ドローン技術が高度化し、カーボン素材や複雑な電子制御が当たり前となる中で、あえて「ダンボール」という究極のローテク素材で防衛市場に挑むスタートアップがある。株式会社AirKamuy(エアカムイ)だ。
「安くて、大量に作れて、長く飛べる」——自衛隊からの切実な要望に応えるべく彼らが行き着いた答えは、一見すると航空機の常識を覆す重くて脆い素材だった。しかし、その「弱さ」こそが、従来の数千万〜数億円もする標的機のコストを劇的に下げ、現代のドローン戦に対する訓練の在り方を根本から変えようとしている。
堀江貴文氏が、同社の山口拓海氏とともに、あえて「ローテク」を選ぶ戦略の合理性と、日本の防衛産業に風穴を開けるスタートアップの勝機に迫る。
・その1:「あえてローテク」の衝撃。1機30万円のダンボール製ドローンが防衛の常識を覆す理由
使用するダンボールはどんなもの?

堀江:ダンボールもいろいろ種類があるんですか?
山口:あります。これはあえて普通のダンボールに、防水用のフィルムを貼っているだけです。防水仕様のダンボールや、霜が降りる環境に耐えられるキャベツ運搬用のダンボールなど、用途に合わせて切り替えながら作っています。
堀江:主に何に使われるんですか?偵察とか?
山口:偵察だと、カメラが高いので、30万円の使い捨て機体には適していません。今は「標的(ターゲット)」としての運用をしています。自爆ドローンへの対処法がまだ確立されていない中で、我々が敵役をやるんです。落とせば使い捨てになりますが、ミサイルの標的は数千万するので、それよりはるかに安く訓練できます。
堀江:一発30万円、全然安いですね。
山口:標的ミサイルを北海道の会社で作ってくださいよ。ミサイルを模擬してプログラム飛行するニーズはあります。
堀江:ロケットは可及的速やかに大気から逃げるものなので、空力のことはあまり考えてこなかったですけど、できなくはないですね。
山口:今、自衛隊の固定翼ドローンはほぼアメリカ製で、毎年何百億というお金が流れています。それなら日本のものを使ったほうがいい。だから我々は日本で作ることをテーマにしています。
堀江:防衛省のどこに行けばいいんでしょう。
山口:海上自衛隊の「標的部隊」があります。標的だけをやる部隊ってのがあって。弊社はドローンを模擬したものなので、想定されていなかったもので、担当する部署もなく大変なんですが…。

