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16億円を投じる「地方再生」の正体。堀江貴文×SHIRO今井氏が語る、既成概念を壊しグローバルを制する経営戦略

北海道・砂川に誕生したSHIROの自社工場「みんなの工場」。かつてお土産品を作っていた小さな会社を26歳で引き継ぎ、独自の「素材主義」でグローバルブランドへと押し上げたSHIRO会長・今井浩恵氏。その徹底した現場主義とブランド哲学に、実業家の堀江貴文氏が迫る。

一方、北海道大樹町で宇宙開発の拠点を築き、行政の壁を突破しながら「人口増」という奇跡を起こしている堀江氏。

「地方でやる価値」とは何か。大樹町の防災予算を活用したインフラ整備、SHIROの16億円の投資判断、そして次世代に「ものづくり」の選択肢を提示するオープンファクトリーの仕掛けまで。北海道から世界を揺さぶる二人の異端児が、停滞する日本を再起動させるための「勝てる経営戦略」を語り尽くした。

・その2:「あえて店舗を増やさない」作り方。SHIROが直営店と自社製造にこだわる真意

・その3:堀江流・人口5500人の町を「社会増」に変える方法。

・その4:ものづくりの気配を感じてほしいーSHIROのオープンファクトリーのしかけ

26歳で会社を引き継ぐ

堀江貴文(以下、堀江):ここ(SHIRO)は、もともとは別の方が経営されていたんですか?

SHIRO 代表取締役会長・今井浩恵(以下、今井):そうです。創業者が別にいまして。私が26歳の時に買い取りました。

堀江:えっ、26歳で? ……なんでまた、買い取ることになったんですか?

今井:短大を卒業して、20歳で入社しました。

堀江:砂川に?

今井:はい。それで、6年働いて、一通りの仕事をしたので、ここではもう学ぶべきことはないかな?と思い、「退職します」と伝えた時に、「じゃあ、あなたがいないとこの会社はなくなるので、この会社をなくすのか、あなたがこの会社を引き継ぐのか」という話になりまして。

堀江:へー。

今井:それで、会社を買い取ることにしました。

©ZEROICHI

「ロクシタン」の衝撃

堀江:面白い。それで、その頃はまだそんなにオリジナルのものを作っている感じでは(なかったんですか)?

今井:当時は北海道のお土産品を扱っていました。新千歳空港や富良野のお土産屋さんなどで、ポプリやラベンダージャムといった観光土産品を作っている会社でした。

堀江:そうなんですね。まだこういう香水や化粧品などは主力ではなかったんですか?

今井:当時は一部だけでした。無印良品さんのOEM(他社ブランドの製品を製造すること)を少しやらせていただいたりしていました。

堀江:僕がなぜこの会社に興味を持ったかというと、3年前に南フランスのプロヴァンス地方に行ったからなんです。

今井:ロクシタン(フランスの植物原料を使用した化粧品メーカー)に行かれたのですか?

堀江:そうなんですよ。

今井:すごい。

堀江:いや、でも別にロクシタンに行こうと思って行ったわけではないんです。僕は「ITER(イーター)」という核融合炉を見に行ったんですよ。

今井:それは、何ですか?

堀江:「何それ?」ってなりますよね(笑)。核融合といって、「地上に太陽を作りましょう」というプロジェクトがあるんです。それで発電しようと。それを世界中の人たちが、もうすごいプロジェクトですから。世界7カ国・地域がお金を出し合って作っている巨大プロジェクトで、最後は日本の六ヶ所村か南フランスかのどちらかで、最終投票の結果、日本が負けてしまったんですよ。

今井:なるほど。それで、フランスへ。

堀江:行ってみると、日本のほかに韓国、アメリカ、ロシア、インド、中国、EU。普段はみんな仲が悪いのに、そこだけは一丸となっている。ロシアと中国とインドとアメリカが一緒にやっているという、ちょっとなんかすごいプロジェクトで。「みんな、ここだけは喧嘩しないんだな」と、すごいなと思いましたね。

今井:ロシアとアメリカって、すごいですね。

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堀江:ロシアとアメリカ、中国。最高じゃないですか。そこにインドもいて。みんな仲が悪いのに、そこだけはみんな仲良くやっている。そういうプロジェクトがありまして、それを見に行ったんです。今まさに建設中で、その建設のプロジェクトマネージャーも、たまたま日本人で。それで行った時に、「実はロクシタンの工場が近くにある」という話になったんですよ。

今井:ロクシタンを知っていたのですか?

堀江:もちろん知っていますよ。

今井:あ、失礼しました(笑)。

堀江:大体、女子が免税店などで買ったりしていますから、もちろん知っているんですが。「ここに本社があったんだ」と思って。すごい山の中に。よく考えたら、そこに行く途中もラベンダー畑がすごいんですよ。

今井:そうですよね。

堀江:これ、ラベンダー畑が富良野みたいだね、という話をしていたんですね。そうしたら、この会社の存在を知って。

今井:あ、どうしてそこからSHIROを知ることになるのですか?

