離婚は終わりではなくなった。共同親権時代の合意形成を支える「wakai」
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離婚は終わりではなくなった。共同親権時代の合意形成を支える「wakai」

本稿は、株式会社wakai(東京都港区 代表取締役社長 的場令紋)への提供資料および、代表取締役社長・的場氏への取材をもとに作成した記事である。

2026年4月に予定される共同親権・法定養育費をめぐる制度変更を前に、離婚は単なる「終わりの手続き」ではなく、離婚後も合意形成が続く問題として捉え直されつつある。

そうした変化のなかで、スマホ完結型オンライン調停サービス「wakai」はどのような役割を担おうとしているのか。本稿は一企業の新サービス紹介としてではなく、制度変化に対する社会インフラの萌芽として、この動きを見ていくものである。

制度が変えるのは「離婚」ではなく「離婚後」である

株式会社wakai代表取締役社長の的場令紋氏のポートレート
的場令紋氏

共同親権時代において変わるのは、離婚時の形式だけではない。

親権をどちらが持つかという一点に収れんしていた従来の見方に対し、今後は離婚後も父母の協議が必要となる場面が増える。

進学、養育費、親子交流、教育、医療など、子どもの生活にかかわる論点は継続的に発生するからである。取材に対し的場氏は、共同親権そのものの賛否ではなく、制度が導入されたあと、現実の生活のなかで父母がどう合意形成していくかが問われると語った。

つまり、制度ができれば自動的に問題が解決するわけではない。

離婚後の家族の課題は、権利関係の整理だけでなく、日々の運用の問題へと移る。制度変更によって家族の問題は、よりいっそう「どう回すか」の問題になるのである。

なぜ話し合いは止まるのか

離婚当事者が話し合えなくなる理由は、法知識の不足だけではない。

感情的対立、恐怖、疲弊、相手と接触したくない心理、さらにはモラハラやDVの文脈など、話し合いそのものを困難にする条件が重なることが多い。的場氏は、制度や手続以前に、人は感情が整理できないと話し合えなくなると語る。

問題は「何を決めるか」以前に、「決めるための対話に入れるかどうか」にある。

そこに、裁判所調停へ進むことの心理的・時間的・実務的な重さが重なる。

必要であるにもかかわらず、進められない。結果として停滞が長引き、そのしわ寄せが子どもの生活や親子関係に及ぶ。的場氏が起業動機として語ったのも、まさにこの構造であった。

離婚当事者同士の対立が長期化し、最終的に最も影響を受けるのは子どもであるという問題意識が、サービス立ち上げの原点にあったという。

既存制度の限界と“抜け落ちる人たち”

もちろん、家庭裁判所の調停という既存制度は存在する。

しかし、平日日中の出頭、書類の作成と郵送、日程調整の負担、長期化しやすい進行など、当事者にとってのハードルは低くない。弁護士への依頼も選択肢ではあるが、費用面・心理面を含め、誰にとっても気軽に選べるものではない。私的な協議は始めやすい一方で、論点整理や文書化の面で限界がある。

その結果として生まれるのが、「裁判所ほど重い手続きは無理だが、当事者だけではまとまらない」という空白である。

wakaiが入ろうとしているのは、まさにこの空白である。情報提供だけでもなく、弁護士依頼の代替と単純化できるものでもない。その中間にある、進めたくても進められなかった合意形成のプロセスに対し、別の入口を設けようとしているのである。

wakaiは何を再設計しているのか

共同親権時代に必要な離婚後の合意形成インフラを示す図解。従来の課題、制度変化、wakaiの役割を3つの領域で整理している
共同親権時代における離婚後の課題と、オンライン調停「wakai」が担おうとしている役割を整理した図。制度変更によって家族の問題が“運用の問題”へ移るなか、裁判所調停と当事者間協議のあいだにある空白をどう埋めるかを示している。

wakaiを単なる“離婚をオンライン化したサービス”として捉えると、本質を見誤る。

同サービスが再設計しているのは、離婚手続そのものよりも、感情・制度・手続の複雑さが絡み合って止まってしまう合意形成の流れである。

提供資料では、争点整理、申し立て、専門家の介在、合意文書化までをつなぐ設計が示されているが、価値の中心は「わかる」ことではなく、「進められる」ことにある。

特に意味が大きいのは、非対面で進められることである。

相手と直接顔を合わせなくてよいことは、単なる利便性ではない。心理的な安全性を確保し、対話の入口に立ちやすくする条件でもある。時短や低価格といった説明もあるが、それ以上に重要なのは、これまで重すぎて着手できなかった人にとっての着手可能性を上げる点にある。

“司法DX”ではなく“感情と手続の分離”として見る

wakaiの面白さは、効率化SaaSとしてだけでは捉えきれない。

人が最も動けなくなるのは、制度が存在しないからではなく、感情が整理できず、相手と話せず、何から始めればよいかもわからなくなるからである。

そこに第三者の介在とオンライン設計を組み合わせることで、対立の熱量を下げ、必要な論点だけを前に出す。ここにあるのは、司法手続の単純なDXというより、感情と手続をいったん切り分ける試みである。