堀江:制御はここですか?エルロンの制御は?
山口:舵面が2つと、垂直・水平尾翼を含めた4箇所です。これでロールも制御します。
堀江:どれくらい飛ぶんですか?
山口:バッテリーだけで80分くらい飛びます。
堀江:制御はリモコンですか?
山口:手動も自動操縦(GPS誘導)も可能です。軍事の世界ではジャミング(妨害)されますが、自律して飛び続けることも一応できます。今は最終的な誘導を画像認識やエッジAIでできるように進めています。
堀江:昨日、まさにエッジAI用のスピントロニクス半導体の取材をしていました。電力消費が1000分の1になるので、画像処理には最適らしいですよ。
山口:それは重要ですね。ただ、国立大学は軍事に厳しいイメージがあって、僕らも産学連携がなかなかできません。でも僕らはあえてそれを表に出してやっていこうと思っています。
堀江:実際、物は売れているんですか?
山口:売るというより、我々が飛ばしに行っています。敵役のオペレーションも僕らがやっています。実際、船の上から投げたりしていますよ。
堀江:なんでダンボール製ってみんな考えつかなかったんですかね。
山口:雨に弱そうとか、重いとか、ネガティブなイメージがあるからでしょうね。
堀江:もっと大きくもできますか?
山口:ペイロード(積載量)を10キロくらいまでは増やせると考えています。総重量30〜40キロくらいですね。
堀江:民生品でも使えますか?
山口:使えますが、使い捨てのドローンを使う場所があるかどうか。車輪がないので胴体着陸で壊れるのが前提ですが、ダンボールの部分だけ取っ替えれば使い続けられます。
堀江:買えるんですか?
山口:買えるように頑張っていますが、練習場所が日本にはあまりないんです。下に人がいない環境と、広い面積が必要なので。
堀江:大樹町のスペースポートなら使えますよ。
山口:あそこは大人気で予約が取れないと聞いています。独自に自治体に当たって場所を探しています。自衛隊の人にとっても、何億もする機体で練習するのは怖いですけど、30万円ならいくら落としても怒られないですからね。
堀江:こっそり売ってください、こっそり遊びます。
山口:いろいろな法律(航空法や登録制度)に引っ掛かるので、遊びで使うのは大変ですよ。
堀江:激突させてもいいから、着陸する飛行場がなくてもいいですよね。
山口:着陸か墜落かの定義が難しいところですが、ネットで回収するっていうこともあります。
堀江:緊急物資を送るのに良さそうですよね。海外にも売れそうですね。
山口:お声がけはいただきますが、今は軍関係ですね。どの国もウクライナを見て「安くて長く飛べる攻撃用」を求めていますが、現状は出せません。でも、訓練用として北欧などから依頼が来ています。ダンボールならどの国でも作れますからね。
堀江:ミサイルもやればいいじゃないですか。うちの技術を移転して。
山口:ぜひやりたいです。
堀江:うちのサブオービタルロケットのMOMOという機体は原価3,4千万で作れるので、標的ミサイルに合いますね。火薬も使わず液体酸素とエタノールで飛ぶのでリーズナブルです。御社でやってもらうのはありですね。うちも、地球観測衛星とか偵察衛星の受注もとりたくて、、ただなかなか防衛省に食い込めないんですよ。
山口:防衛省もスタートアップを使おうとしていますし、ぜひ考えましょう。
山口:機体とGCS(地上統制システム)をネットワークでつなぎ、映像を見えるようにしています。
堀江:それの立ち上げに時間かかるんですか?
山口:無線なので電波はややこしいですね。この機体にはピトー管も入っていて、対気速度を測りながら自動操縦させています。
堀江:かっこよ。ピトー管、ちゃんと普通の飛行機みたいですね。
山口:オープンソースを軍事に使っていいのかという議論もありますが、ウクライナではバリバリ使われています。
堀江:そもそも、自衛隊の機体は型式証明がいらないですしね。
堀江:ステルス性についてはどうですか?
山口:ダンボールは電波を通すので、レーダーに映りにくいというメリットはあります。もちろん中にバッテリーやモーターなどの金属部品はありますが、機体サイズに対しては小さい物を使ってます。
堀江:重心はどうやって合わせるんですか?
山口:重心合わせはアナログにバッテリーの位置を変えて行います。現場で壊れてもいいように、できる限りローテクにしています。蓋もダンボールをガムテープで貼っているだけです。

山口:持ってみてください。
堀江:まあまあ重いですね。特に前が。

山口:これが手投げの限界に近いサイズ感です。では、投げます。
3、2、1……。

堀江:おお、ちゃんと飛んでる。まあまあ速いですね。
山口:時速60〜70キロです。普通の飛行機ですね。

堀江:めっちゃかっこよ。これ、機銃とかで落とせるんですか?
山口:みんな「落とせない」と言います。日本には落とす手段がまだあまりないんです。
(着陸後)
堀江:ナイスランディング!うまい。
山口:日本で一番ダンボールドローンの操縦がうまいパイロットです。
堀江:全然壊れてないじゃないですか。
山口:何回かは持ちます。こうやってトライして技術を貯めておくことが重要だと思っています。
堀江:僕も今度、LSA(軽量スポーツ航空機)を作ろうと思っていて、三菱(スペースジェット)がうまくいかなかったのって、いきなり中型ジェットを作ろうとしたからで、こういうエントリーレベルから始めるステップバイステップが必要ですよね。
山口:我々も同じです。いきなりごっつい軍用機は無理なので、ベーシックなところから強化していきたいです。
堀江:素晴らしいです。ありがとうございました。
山口:ありがとうございました。
この対談の様子は、YouTube「ホリエモンチャンネル」でも公開されています。
山口拓海(Takumi Yamaguchi) 株式会社AirKamuy 代表取締役CEO
静岡県出身。名古屋大学工学部機械航空工学科卒業後、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)に入社。その後、株式会社みずほ銀行に入行し、スタートアップ支援業務に従事。2022年当社設立し、現職。防衛省や海外軍とのリレーション構築を行う。