空き家問題は「家が余っている」という単純な需給の話ではない。所有者にとっては、思い出や相続、近隣関係、維持管理の負担が絡み合い、意思決定が先延ばしになりやすい。社会にとっては、防災・防犯・景観・地域経済に影響する“放置コスト”が積み上がる。それでも動かない最大のボトルネックは、空き家の価値が見えにくいことにある。
株式会社ジェクトワン(東京都渋谷区 代表取締役 大河幹男)は2026年2月17日、空き家流通プラットフォーム「空き家のコタエ」を公開し、第一弾として空き家所有者向け「自動査定サービス」の提供を開始した。売却想定価格の提示だけでなく、活用を想定した収益シミュレーション、解体にかかる概算費用までをAIで多角的に可視化し、最適な活用・売却判断を支援するという。
本稿では、空き家の意思決定を止めてきた構造を整理しつつ、「空き家のコタエ」がどこに楔を打とうとしているのかを読み解く。なお本稿は公表情報を基に編集・要約したものであり、独自取材によるものではない。
空き家の意思決定を止める「三つの不確実性」
空き家の対応は、売却・活用・解体の三択に見えながら、実際には「比較の土台」が欠けていることが多い。意思決定を止める不確実性は主に三つである。
第一に、価格の不確実性である。不動産の価格は立地・接道・用途地域・再建築可否・建物状態・修繕履歴などの要因に左右され、一般の所有者が合理的に見積もるのは難しい。査定を取ろうにも、複数社に依頼する手間や心理的ハードルがある。
第二に、活用の不確実性である。賃貸やリノベーションで収益化できるとしても、初期費用、工期、需要、管理の手間、空室リスクが見えにくい。結果として「売るほどでもないが維持もつらい」という宙ぶらりんが生まれる。
第三に、解体の不確実性である。解体費用は建物規模や構造、立地条件で変動し、概算が分からないまま放置されやすい。固定資産税や維持管理費だけが淡々と積み上がる。
「空き家のコタエ」が狙うのは、この比較不能状態を先に解消し、所有者の判断を前に進めることだと位置づけられる。
「空き家のコタエ」自動査定が提示する三つの売却シナリオ
同サービスの中核である自動査定は、所在地、築年数、構造、延床面積などの基本情報を入力すると、AIが空き家の価値を多角的に算出し、複数の選択肢を並べて提示するという。
特徴的なのは、売却想定価格を「①個人売買価格」「②三為取引価格」「③業者買取価格」の三パターンで出す点である。
個人間売買は高値を狙いやすい一方で、相手探しや契約実務の負担が増える。業者買取は早期の現金化が見込める一方で、価格は相対的に抑えられやすい。その中間に位置づくのが、事業者が介在しつつ所有権を売主から買主へ直接移転させる取引形態として説明される「三為取引」である。
ここで重要なのは、「どれが正解か」を断定しない構造である。所有者にとっては、価格だけでなく、時間・手間・確実性を含む“取引の総コスト”が意思決定要因になる。三つの売却シナリオを並べることは、空き家を“単一の相場”で語る誤解を減らし、目的に応じた比較に誘導する効果がある。
活用と解体まで並べる理由:判断を止める“比較不能”を壊す
自動査定は売却価格に加え、賃貸・リノベーションによる活用を想定した収益シミュレーション、解体にかかる概算費用も提示するとされる。
この設計は、空き家の意思決定が「不動産価格」だけで止まっているのではなく、「活用した場合の絵」と「撤退コスト」が見えないことで止まっている、という現場認識に基づくものだと読める。
売却だけ示す査定は多い。しかし実務では、売却を迷う理由が「価格が安い」ではなく「活用したら回るのでは」「解体は怖い」という感情的・情報的な欠落にあることも多い。選択肢を同じ画面に並べ、比較の土台を先に作ることは、空き家を“負債”から“意思決定可能な資産”へ戻すための第一歩になる。
会社概要
- 社名:株式会社ジェクトワン
- 所在地:東京都渋谷区渋谷二丁目17番1号 渋谷アクシュ21F
