2025年9月12日、株式会社BLOCKSMITH&Co.は、渋谷Web3大学株式会社、Turing Japan株式会社、株式会社かんがえる防災と連携し、福岡県飯塚市で日本初となる「ブロックチェーン×防災」の実証実験を開始した。本プロジェクトは、飯塚市の「先端情報技術実証実験サポート事業」に採択されたものであり、防災啓発の定着と避難所受付の効率化を目的としている。
実証実験の2本柱

第一の柱は、防災クイズとポイント獲得を組み合わせたアプリ「QAQA-BO(カカボ)」である。飯塚市公式LINEから参加でき、日常的に防災知識を学び続ける仕組みを提供する。参加ログインボーナスや「防災学習証明書」の発行、三世代で参加できる設計により、防災教育を生活の一部に根付かせる狙いがある。
第二の柱は、世界標準のデジタル証明技術「Turing Certs」を活用した避難所認証システムである。住民はDID/VC(分散型ID/検証可能証明書)を取得し、避難所ではQRコードをかざすだけで本人確認が完了する。改ざん防止機能に加え、ISO認証やGDPR適合による高度なプライバシー保護を実現している。これにより、受付時間の短縮と正確な避難者管理が期待される。
アナログとデジタルの融合
今回の取り組みでは、スマートフォンに不慣れな高齢者への対応や地域防災訓練のサポートも重視されている。株式会社かんがえる防災が地域住民への指導や紙ベースでの対応を担い、「誰も取り残さない」包括的防災モデルを構築する点が特徴的である。
参画企業の役割
- BLOCKSMITH&Co.:「QAQA-BO」の開発・実装
- 渋谷Web3大学:プロジェクト全体統括・企画設計・検証
- Turing Japan:デジタル証明技術の提供
- かんがえる防災:地域防災ノウハウとアナログ連携
実証実験の内容と成果目標
市民100名規模での防災クイズ参加と30名の避難所認証システムモニターを通じて、継続学習効果や受付時間短縮効果を測定する予定である。期待される成果は以下の通りである。
- 防災意識の定着と多世代での学習習慣形成
- 避難所受付の効率化とデータ精度向上
- デジタル・デバイドを解消するモデル構築
- 全国1,741自治体への展開可能性
実証は2025年12月から2026年3月にかけて実施され、成果分析を経て全国展開を視野に入れる計画である。
飯塚市の位置づけ
飯塚市は2021年に「ブロックチェーン推進宣言」を掲げ、次世代産業育成を進めてきた。今回の防災分野への応用は、地方からのイノベーション創出事例として全国的に注目される。特に、ブロックチェーンの社会実装を「防災」という公共性の高い領域で進めることは、日本の地方自治体DXにおける先駆的な試みである。
ZEROICHI編集の注目点
ZEROICHIが本件を注目するのは、テクノロジーと地域課題解決が有機的に結びついている点である。ブロックチェーン技術はこれまで金融やNFT領域で注目されてきたが、防災という生活直結の社会インフラに適用される事例は稀少である。また、防災教育の“ゲーミフィケーション化”と避難所運営の“デジタル化”を同時に実証する点は、行政サービスにおける実効性の高いDXモデルと評価できる。さらに「誰も取り残さない」という理念をアナログとデジタル双方で補完する構造は、今後の自治体サービス設計における重要な示唆を含んでいる。
今後、このモデルが全国展開し、各自治体の防災力強化と住民参加の活性化につながるかが焦点となるだろう。
※本記事は、原文から一部編集・要約して掲載しています。