MEDICAL

再生医療の「ラストワンマイル」をどう越えるか

医療機関近接型コンパクト細胞製造ユニット「KIOSK」が示す、新しい提供モデル

株式会社Gaudi Clinical(東京都中央区 代表取締役CEO 飛田護邦)は、医療機関近接型コンパクト細胞製造ユニット「KIOSK(キオスク)」の完成披露記者発表会を開催し、再生医療の提供体制における“ラストワンマイル”を支える新たなモデルとしての取り組みを示した。再生医療は「細胞」という特性上、品質管理や輸送制約、医療機関側の設備・人材負担など、普及に向けたボトルネックが多い領域である。KIOSKは、こうした課題に対し「医療機関の近接地で最終加工と品質確認を行う」という発想を軸に設計された。

本件が示唆するのは、再生医療の価値を高める“技術の話”というよりも、届け方そのものを現実に寄せて再設計するという「提供体制の話」である。高度化する医療ほど、最後に立ちはだかるのは輸送や運用といった地味な工程であり、そこをどう整えるかが普及の前提条件になる。Gaudi Clinicalは、細胞を必要とする患者へ、品質と安全性を担保しながら安定的に届けるための選択肢としてKIOSKを位置づけている。

「生き物」を扱う以上、最後は運用が効いてくる

再生医療は、製品のように在庫して運ぶものではなく、扱いに繊細さを要する。品質管理の難しさに加え、迅速な輸送が求められる場合もある。さらに、医療機関側で細胞加工に関する設備を整え、運用できる人材を確保する負担は小さくない。普及を阻む要因は、研究開発の段階だけでなく、医療提供として“回る状態”にする工程に集中している。

KIOSKは、医療機関の近接地で最終加工および品質確認を行う設計思想により、使用期限の短い細胞を品質を維持したまま届けることを狙う。中央集約型の細胞加工施設(CPC)にすべてを寄せるのではなく、提供の現場に近い場所で最終工程を担うことで、最後の詰まりを解消しようとするアプローチである。

「適合」取得と受託開始が示す、実装段階への移行

Gaudi Clinicalによれば、新日本橋に設置したKIOSKは、再生医療等安全性確保法(安確法)下における細胞加工施設として「適合」を取得している。制度に則った運用基盤を確保したうえで、当該拠点を第1号として、PRP(多血小板血漿)およびASC(脂肪由来幹細胞)を対象に、歯科・整形外科領域の契約医療機関(約20施設)向けに細胞加工受託事業を開始したという。

ここで重要なのは、構想や実験にとどまらず、制度対応と運用を伴う形で「提供モデルとして始動した」という点である。医療の領域では、よいアイデアだけでは前に進まない。法令・品質・運用・関係者調整といった条件をクリアし、日々の現場で回し続けて初めて社会実装になる。KIOSKは、その実装局面に踏み込んだ取り組みとして位置づけられる。

分散型製造体制という“次の現実解”

Gaudi Clinicalは、中央集約型CPCと地域拠点型のKIOSKを組み合わせた「分散型の細胞製造体制」を見据える。医療機関近接型の拠点を起点に運用実績を積み、再生医療をより安定的に届ける体制づくりを目指すとしている。輸送や供給の制約は、規模が大きくなるほど顕在化しやすい。だからこそ、最初から“分散”を織り込んだ設計に意味がある。

分散型は万能ではない。運用の標準化、モニタリング、バリデーション、品質の一貫性など、難所は増える。しかし、普及の局面では「一極集中の効率」だけでは到達できない現実もある。KIOSKは、その葛藤に対して、現実的な設計で応えようとする試みである。

構築から運用までを束ねる「ワンストップ支援」

同社は自社でのKIOSK構築・運用経験を踏まえ、細胞加工施設(CPC/KIOSK)の設計・構築、運用設計・人材支援、モニタリング・バリデーション支援までを含むワンストップソリューションを、医療機関・研究機関・再生医療関連企業向けに提供している。再生医療の現場は、装置や施設だけでは成立しない。運用設計と人材が揃って初めて、提供品質は安定する。構築と運用を切り離さず、必要要素を束ねて支援する姿勢は、普及局面の実務に即したものだ。

ZEROICHI編集部の注目点

ZEROICHI編集部が本件に注目した理由は、再生医療の価値を「最先端の医療技術」として語るのではなく、患者に届くまでの“最後の工程”を社会インフラとして整えようとしている点にある。医療の普及を阻む壁は、研究や治療法そのものの限界だけではない。運用と供給の設計不在が、現場の負担と不安を増幅させ、結果として提供の広がりを止める。KIOSKは、その「見えにくい壁」に正面から手を入れる取り組みである。

また、安確法下での適合取得や受託開始といった制度・運用の節目を伴っている点は、実装段階の重みを示す。派手な成果を先に語るより、まず提供体制の前提条件を整える。この地味さこそが、医療領域ではむしろ信頼につながる。再生医療の“ラストワンマイル”に焦点を当てた本件は、普及のリアリティを捉えるうえで、今整理しておく意義があると判断した。

「細胞を、工場から街角へ」という問いの射程

同社は「細胞を、工場から『街角』へ」というメッセージを掲げる。これは、医療の質を落とすという意味ではない。むしろ、品質と安全性を担保しながら、現場に近い場所で安定提供するための体制設計の問いである。再生医療を必要とする患者に、安心と信頼を伴って届ける。そのために、中央集約と分散拠点をどう組み合わせ、どの工程をどこで担うのか。KIOSKは、その設計の入口を示している。

■原文リリース(参照)
原文リリース発表日付:2026年1月23日
タイトル:Gaudi Clinical、医療機関近接型コンパクト細胞製造ユニット「KIOSK」完成披露記者発表会を開催― 再生医療の“ラストワンマイル”を支える新たな提供モデルとして始動

原文リリースのURL:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000121700.html

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