堀江貴文氏は、東京農工大学院生命機能科学部門・福谷洋介助教から、現在行われている、嗅覚受容体によるニオイ応答機構の解析についての研究について話を聞いた。
福谷助教の研究により、嗅覚受容体の膜タンパク質の造成に成功。さらに、個人がニオイを感じるパターンには、遺伝情報のかけ合わせが関係していることが明らかに。今後の展開は?
- その1 人間はニオイを感じる受容体を約400種類持つ。この嗅覚受容体の膜タンパク質の造成に成功。
- その2 1人のゲノムに400種類の違う受容体が配列され、遺伝情報のかけ合わせでニオイのパターンが生まれる。
- その3 遺伝子検査の技術で、個人個人のニオイの感じ方、遺伝子配列の違いが解明される。←今回はここ
遺伝子検査の技術で、個人個人のニオイの感じ方、遺伝子配列の違いがわかってくる。
堀江 アルデヒドのニオイを感じやすい人と感じにくい人がいるわけですね。それで感じやすい人は、臭いと思ってしまう。
福谷 そうだと思います。「香害」(化粧品や香水、柔軟剤、合成洗剤などに含まれている合成香料、化学物質で不快感や健康被害を生じること)が話題になっているじゃないですか。不快感だけに関していうと、香水などつけている本人はいいニオイだと思っているけれども、近くにいる人は臭いと感じてしまうものもあります。そうした個人差は先天的なものもあって、ゲノム上の受容体の遺伝子の時点で違っている可能性が高い。
堀江 そうか。じゃあ、遺伝子検査でそれをやると面白いですよね。
福谷 でも、まだ全部はわかっていないんです。400種類の受容体の配列はこんな感じだろうというのはわかっていますが、どのニオイにどの受容体が対応しているかという組み合わせはまだ決まっていないものが多いんです。
堀江 ああ、この遺伝子とこの遺伝子があると、このニオイを感じるという組み合わせですね。
福谷 そうです。そこがわかれば、個人個人のニオイの感じ方の違いがわかると思います。
堀江 でも、それがわかると面白いですよね。個人のニオイに関する遺伝子配列の違いは、今の遺伝子検査の技術でできますよね。
福谷 できますね。
堀江 僕も『ユーグレナ・マイヘルス』(遺伝子解析サービス)をやっているので、僕の人ゲノムは全部解析されているはずなんです。すると、そのデータをもとにして、どのニオイの受容体を持っているのかが分かりますよね。
福谷 分かります。
堀江 そして、たとえば1万人モニターを集めて、いろいろなニオイを嗅がせてデータ解析すると……。
福谷 集約されていくと思います。先ほどお話した、魚の腐った臭いニオイを感じない集団でそういう研究をしたら、特異的な変異があったという発表もありましたし。
堀江 これ、やったらめちゃくちゃウケるんじゃないですか。
福谷 そうですね。私もそこまでやっていきたいと思っています。
堀江 だって、「あなたのニオイの好みがわかります」って、めちゃめちゃエンタメじゃないですか。「あなたはパクチーが得意/得意じゃない」「セロリが得意/得意じゃない」「スイカが得意/得意じゃない」「ウニが得意/得意じゃない」そういうのがすぐにわかるわけですよね。
福谷 そうですね。
堀江 いやー、とても面白かったです。ありがとうございました。
福谷 こちらこそありがとうございました。
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Text=村上隆保 Photo=ZEROICHI
福谷洋介(Yosuke Fukutani) 東京農工大学 大学院工学研究院 生命機能科学部門助教
1986年生まれ。東京都出身。2014年、東京農工大学大学院工学部博士課程を修了し、現職。2019年に「日本生物工学会東日本支部長賞」を受賞。現在は「嗅覚受容体をによるニオイ応答機構の解析、がん幹細胞の嗅覚受容体選択的発現機構及びその意義の解明」を研究中。