―ホリエモンAI学校 × INCLUSIVE 協業の背景と日本社会への射程―
はじめに
日本の産業構造は、人口減少・高齢化・人材不足・地域格差といった複合的課題に揺れている。
とりわけ地方やレガシー産業においてはデジタル化の遅れが顕著であり、現場レベルでのAI活用が十分に進んでいるとは言い難い。表層的な「DX推進」が叫ばれ続ける一方で、「実際に現場が動き、生産性が変わるところまで辿り着かない」という“DXラストワンマイル問題”が存在している。
今回、INCLUSIVE株式会社とホリエモンAI学校株式会社が発表した協業は、この“ラストワンマイル”を正面から突破するための実践的な取り組みである。本稿では、その背景・意図・社会的意義を多角的に掘り下げつつ、ZEROICHI編集部が注目した理由を加えて紹介する。
1. 日本社会の構造課題:労働力不足とDX定着の難しさ
日本が直面している労働環境の変化は、単なる人口減少の問題ではない。
地方の中小企業、製造業、農林水産業などのレガシー産業では、後継者不足が深刻化し、業務の属人化・長時間労働といった構造課題が長年積み重なってきた。
AIや自動化技術に対する期待は高いが、「導入→運用→定着」という最も時間と労力を要する工程でつまずくケースは少なくない。
特に多くの企業では、
- AI専門人材の不足
- 導入後の運用が続かない
- 学んだスキルが現場で活かされない
- “AIを作る側”に目が行き、“使いこなす側”が育たない
といった課題が横断的に存在している。
今回の協業は、この構造的ギャップを埋めるためのものだ。
2. ホリエモンAI学校の特徴:AIを「つくる」のではなく「使う」ための教育
ホリエモンAI学校は、創業以来「AIを作るのではなく、使いこなす」を理念に掲げ、ChatGPT、Python、Zapierなど即効性の高いAI活用スキルを体系化して提供してきた。
約240本に及ぶ講義はすべて業務効率化・生産性向上に直結する内容であり、企業の業務変革に必要な“現場目線のAI活用”に比重を置いている。
さらに、単なる研修にとどまらず、企業の導入〜定着まで伴走するコンサルティングを実施しており、現場定着型の教育モデルとして確立している点が特徴である。
3. INCLUSIVEの基盤:地域創生・メディア支援に根ざした事業開発力
INCLUSIVEは「Creation of New Value」を掲げ、メディア企業・地方自治体・地域企業などへの事業開発支援を長く展開してきた。
地域DX、業務改善、デジタル活用、コミュニケーション支援といった幅広い領域で年間多数のプロジェクトを手掛け、地方の企業や自治体とのネットワークを独自に形成している。
特に地方企業やレガシー産業に対する支援経験が豊富であることから、ホリエモンAI学校の教育コンテンツを現場に届ける“分配装置”として機能する点が今回の協業の大きなポイントとなる。
4. 両社協業の核心:AI活用の「定着」を実現する実務的アプローチ
今回の協業で掲げられた取り組みは主に以下の3点である。
4-1. 新規AIソリューションの顧客開拓
INCLUSIVEの広範なネットワークを活用し、DX課題を抱える地方・レガシー産業へ実践的AIソリューションを展開する。
これにより、AIを活用した業務効率化だけでなく、新規事業創出まで視野に入る。
4-2. AI人材育成プログラムの共同提供
ホリエモンAI学校の講義をINCLUSIVEの顧客向けにカスタマイズし、教育→導入→定着まで伴走する。
地方企業や中小企業における課題の多くは「スキルが定着しない」点にあるため、伴走型支援は極めて重要である。
4-3. AI起業家・事業家育成エコシステムの構築
本誌編集長・堀江貴文の「AI起業家」構想と、INCLUSIVEの事業開発のノウハウを重ね、個人や企業がAIを活用して事業を立ち上げられる環境を整える。
単に技術教育に終わらず、AI時代の新しい事業創出エコシステム形成に踏み込んでいる点が本協業の特徴である。
5. 代表者コメントに見る協業の本質
5-1. ホリエモンAI学校 CEO 荒木賢二郎氏
荒木氏は「AI活用のラストワンマイル」を埋めるという表現を用い、現場にAIが“定着”することの重要性を語っている。
多くの企業がAI導入で失敗する理由は、導入後の運用・定着プロセスを軽視する点にある。
