株式会社bajji(本社:東京都台東区、代表取締役:小林慎和)は、障害がある方の日常活動データをAIでクリエイティブ素材に変換し販売できるサービス「Poteer(ポティア)」のAndroidアプリを2025年8月に正式リリースした。これは、これまで働く機会が少なかった方々が、AI技術によって価値あるアウトプットを生み出せる新しい仕組みである。
AIで「働く」の概念を拡張する
日本では、18歳から64歳までの障害者のうち、約9割にあたる約416万人が就労できていない。特に重度の知的障害や身体障害のある人々は、社会参画と経済的自立の課題に直面している。
生成AIの発展は既存の職種を脅かす一方で、bajjiは「AIによって、これまで働くことができなかった人々が価値あるアウトプットを出せるのではないか」という逆の発想からこのサービスを構想した。
「Poteer」が実現するユニークな仕組み
「Poteer」は、障害がある方の日常活動データ(視線の動き、歩行の軌跡、声のリズムなど)を収集し、AI技術がそれらをデザインやビジュアル素材などのクリエイティブ素材に変換するプラットフォームである。

- データ収集: 日常生活の行動データをアプリを通じて収集する。
- AI変換: 収集したデータをプロンプトに変換し、AIが壁紙デザイン、動画素材、広告用ビジュアルなどに変換する(特許申請中)。
- 販売・還元: 生成された素材はプラットフォーム上で企業やクリエイターに販売され、収益の一部が参加者に還元される。
企業のメリットとしては、社会的価値を高めつつ、クリエイティブ制作の効率化も実現できる点が挙げられる。クリエイティブの背景情報として、どのような人がどのように制作したかを知ることも可能である。
開発の経緯と社会的意義
代表の小林氏は、自身の息子が最重度知的障害である経験と、妻が児童発達支援事業を創業した経験から、当事者として福祉サービスの課題を実感し、「Poteer」を構想した。
「Poteer」は、AI技術で障害者の可能性を解き放ち、社会全体が共創する新しい仕組みを提供することで、「誰もが働く喜びを感じられる社会」の実現を目指す。
問い合わせに関して
素材制作に興味がある障害者・施設・ご家族の方、素材の活用に興味がある法人の問い合わせ受付はこちら。
https://corp.bajji.life/poteer#poteer-contact
詳細情報・アプリのダウンロード
「Poteer(ポティア)」サービスサイト
https://corp.bajji.life/poteer
「Poteer」ギャラリーサイト(素材生成例を展示)
https://poteer.life/
「Poteer」Androidアプリ(Google Play ストア)
https://play.google.com/store/apps/details?id=life.bajji.poteer&hl=ja
ZEROICHI編集の注目点
本記事は、「テクノロジーは、人間の弱点を補うための拡張器となる」という、AIと人間との関係性の本質的な問いを投げかけている点に注目した。
生成AIの進化は、人間の能力を代替し、仕事を奪うというネガティブな文脈で語られがちである。
しかし「Poteer」は、その逆の側面を証明している。AIが、これまで社会的に価値を還元することが難しかった「障害者の日常活動」を、クリエイティブという形での「価値創出」へと転換させている。
このサービスは、単なる福祉事業や慈善活動ではない。「ささいな活動」を「付加価値のあるアウトプット」に変えるという、AIならではの高度な「意味の再定義」を行っている。これは、人間の能力の限界をAIが補うことで、新しい経済圏や社会参画の道を切り開く、「AI共創型の新しい社会構造」のモデルケースと言える。
「AIが雇用を奪う」という言説に対し、「AIが新たな雇用を生み出す」という明確な反証を提示するこの取り組みは、AI時代の社会のあり方を考える上で、極めて重要な示唆を多く含むだろう。
※本記事は、原文から一部編集・要約して掲載しています。