堀江貴文氏は6月4日、WHILL株式会社の杉江理代表取締役兼CEOを取材。次世代車椅子などについて話を聞いた。パーソナルモビリティがネクストスタンダードとなるために必須の条件とは…? (初回配信:2019年6月10日)
カプセル型ならば雨にも濡れないし、エアコンで温度も快適
堀江 ライバルって、結構いるんですか?
杉江 日本だとヤマハとかスズキですね。電動車椅子を作っているメーカーは、あまりないんです。
堀江 なんでないんですかね?
杉江 やはり、まだニッチなマーケットという認識があるんだと思います。
堀江 電動車椅子って、かっこよさとは程遠いですもんね。
杉江 そうですね。
堀江 なんでこうなっちゃうんですかね。
杉江 やはり、まだ障害を持っている方が乗るということを前提にして作っているからじゃないですか。でも、僕は別に誰が乗ってもいいと思うんです。電動車椅子を「バッテリーとモーターを積んでいて室内と歩道を走れる移動体」と考えれば、もっと使い道があるはずなんです。堀江さんだったら、パーソナルモビリティをどんなふうに使いますか?
堀江 僕は、椅子と置換したいですね。
杉江 なるほど。
堀江 僕の概念でいうと、椅子ってシェアリングエコノミーなんですよ。
杉江 確かにそうですね。電車の椅子も、レストランの椅子も、みんなが座りますもんね。
堀江 正直、自分に合っていない椅子って、座りにくいじゃないですか。でも、1日に何時間も座っていて、それが原因で腰痛になったりする。だけど、自分の体に合った椅子を持ち歩ければ、そういったことがなくなるわけじゃないですか。
杉江 そうですね。
堀江 だから、さっきスマホの話をしたんですよ。それに、僕はここにタクシーで来て椅子から降りましたけど、降りることもなくなると思うんです。iPhoneが出たときに、自動車メーカーはこぞってiPhone用のアダプターをつけましたけど、同じようにアダプターの規格とかをオープンにしておけば、自動車メーカーが勝手にパーソナルモビリティに合わせてくると思うんです。
杉江 なるほど。常にパーソナルモビリティに乗ってるということですね。
堀江 しかも、自動運転になれば歩道も勝手に走ってくれるわけで、何しててもいいんです。映画を見ててもいいし、寝ててもいい。もしかしたら、ドームみたいなカプセルになっていて、その中が全部有機EL(=次世代ディスプレイ)になっていて、外の景色を見たいときは外を写すモードになって、映画を見たいときは映画モードになるみたいな。
杉江 それは、改札とかもそのまま通れて電車に乗れるとか?
堀江 そう。だから、電動車椅子とパーソナルモビリティの溝を埋めるひとつのポイントは自動運転だと思うんですよ。僕は自動運転になったら欲しいと思います。だって、歩きスマホをしなくなりますから。
杉江 そうか。移動を作業できる時間に置き換えられるわけですもんね。
堀江 ええ。でも、「自動運転になったら絶対に買うか?」と聞かれると、「うーん」ってなっちゃう。そこに全面有機ELのカプセルがつけば、その体験はしてみたい。エアコンがついていれば、街中を走っていても暑くも寒くもないし、雨が降っても濡れない。
杉江 近距離はパーソナルモビリティで動いて、長距離はそのままバスに乗れたりするといいですね。そうすると長方形の箱車みたいなデザインがいいんですかね。
堀江 そうですね。過疎地域とかだと巡回バスをラストワンマイルの範囲で走らせておけばいいわけですから。
杉江 規格を決めれば、新幹線にも飛行機にも乗れますよね。
堀江 新幹線の中に非接触の充電機が設置されていれば、充電もできる。そうすると貨物列車とかでもいいのかも。別に窓の外の景色を見るわけではないでからね。
杉江 もしかしたら、それがネクストスタンダードになるのかもしれませんね。
杉江 理 Satoshi Sugie
WHILL株式会社代表取締役兼CEO(最高経営責任者)。1982年生まれ。静岡県浜松市出身。日産自動車開発本部を経て、一年間中国南京にて日本語教師に従事。その後2年間世界各地に滞在し新規プロダクト開発に携わる。元世界経済フォーラム(ダボス会議)GSC30歳以下日本代表。Silicon Valley Business Journal’s 2017が選ぶ40歳以下の経営者40人の一人選出。