北海道・砂川に誕生したSHIROの自社工場「みんなの工場」。かつてお土産品を作っていた小さな会社を26歳で引き継ぎ、独自の「素材主義」でグローバルブランドへと押し上げたSHIRO会長・今井浩恵氏。その徹底した現場主義とブランド哲学に、実業家の堀江貴文氏が迫る。
一方、北海道大樹町で宇宙開発の拠点を築き、行政の壁を突破しながら「人口増」という奇跡を起こしている堀江氏。
「地方でやる価値」とは何か。大樹町の防災予算を活用したインフラ整備、SHIROの16億円の投資判断、そして次世代に「ものづくり」の選択肢を提示するオープンファクトリーの仕掛けまで。北海道から世界を揺さぶる二人の異端児が、停滞する日本を再起動させるための「勝てる経営戦略」を語り尽くした。
・その1:16億円を投じる「地方再生」の正体。堀江貴文×SHIRO今井氏が語る、既成概念を壊しグローバルを制する経営戦略
・その2:「あえて店舗を増やさない」作り方。SHIROが直営店と自社製造にこだわる真意
・その3:堀江流・人口5500人の町を「社会増」に変える方法。

無駄に見えるものに価値がある
SHIRO会長・今井浩恵(以下、今井):なるほど。ずっと大樹町の話になっていますが(笑)。
堀江貴文(以下、堀江):すみません(笑)。いえいえ、だから、そういうことをやられたらどうかなという話をしていたんですけど。でも、すごくこう(周囲に)溶け込んでいるので。
今井:何がですか?
堀江:いや、この街にね。この施設が。
今井:いやいや、溶け込んでいないですよ。
堀江:溶け込んでいないんですか?
今井:溶け込めていないのです。
堀江:街の人は来ないんですか?
今井:いえ、町の人も来ますよ。全国からも来ますし。まあ、行政と民間の速度ですよね。
堀江:逆に、うちはまだこういう施設が作れていないので、もっと町民の方々と触れ合おうと思いました。これ(SHIROの砂川本店・自社工場)を見ていて、「オープンファクトリーっていいな」と思ったんです。もうちょっと、ちゃんとやらなきゃいけないなと思いました。
今井:これくらいオープンにした方が、伝わるものがありますよね。堀江さんはすごい額を納税されていますし、すぐにでもできそうですよね。
堀江:いえ、行政にやらせちゃダメなんです。
今井:そうですね。自分で動いた方がいいですね。
堀江:はい。ただ、今のうちはそんな余裕がないというか、もう開発で手いっぱいなので、こういう(施設を作る)余裕がないんですよ。コンシューマー向けのプロダクトを作っているわけではないですから。ここは(SHIROの)お客さんからしてみたら聖地みたいなものですから、来たいじゃないですか。そういうものがあればやれるんですけれど。普通に寄付をしてくれている人たちがメインになるので。
今井:確かに、ロケットだと(一般向けの)打ち出し方は難しいかもしれませんね。
堀江:いえ、打ち出し自体はできると思うんです。ただ、こういう施設を作るとなると、社内的に「これって無駄じゃないですか?」と言われそうじゃないですか。
今井:いや、でもそういう「無駄」に見えるものに、結構価値があるんですよね。
堀江:はい。ここに来てみて、価値があるなと思いました。うちもやらなきゃいけないな、と。
今井:多分、この施設がここにあることも、「無駄」という見方はあると思うのです。
堀江:あー、はいはい。
今井:どう考えたって、都心にあった方が人は集まるわけですから。
堀江:あー、でもね、ここにあるからこそ。
今井:そう、ここにあるからこその価値なんですよね。
堀江:結構、子供がいたら普通に半日ぐらい遊べるから、親は楽じゃないですか。
今井:楽ですかね(笑)。
堀江:いや、楽でしょう。「お前、ジャングルネットで遊んでこい」って。
今井:うん、うん。
子ども達に「ものづくりの選択肢」をもってほしい

