公益社団法人「Well-being for Planet Earth」理事でハーバード発の量子コンピュータースタートアップ企業の顧問も務める北川拓也。
堀江氏はChatGPTが世間を騒がせている今、注目されるAI技術の未来について、北川氏に、最新動向を聞いた。
映画の『マトリックス』にみる、AIと人間の未来
堀江 SONYが開発した「空間再現ディスプレイ」って知ってます?
北川 知らないです。
堀江 カメラがユーザーの左右の目を検出して、裸眼でも立体映像がリアルタイムで見られるというディスプレイです。これが本当にきれいに立体的に見えるんですよ。
北川 目に対してホログラム(立体映像)を作っている感じですか?
堀江 そうです。しかも、今はある程度の大きさのものが作れる。そうすると、それらの技術を使えば、例えば死んだおばあちゃんとも普通に会話できますよね。リアルな立体CGのおばあちゃんから、そっくりの声が出ているわけですから。
北川 そうですね。
堀江 そうしたら「本当におばあちゃんと会話をしている」と思い込む人もたくさん出てくると思うんです。
北川 それは、スマホとの相性が良さそうですね。
堀江 はい。だから、スマホでその立体映像のAIと会話をするコンテンツを作りたいんですよ。例えば、占い師の細木数子さんのAIとかいいんじゃないですかね。「細木数子先生が復活!」みたいなやつ。
北川 それは、面白いかもしれませんね。
堀江 だから、今のAIの技術を見ていると、個人的には人間とAIの区別がどんどんつかなくなっていくんじゃないかなと思っています。人間もAIも一緒になる。ただ、人間はAIに比べてノイズ的なものを出しているのかなとは思います。
北川 そうなんです。人間の脳のノイズが、もしかしたら人間のクリエイティビティを良くしている可能性があるんですよ。
堀江 だから、SFってよくできてるなと思うんです。映画の『マトリックス』ってあるじゃないですか。あれはコンピュータの世界で人間を飼っているという話ですよね。でも、別に人間なんか飼わなくてもいいじゃないですか。
北川 面白いですね。そういうふうに解釈されたんですね。
堀江 僕はね。で、意思の弱い人間はエージェント・スミスのようにコンピュータ側に同化していくけれども、主人公のネオのように強い意思を持った人間は頑張ってコンピュータと戦うという感じのストーリーだと思うんです。
北川 なるほど。
堀江 だから、「もうどうでもいいや」「何も考えたくないや」っていう人間がたくさんいて、そういう人たちは、このAIの進化の中でエージェント・スミスみたいになっていく。そうすると、AIも人間も同じで区別がつかなくなってきますよね。ただ、たまにネオみたいに意思の強い人がクリエイティビティを発揮する瞬間があると思うんです。
Text=村上隆保 Photo=ZEROICHI
北川拓也(Takuya Kitagawa) 公益社団法人「Well-being for Planet Earth」理事
1985年生まれ。公益社団法人「Well-being for Planet Earth」理事。灘高卒業後、米ハーバード大学に進学。ハーバード大学院にて博士課程終了。理論物理学者。元楽天グループ常務執行役員CDOとして、グループ全体のAI/データを統括。ハーバード発の量子コンピュータースタートアップであるQuEra社の顧問も務める。