荒木氏の言葉は、この根本課題を解消しようとする強い意思を示すものだ。
5-2. INCLUSIVE 代表取締役社長 藤田誠氏
藤田氏は、AIを単なる効率化ツールではなく「事業創造の基盤技術」と位置付けており、新規事業開発との親和性を強調する。
「堀江貴文氏のブランドと教育コンテンツの力」は、AI社会における人材育成と事業創造の両方を推進する鍵となる。
両者のコメントは、単なる業務効率化にとどまらない、より広い未来像を見据えた協業であることを示唆している。
5-3.企業情報
ホリエモンAI学校株式会社について
ホリエモンAI学校は、企業のAI活用DXを支援するDXコンサル企業です。社員をAI人材に変えるオンライン研修を中心に、コンサル、受託開発などを通じ、企業の生産性向上とデジタルトランスフォーメーションを推進します。
- 設立:2024年3月6日
- 代表者:代表取締役CEO 荒木賢二郎
- 所在地:東京都新宿区新宿4-3-15 レイフラット新宿B棟3F
- 事業内容:オンライン研修、DXコンサルティング、AI人材育成事業
- 公式サイト:https://horiemon.ai/
INCLUSIVE株式会社について
INCLUSIVE株式会社は「ヒトを変え、事業を変え、そして社会を変える。」をビジョンに掲げ、メディア事業、コミュニケーションコンサルティング事業など、自社および協業先ビジネスの変革を通じて社会変革を成し遂げるINCLUSIVE Holdings傘下の事業開発会社です。
- 設立:2007年4月3日
- 代表者:代表取締役社長 藤田誠
- 所在地:東京都港区虎ノ門4-1-1 神谷町トラストタワー
- 事業内容:デジタルマーケティング事業、メディア事業、地域創生事業
- 公式サイト:https://inclusive.co.jp/
6. ZEROICHI編集部が注目した理由
本協業が持つ社会的インパクトは、単にAI研修やDX支援の枠を超えるものである。
ZEROICHI編集部として特に注目した点は以下の通りである。
6-1. “現場に届くAI”という視点の欠落を埋める試みであること
多くのDXプロジェクトは、コンサルティングやシステム導入で終わる。
しかし現実には、現場オペレーションへ知識が伝搬せず、成果につながらないケースが繰り返されてきた。
本協業は、この「最後の1センチ」の課題を解消しようとしている点が評価できる。
6-2. 教育 × 事業開発 × 起業支援の三位一体モデル
AI研修、業務効率化、新規事業創出を一体化させたアプローチは、地方企業やレガシー産業にとって極めて有効である。
単なるAI導入ではなく、事業を生み出し続ける循環構造をつくることに意義がある。
6-3. 地域創生との親和性が高い点
地方企業が抱える最大の課題は「人手不足」と「変革人材の不在」である。
AIを活用した“自走型の変革人材”を育てることは、地域経済の持続性に直結する。
ZEROICHI編集部としても、地方の現場が抱える課題を長く取材する中で、「AIが現場に届かない」壁を繰り返し見てきた。本協業は、その壁を打ち破る有力なモデルになりうると考えている。
7. 今後に期待される展開
本協業により、地方企業・自治体・レガシー産業の現場における“AI活用の実装プロセス”が大きく変わる可能性がある。
- 現場の業務にAIが自然に組み込まれる
- AI人材が地方から生まれる
- 新規事業がAIを起点に生まれる
- 企業規模や地域差を超えてAI活用の再現性が高まる
特に、堀江貴文氏が推進する「AI起業家」の構想は、地方でのチャレンジ機会そのものを広げる可能性を秘めている。
日本全体で進む人材不足という構造的課題に対し、“AIを使うことで事業を立て直し、創り直す”人が増えることは、これからの社会にとって重要な意味を持つ。
■原文リリース(参照)
原文リリース発表日付:2025年11月13日
原文タイトル:AI人材育成と事業開発力を掛け合わせ、日本の「DXラストワンマイル」を解決
原文リリースURL:https://inclusive.co.jp/2025/11/13/20251113_horiemon_ai_inclusive/
※本記事は、原文から一部編集・要約して掲載している。
誤解や偏りが生じる可能性のある表現については、原文の意味を損なわない範囲で調整している。