堀江:あれ(店内のジャングルネット遊具など)、すごくないですか? あんなものを、どうして作れたんですか?
今井:あれも、やはり「ものづくりの気配」を感じてほしくて作ったのです。あそこのネットの上に登ると、子供たちはなかなか降りてこないので、お母さんも安心して買い物ができるんですよ。
堀江:まあ、そういう(実利的な)面もありますよね。
今井:ええ。それと、子供がまだ幼い頃から、すぐ横で製品を開発している様子、そういった「ものづくりの気配」を感じられますよね。
堀江:はい。体験もできますしね。
今井:そうなんです。幼少期の「ものづくり」の記憶が、将来、何かを表現したり生み出したりする手段として、「ものをつくる」という道を選ぶきっかけになったらいいなと思っているのです。
堀江:なるほど。
今井:今は、子供たちが将来なりたいものとして「YouTuber(ユーチューバー)」などを挙げることが多いですよね。なかなか「ものづくり」という選択肢が、子供たちのなりたいものの上位に上がってこないのです。
堀江:へぇ。
今井:「ものをつくる」という選択肢が、です。
堀江:いや、僕はここを見て、本当にロクシタンの上位互換だなと思ったんです。ちょっと、思ったよりすごいなと。素材の使い方が、すごいなと思ったんですよね。
今井:素材にはこだわっていますからね。
堀江:あと、香りを試すために石を使ったりしていましたよね。「石も(製品に)入っているんですか?」と聞いたら、「いえ、これは製品ではなく、試香紙代わりです」と言われて。「えー、面白い!」と思ったりしたんです。
今井:試香石も採石場で、避(よ)けられていたものなんです。「使えない」とされていたものを、アーティストの方に作っていただいたんですよ。
堀江:いやー、やっぱり。上手いというか、これ日本でしかできないなと思ったんです。
今井:本当?
堀江:やっぱり、自然環境が豊かなのでできるんだと思いますよ。僕もコロナ禍の3年間、海外に行くのが億劫だった時期がありました。あの時に日本全国を見て回って、日本の良さを再確認したというか。これだけ自然環境が豊かだからこそ、多種多様な植物が採れる。だからこそ料理などの技術がここまで発達したわけですし、世界中のシェフたちが注目しているんです。ハーブなども、もっと世の中に知られていいんじゃないかなと思っていました。それで「ロクシタンみたいなことをやっている日本の会社はないのかな」と探したら、あったんです。実際に見てみたら、思ったよりもずっと深かったというか。すみません、ナメていました(笑)。
今井:本当ですか?(笑)
ナチュラルかサイエンスか

堀江:いや、自分はこの製品のユーザーではないから。
今井:そろそろ、使ってみてはどうですか?
堀江:僕、どちらかというと「幹細胞」とか、アンチエイジング系の。
今井:あー、なるほど。ナチュラルじゃなくてそれも大事ですよね。
堀江:はい。自分はそっち系(サイエンス系)の人間なんです。そちらを追求・探求している人なので、今は自分でもそういうものを作っているんです。男性目線のオールインワンジェルなどを作っています。
今井:エビデンスがあるものですよね。
堀江:おじさんは面倒くさがり屋なので、化粧水などをいろいろ使い分けるのは面倒なんですよね。
今井:確かに、面倒ですよね。
堀江:なので、全部が一つにまとまったオールインワンのジェルなどを開発しています。自分でも作っているから、スキンケアのことはなんとなく分かっているつもりでしたが、こういう(SHIROのような)プロダクトは自分では買わないし使わないので、ちゃんと調べてはいなかったんです。
今井:自然の素材100%のものも、たまに使ってみるとまた違った良さを感じられるかもしれませんよ。効果の出方がまた違って面白いですよ。
堀江:なるほど。でも、僕はとにかく面倒くさがり屋なので(笑)。
今井:あ、SHIROにもオールインワンはあるんですよ。
堀江:あるんですか?
今井:ありますよ。めんどくさい人用に昆布やアロエ、タマヌなど、SHIROのいいものを全部ギュッと凝縮したものなんです。
堀江:あ、これがその「いいとこ取り」をしたものなんですね。
今井:これ一つですね。これだけを使えばいいという製品ですね。
堀江:素晴らしい。なるほど。それも、やはりちゃんとこだわって作られたんですか?
今井:最近作った製品です。本当は作りたくなかったのですが。
堀江:あ、そうなんですか。
今井:やはり、一つひとつ丁寧にケアをすることで肌にしっかり入っていくものなので。
堀江:はい。
今井:堀江さんが「面倒くさがり」で「せっかち」だというのも分かりますけどね(笑)。
堀江:あ、でも(オールインワンは)女性には受けますよね。
今井:いえ、今は男性の利用者もすごく多いんですよ。
堀江:あ、そうなんですか。美容男子。
今井:今の20代、30代は特にそうですよね。
堀江:すごい! 勉強になりました。
今井:感情が入っていないですよね(笑)?
堀江:いえいえ、入っています、入っています!
今井:本当ですか、よかったです。
堀江:めちゃくちゃ勉強になりました。ありがとうございます。
今井:私も勉強になりました。ありがとうございます。