- 設立:2009年1月28日
- 代表取締役:大河 幹男
- 資本金:1億3,000万円
- 事業内容:総合不動産開発事業(住宅、ビル、商業、ホテル)、リノベーション事業、賃貸管理事業、
- 空き家事業(アキサポ:https://www.akisapo.jp/)
- ホームページ:https://jectone.jp/
「空き家のコタエ」概要
- サービス名:空き家のコタエ
- 提供開始:2026年2月17日(火)より、「自動査定サービス」を提供開始
- 対象物件:全国の空き家
- URL:https://akiyanokotae.com

ZEROICHI編集部の注目点
空き家市場の“構造的バグ”に踏み込む点である
ZEROICHI編集部が本件に注目した理由は、AI査定という新規性ではない。社会にとって空き家の流通は絶対的に必要であるのに、所有者の判断が止まり、結果として空き家が固定化するという「構造的バグ」に踏み込んでいる点にある。
空き家問題は、善意や努力で解ける領域ではない。所有者は専門家ではなく、判断のための情報は分散し、比較の軸が欠け、相談の入口も分かりにくい。ここに、流通を止める“摩擦”がある。
「空き家のコタエ」は、①売却の複数シナリオ、②活用の収益見立て、③解体の撤退コストを同時に出し、さらに次の相談導線まで一気通貫にすることで、摩擦を設計で削ろうとしている。
言い換えれば、空き家流通の問題を「物件が悪い」ではなく「判断のインターフェースが悪い」と再定義した点が核心である。必要性が高いのにスケールしない領域では、こうしたUI/UX的な再設計こそが勝ち筋になる可能性がある。
今後の論点:AIが出すのは「価格」ではなく「判断の材料」である
一方で、AIによる査定提示は受け取り方を誤るとトラブルの種にもなり得る。査定はあくまで簡易な想定であり、個別物件の法的制約(再建築可否、境界未確定、権利関係、接道要件など)や建物状態の精査によって条件が変わり得る。ここを過度に断定せず、「判断の材料」であることを明確にして運用できるかが信頼の分かれ目になる。
また、三為取引を含む取引形態の説明は、一般の所有者には馴染みが薄い。価格差が生まれる理由、契約実務の流れ、費用負担の考え方など、誤解が起きやすい論点を平易に補足していく設計が求められる。
プラットフォームが本当に市場を動かすためには、「提示」だけでなく「腹落ち」まで設計する必要がある。ここに次の伸び代がある。
空き家を“動かす”ための入口になれるか
ジェクトワンは、空き家事業「アキサポ」で培った知見とネットワークにAI技術を掛け合わせて本プラットフォームを開発したとしている。
そして査定結果を踏まえ、具体的な検討に進む場合はアキサポへ相談できる導線も用意されるという。
空き家の流通は「相談に行った時点で何かを決めさせられそう」という心理的抵抗が強い領域である。まず比較材料を自分の手元で作り、その上で相談に進める流れは、入口の摩擦を下げる可能性がある。空き家の固定化をほどく鍵は、派手な成功談ではなく、こうした地味な摩擦の除去にある。
空き家市場の活性化は、地域社会の持続性にも直結するテーマである。今後、「空き家のコタエ」がどこまで判断インフラとして定着し得るのか、運用実績と利用者体験の積み上げが注目点となる。
■原文リリース(参照)
原文リリース発表日付:2026年2月17日
タイトル:ジェクトワン、新プラットフォーム「空き家のコタエ」をいよいよ始動!空き家所有者向け「自動査定サービス」を2月17日より提供開始
原文リリースのURL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000124.000039551.html
※本記事は、原文から一部編集・要約して掲載しています。
誤解や偏りが生じる可能性のある表現については、原文の意味を損なわない範囲で調整しています。