ありがとうございます。
堀江:はい。そうか、そういうことだったんだ。他にもこういう会社がいっぱい出てくるといいですね。
藤原:そうですね。はい。ただ、さっき先生もおっしゃっていましたけれど、私ももう実は50過ぎているんですけれど、本当にもうこの10年間でですね、こういった現役の方というのが、残念ながらもう結構本当に第一線から退かれるんですね。
堀江:そりゃそうだ。
藤原:私も実はこれがもう最後の、実はラストチャンスかなと思ってまして。特に半導体、パワー半導体というか、我々みたいなロジック半導体ありますけれど、ロジック半導体に与えられたチャンスはもう正味あともう数年かなという風に思っていますね。本当に中島先生みたいなノウハウをもうこの10年で社会実装しきらないと、ちょっともう次のチャンスはないかなという危機感は一方でありますね。
堀江:僕らがやっているロケットも一緒です。ないですよ。
藤原:ないですね、はい。もう後任の方いらっしゃらないという。
堀江:後任の方もいらっしゃらないし、金集められるところもないし、大企業はなんか本気でやらないしみたいな。言っても本気でやらないですからね。本業に比べ、本業というかメインの事業に比べたら全然ちっちゃいから、「宇宙なんかやんねーよ」みたいな感じになっているので。いやいや、見てください。SpaceXなんてAIと一緒になって時価総額200兆円くらいでIPOしますよ。あれおかしくないですか?
藤原:いやーやばいですよ、もう。
堀江:いつかくっつかなきゃいけないですよ、確かに。宇宙データセンター。
藤原:そうですね、そういう文脈で言ったら多分可能性ありますよね。
堀江:いきなりイーロン・マスクが「宇宙データセンター」と言い始めたから、結構ホットワードというか、バズワードになっているんですよ。
藤原:まあ理にかなってますからね。雲がないから365日発電できますよね。
堀江:だから宇宙太陽光発電というアイデアは昔からあるんだけど、マイクロ波送電して、今度それ(実証衛星が)打ち上がりますけれど、打ち上がるかどうか、あのロケット打ち上がるかどうか分からないけれど(笑)、あの、一応マイクロ波送電を地上にする実験、今度やるみたいですけれど、JAXAの衛星で。でも、多分地上に送電するよりその場で地産地消した方がいいですよね。まあレーザーの光通信技術も結構発達しているので、なんかね、まあそうそう、そこもなんか僕すごい調べているんですけれど、多分宇宙バックボーンになりますよ。インターネットのバックボーン、今は海底光ケーブルですけれど。海底光ケーブルって、あの、本当にテラ超えてペタの世界に入ってますけれど、宇宙はまだまだですけれど、それでもね、レーザー使ったその波長を多重化したりとか、そういう技術とかどんどん発達していけば、まあモバイルもね。昔は「モバイルってブロードバンドなんかできねえだろ」って言われていたのが急速にできるようになったじゃないですか。同じように多分光の技術で変わってくるんで、宇宙データセンターってまあなんか排熱が難しいとか色々言われてますけれど、あの発電に関して言うと非常にいいので、宇宙データセンターがメジャーになる可能性もありますよね。
藤原:そうですね。おっしゃる通り、やっぱりシリコンをいかに冷やすかというところが、やっぱ空気がないので、ヒートシンクでしかこう……そこさえ解決すれば、まあ多分ラストピースが埋まるのかなって気はしますけどね。
堀江:うん、そうすると本当に(ロケットとAI半導体が)一緒になるかもしれないです。いや、あの、僕らはなぜロケットやっているかというと、打ち上げ能力がすべての供給を制限すると思っているので。一番そこがボトルネックになっているので、それこそ今まだスターリンク(Starlink)くらいじゃないですか。こうでっかい産業になっているのって。だけど宇宙データセンターなんて話になったらまた桁が一個上がるんで、そうすると供給を制限するのはロケットなんで、そこを持っている会社が一番強いと思うんですよね。だからSpaceXが強いんですけれど。でもなんかそれに、「じゃあもう全部SpaceX依存にしちゃうんですか?」みたいな話なんですよね。
藤原:同じ文脈ですからね。
堀江:そう、そうなんですよね。「そこでいいんですか?」みたいな。でも永遠にアメリカの属国ですよ、これという。ホルムズ海峡止められるだけでキュンってなっちゃうみたいな。アメリカ産のヘリウムを買わざるを得ないですからね、今。ということで、頑張ってください。ありがとうございました。
藤原・中島:こちらこそありがとうございます。どうも。
藤原健真(Kenshin Fujiwara)
滋賀県出身。カリフォルニア州立大学コンピューターサイエンス学部卒業後、Sony Computer Entertainment(現Sony Interactive Entertainment)に入社。ゲーム機PlayStation2・3のCPU・GPU開発に携わる。その後、数社のIT・AI系スタートアップを創業し、2024年LENZO INC.を共同設立、CEOに就任。
中島康彦(Yasuhiko Nakashima)
佐賀県出身。1986年京都大学工学部情報工学科卒業、1988年修士課程(情報工学専攻)修了、1998年博士(工学)。1988年富士通株式会社電算機開発部(兼)スーパーコンピュータ開発部、1999年京都大学、2006年奈良先端科学技術大学院大学、2024年LENZO INC.共同創設、現在に至る。