テクノロジーの価値も、単に「便利」にあるのではない。

本稿で注目したいのは、テクノロジーが話し合える環境をつくるための裏方として使われている点である。アプリが前に出るのではなく、争点整理や日程調整、中立的な第三者との接続を通じて、当事者が合意形成へ入っていけるようにする。この文脈で初めて、wakaiの特異性が見えてくる。

信頼をどう作ろうとしているのか

この領域で問われるのは、利便性よりも先に安心感である。

扱うテーマが離婚や親子関係である以上、サービスとして速い、安い、使いやすいだけでは十分ではない。中立性は担保されるのか、制度との接続はどうなっているのか、本当に任せてもよいのか。利用者が最初に問うのはそこだろう。

その点でwakaiは、弁護士が中立的な立場で調停人として関与すること、カスタマーサクセスを含む伴走支援を置いていることなど、プロダクトだけで完結しない設計を採っている。的場氏は、単にサービスを提供するのではなく、利用者が不安なく進められる状態を支えることが重要であると説明した。

成長企業としての拡大以前に、まず社会的に信用される存在でなければならないという認識が、運用設計にも表れている。

共同親権時代のインフラになり得るのか

wakaiを「離婚時の支援サービス」としてだけ見ると、その可能性を狭く見積もることになる。

共同親権時代には、離婚後も合意形成が続く。制度が整っても、それを現場で運用するための対話基盤がなければ、現実は回らない。そう考えると、wakaiは単に離婚の場面で使われるサービスではなく、継続的な合意形成の入口として位置づけることができる。

もっとも、現時点の実装範囲と将来像は分けて考えるべきである。

現在の主な対象は、これから離婚やその条件整理に向き合う当事者であり、共同親権時代のあらゆる協議場面をすでに包括しているわけではない。

したがって、現段階で過大に持ち上げるのではなく、社会に必要とされる方向へ伸びようとしている兆しとして捉えるのが妥当であろう。

wakaiが広がると何が変わるのか

仮にこのような仕組みが広がれば、離婚や家族問題における“解決の入口”は軽くなる可能性がある。

裁判所へ行くか、泣き寝入りするか、という二択しか持てなかった人に、別の道が開かれるかもしれない。相手と会わずに前に進める環境が整えば、停滞していた協議が動き出す余地も生まれる。

結果として、子どもへの二次被害や、生活再建の遅れを抑えうる可能性もある。

さらに、的場氏は将来的な視野として、離婚以外の身近な紛争解決領域にも言及している。

相続、少額債権、未払い賃金など、感情的対立があり、当事者同士では解決しづらいが、裁判まで行くには重すぎる問題は少なくない。

そうした領域にまで接続していくなら、wakaiは離婚支援の枠を超え、司法アクセスの民主化を考えるための一つの実装例として存在感を増していくことになるだろう。

ZEROICHIがこのテーマを取り上げる理由

ZEROICHI編集部がこのテーマに注目する理由は、これが一企業の新サービス紹介にとどまらないからである。

共同親権や法定養育費をめぐる制度変更によって浮かび上がるのは、制度そのものの賛否だけではない。制度ができたあと、それを現実の生活のなかでどう運用するのかという、社会の未整備領域である。

離婚は私的な出来事に見えやすいが、養育費、親子交流、教育、生活再建と接続する以上、明確な社会課題でもある。

その意味でwakaiは、制度の周辺に生まれたひとつのスタートアップというより、家族・司法・社会インフラの接点にある変化を映す存在として読める。

ZEROICHI編集部として本稿で示したかったのは、「新しいサービスが出た」という事実ではない。むしろ、社会の仕組みはどこから更新されるのか、その更新は制度の内部からだけでなく、制度と生活のあいだに立つプレイヤーからも始まりうるのではないか、という問いである。

wakaiは、その問いに対する一つの実装例として注目に値すると考える。

会社概要

名称:株式会社wakai
代表者:的場 令紋
所在地:東京都港区虎ノ門4丁目3-2 城山トラストコートE-1211
設立:2024年11月
資本金:1億円
事業内容:スマホ調停プラットフォームサービス「wakai」のソフトウェア開発・サービス提供/裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律に基づく民間紛争解決手続の運営及び管理/広告/データ関連/国内・海外での営業支援コンサルティングとマーケティングサービス
URL:https://ddrwakai.co.jp/

原文リリース(参照)

2025年11月26日発表:スマホひとつで離婚調停の時代へ!オンライン完結型スマホ調停「wakai」サービス開始
原文リリースのURL:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000160941.html

※本記事は、取材および公開情報をもとに構成している。事実関係や固有情報については、公開情報を参照のうえ確認した。