堀江:いや、だから僕はロクシタンのビジネスモデルに感銘を受けたんですよ。

今井:うんうん。

堀江:あそこは、40年ぐらい前に地元の主婦の人が、たまたま香水作りを趣味でやっていて。香水というか、ラベンダーとか香りのいいハーブがいっぱい生えているから、それを使って石鹸やポプリなんかを作っていたんですよね。そうしたら、「あなたの作る香水はめちゃくちゃ香りがいいから、売ったら売れるんじゃない?」と言われて商売になったんです。

今井:趣味が商売になったんですね。

堀江:それで、地元で細々とやっていたら売れまくって、ファンドに買われてグローバル化したという経緯があって。日本にもそういう会社はないのかなと思ったんです。

今井:すごいところからSHIROにたどり着きましたね(笑)。

堀江:いや、むしろあまり聞いたことがないから、これを北海道でやったらすごいビジネスになるんじゃないかと思って探したら、あったんですよ。

今井:え、でもそれが3年前だったのですね。

堀江:3年前に行って、探していたらあったんです。「これじゃん!」って。

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今井:ありがとうございます。私もとても感動しました。ロクシタンの工場に10年以上前に偶然立ち寄った田舎の工場に世界中のあらゆる人種のお客様が来ているのを見て、「地方でやるっていいな」となんとなくおぼろげに感じて。

堀江:あそこに行かないと買えないお土産が並んでいて、女の子たちがみんな楽しそうにキャッキャしている。

今井:そう、いろんな言語が飛び交っていて、とても楽しそうじゃないですか。

堀江:全く興味なく行ったんですけど、面白かったですね。

今井:工場の倉庫も見て回れるじゃないですか。

堀江:いや、そこまでは行けなかったです。

今井:あらら、そうなのですね。

堀江:たまたま休日に行ってしまって。やっていなかったんです。物販やハーブガーデン程度しか行けなくて。

今井:そうそう、あちらも開いているんですよね。

堀江:僕がそこまで興味を持たず、ちゃんと調べずに行ってしまったから。後で「こんなにすごいところだったんだ」と思って、行けばよかったなと感じました。

今井:やっぱりああいう姿勢が素敵ですよね。

堀江:僕が思っていたより(SHIROの自社工場は)すごかったです。

今井:どう思っていたのですか?(笑)

堀江:いやいや、もうちょっとこじんまりとやっているのかなと勝手に思っていたんですけど、本当にすごかった。

今井:とっても、嬉しいです。

高騰するコストと行政の壁をどう突破するか?

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堀江:これ(工場)、いくらかかったんですか?

今井:16億円です。

堀江:ですよね。

今井:でも、まだそんなにかかっていない方ですよ。3年前、2023年当時はまだ建築費も安かったですからね。

堀江:そうですね。あれから倍ぐらいになりましたよね。

今井:近くでホテルを建設していますが、大変なことになっています。36億円(2026年4月時見込み)かかっていて。

堀江:うちの大樹町(たいきちょう/北海道広尾郡)のロケット工場や打ち上げ場も、3倍ぐらいになりましたから。

今井:まさに本当、そうですよ。

堀江:3倍になって「お金がないじゃん!」「作れないじゃん!」ってなりましたけど、やっています。

今井:普通、資金を集めるのが大変ですよね。

堀江:いや、集めました。射場は今年中に仕上げます。ただ、土木工事だとなかなかお金を引っ張ってこれないんですよ。新規の事業開発だと補助金も出るんですけど、土木には出ないんですね。

今井:そうなんですね。

堀江:土木って別に新規性がないじゃないですか。既存の技術で全部建てられるので、そういうものに対して国はあまりお金を出さないんです。だから、あの手この手で。地味な話をすると、射場までの道路が砂利道だと人工衛星を運べないんですよ。

今井:うんうん。

堀江:砂利道だとダメだから舗装しようとなると、1km、2km作るだけで10億円とかかかるんです。

今井:かかりますね。

堀江:なのでどうするかとなって、最終的に「防災予算」で通しました。海岸沿いなので、津波が来たら大変だから「早く逃げるための道路が必要でしょう」という理屈ですね。

今井:なるほど(笑)。

堀江:結構笑い事ではなくて、それでしか予算が出ないんですよ。

今井:でも、そこまで考え抜いたということですね。

堀江:それは行政の方々が頑張ってくれて、今は道路を舗装しています。

今井:じゃあ、大樹町の行政はすごく良い方ばかりなのですね。

堀江:町長さんが変わって良くなりました。前回の統一地方選挙で僕が全力応援して勝ちましたから。

今井:なるほど。政治の力というのは大きいですよね。

堀江:大きいです。町長が変わるだけで全然変わります。どうですか?政治の話はあまりしない方がいいかもしれませんが。

今井:砂川(すながわ/北海道砂川市)は難しいですよ(笑)。

堀江:そうなりますよね。

今井:だから羨ましいなと思ってしまいます。

堀江:いや、でも町長は変わりましたけど、知事は変わっていないですからね。

今井:でも、町長の裁量で決められることもいっぱいあるじゃないですか。

堀江:本当は、北海道全体が変わってほしいんですけどね。

今井:そこは言えないですよね(笑)。

その2に続く