ドローン技術が高度化し、カーボン素材や複雑な電子制御が当たり前となる中で、あえて「ダンボール」という究極のローテク素材で防衛市場に挑むスタートアップがある。株式会社AirKamuy(エアカムイ)だ。
「安くて、大量に作れて、長く飛べる」——自衛隊からの切実な要望に応えるべく彼らが行き着いた答えは、一見すると航空機の常識を覆す重くて脆い素材だった。しかし、その「弱さ」こそが、従来の数千万〜数億円もする標的機のコストを劇的に下げ、現代のドローン戦に対する訓練の在り方を根本から変えようとしている。
堀江貴文氏が、同社の山口拓海氏とともに、あえて「ローテク」を選ぶ戦略の合理性と、日本の防衛産業に風穴を開けるスタートアップの勝機に迫る。
3Dプリンターで作る「ダンボールドローン」とは?

堀江貴文(以下、堀江):あの3Dプリンターはチェコのものですか?
株式会社AirKamuy 代表取締役CEO 山口拓海(以下、山口):チェコから入れています。
堀江:チェコってホワイト国なんですか?
山口:ギリギリ……セーフだと認識しています。
堀江:我々は宇宙開発をやっているので、マジでホワイト国認定されているところからしか、人も受け入れられないんですよ。
山口:人とかはいろいろややこしいので、うちも今は日本国籍だけにしてます。でも、この中には全然まだ中国製の部品もありますね。
堀江:まあまあ、コモディティ(汎用品)に関して言うとね。でも最近は「デュアルユース」がどうのこうのと言われ始めたから、ちょっと怖いですけどね。

山口:怖いですけど、まだ全然入ってくるので、いろいろ試しています。メーカーさんからは「あと1年分くらいしか在庫がないですよ」と言われたり。サマリウムはモーターのアクチュエーターに使われていて、高温でも動作する永久磁石には欠かせないんです。「それがないと、困るよね」みたいな。ていうマイナーなところが結構いっぱい出てきていますね。
我々はそんなに厳しい環境で使うものがないので、ほぼ民生品でいけてしまっています。それがサプライチェーンの強靭化にもつながっていますね。
堀江:例えば3Dプリンターで「日本製のいいのがない」とおっしゃっていましたが、それはどう「いい」んですか?
山口:簡単に言うと、安くて綺麗にできるんです。
堀江:なるほど。それは何の技術なんですか?
山口:何なんでしょうね……。
スタッフ:制御とかですかね。3Dプリンターのステッピングモーターの制御とか、トータルの技術で結構ノウハウがあるらしいんですよ。
堀江:あ、そうなんだ。例えばダメなものだと、仕上がりが雑だったりするんですか?
山口:いや、そういうわけではないんですけど、同じ仕上がりに対して日本製のものはかなり値段が高くなるんです。チェコのものでも、同じ仕上がりならかなり綺麗にできます。
堀江:へえー。この白い部分は全部3Dプリンターで作られているんですね。
山口:そうですね。今は試作品なので3Dプリンターですが、将来的には射出成形などで作ろうと思っています。
堀江:御社は基本、固定翼機のドローンをやっていくんですか?
山口:はい。固定翼機を設計できるのが我々の強みなので、メインでやっていく予定です。

堀江:それをしかもダンボールでやっていると。ダンボールじゃないものも作るんですか?
山口:そうですね、普通のカーボンのもう少し大きい機体も開発予定です。
堀江:今あえてダンボールでやっているのは、なぜなんですか?
山口:需要があるからです。僕らは軍事と防衛だけをやっていく会社ですが、自衛隊からは「安くて大量に作れて、長く飛べるものが欲しい」という要望があります。その結果、我々はダンボールに行き着きました。
堀江:確かに。でもカーボンに比べると弱そうですが……。
山口:いや、もう弱いし重いです。航空機は「軽くて強い素材で作るべき」という大原則に反していますが、エンジニアに「ダンボールで作ってくれ」と言ったら、最初は拒否反応を示されました(笑)。でも「飛びそうじゃん」と言って無理やりやってみたら、自衛隊でも好評だったんです。
堀江:メリットは圧倒的に安そうなことですね。
山口:安いですし、工数もかかりません。カーボンだと型を作って手作業のレイアップ(成形)になりますが、ダンボールなら工場でバコンバコンと形を作ってもらって、あとは折って貼るだけですから。
堀江:どこで組み立てるんですか?
山口:ここで組み立てて、分解したものをお届けしています。ダンボールドローンをダンボールに入れてお届けしているんですよ。
堀江:おもろい(笑)。サイズはこれくらいですか?
山口:今はこの1.8メートルサイズです。重さは全部積むと8キロくらい。離陸は手投げですね。人間が投げられる限界がこれくらいなんです。カタパルトを作ればもっと大きいものもいけます。
堀江:カタパルトもダンボール?
山口:ダンボールの会社さんは「できるんじゃないか」と言っていますね。
山口拓海(Takumi Yamaguchi) 株式会社AirKamuy 代表取締役CEO
静岡県出身。名古屋大学工学部機械航空工学科卒業後、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)に入社。その後、株式会社みずほ銀行に入行し、スタートアップ支援業務に従事。2022年当社設立し、現職。防衛省や海外軍とのリレーション構築を行う。