医療現場における「装置の最後の点検がいつだったのか分からない」というリスクに、リーガルテックグループが新たなソリューションを提示した。同社の子会社JAPAN MADE社は、医療機器の保守履歴管理と現場ナレッジの即時共有を目的とした「HyperJ × AI孔明 on IDX」を開発し、2025年6月17日より提供を開始した。
点検履歴の「見える化」が医療現場の信頼を変える
これまで医療機器の保守情報は、紙、Excel、分散されたシステムで管理されることが多く、作業者間での引き継ぎミスや点検漏れが問題視されていた。また、安全性の説明責任や、院内監査対応においても、履歴の即時提示が求められるケースが増加している。
「HyperJ × AI孔明 on IDX」は、こうした背景を踏まえ、装置単位での履歴証明とAIによるナレッジ活用を融合した初のAI連携基盤である。
QRで履歴提示、AIで対応判断――ハードとナレッジの融合
本ソリューションは、主に以下の機能を備える。
- HyperJ.ai(ハード履歴管理)
医療機器ごとに製造番号、設置日、修理履歴、部品交換履歴をブロックチェーン上で一元管理。各装置にはQRコードもしくはNFTタグが付与され、スマートフォンから瞬時に履歴照会が可能となる。(詳細: https://www.hyperj.ai/ ) - AI孔明 on IDX(ナレッジ応答AI)
AI孔明は、保守マニュアル、異常対応事例、部品情報などを構造化し、保守作業者の問い合わせに対して「この型番でエラーC24が出た場合はどうする?」といった自然言語で即時に適切な対応方法を提示する。(詳細: https://www.idx.jp/case/medicine/ )
医療機器メーカー・医療機関それぞれに具体的な導入効果
すでに導入を進める医療機器メーカーでは、次のような成果が報告されている。
- 履歴情報の可視化により、医療機関からの信頼性が向上
- QRコードを活用した「点検完了証明」「保証情報」の提供により、再契約率が改善
- 保守対応の属人性が軽減され、技術者の作業品質が標準化
今後は、在宅診断機器や地域医療ネットワークにも拡張される見通しである。
保守プロセスが“知財”になる未来へ
同社はさらに、保守手順やチェックリストの知財化を支援すべく、知財可視化プラットフォーム「Tokkyo.AI」との連携も予定している。点検ナレッジが資産となる世界観は、医療機器メーカーの競争力を根本から変える可能性を秘めている。
ZEROICHI編集部コメント
この取り組みが注目される理由は、単なる保守管理ツールの域を超え、「医療現場における点検情報の社会的インフラ化」を実現しようとしている点にある。ブロックチェーンによる透明性、AIによる即時対応力、そして保守ナレッジの資産化という三層構造が、医療×SaaSの新しい潮流を象徴している。
※本記事は、原文から一部編集・要約して掲載しています。