インバウンド需要の回復とともに、都市部の宿泊需要は底堅さを見せている。一方で、宿泊施設の運営環境は年々制度的な制約が強まり、特に無人運営を前提とした小規模施設にとっては参入障壁が上がり続けている。
こうした中で、常駐義務という規制条件そのものを収益設計から組み替えようとする試みが現れた。
株式会社Leaneve(東京都渋谷区 代表取締役 大嶋宏行)は2026年2月、小規模宿泊施設向けの「常駐型宿泊業運営代行サービス」を開始した。スタッフ常駐が求められるエリアにおいて、従来は採算が合いにくかった数室規模の施設でも運営成立を目指すモデルだとしている。
本稿では、都内で進む常駐規制の背景を整理しつつ、本サービスが狙う構造課題と成立条件を読み解く。なお本稿は公表情報を基に編集したものであり、独自取材によるものではない。
強まる「常駐義務」が小規模参入を押し出す
東京都心では、旅館業許可取得における人的配置要件が段階的に厳格化している。千代田区、中央区、台東区などではすでにスタッフ常駐要件が求められており、さらに墨田区や葛飾区でも2026年4月から同様の規制が予定されているとされる。
制度の趣旨は、宿泊者対応や近隣トラブル抑制などの観点から理解できる。一方で、固定人件費の発生は小規模施設にとって重い負担となる。
一般に、常駐体制を前提とした宿泊業は一定以上の客室数がなければ採算が取りにくいとされ、好立地であっても物件活用を断念するケースが出ている。
ここに、「需要はあるのに供給が立ち上がらない」という歪みが生じている。
「常駐=コスト」という前提を崩す設計
Leaneveの新サービスは、この固定費構造そのものに手を入れる点に特徴がある。
同社の説明によれば、単にスタッフを配置するのではなく、常駐スペースや空室期間を収益源として組み込み、フロント業務と収益事業を兼務させることで、小規模でも採算が合う運営体制を構築するという。
従来モデルでは、常駐スタッフの待機時間はコストとしてのみ計上されがちであった。これに対し、本モデルは「常駐のための空間」と「運営上の遊休時間」を収益側に取り込む発想を採っている。
この再設計が機能すれば、規制強化エリアにおける小規模宿泊施設の参入余地は理論上広がる。
売上設計を支える三つのレイヤー
同社は、小規模施設でも成立し得る理由として、複数の運営要素を組み合わせる点を挙げている。
第一に、コンセプト設計による差別化である。単なる客室提供ではなく、「誰のどんな体験を生むか」を定義し、近隣競合と異なる価値訴求を行う方針とされる。供給過多の都市宿泊市場では、価格競争に陥らないための前提条件とも言える。
第二に、自社集客の強化である。MEOなどを活用し、オンライン予約サイトへの依存度を下げることで、予約獲得コストの最適化を図るとしている。OTA手数料の圧縮は、小規模施設にとって利益率に直結する論点である。
第三に、空室期間の二次活用である。空室を撮影ロケ地として活用する「からフル」を導入し、本業以外の収益源を補完する設計が示されている。
これらを単独ではなく連動させることで、常駐体制の固定費を吸収するという構想だ。
■特設ページ:https://leaneve.co/minpaku/
会社概要
- 社名:株式会社Leaneve(リーネフ)
- 住所:東京都渋谷区円山町5番5号 Navi渋谷Ⅴ 3階
- 代表者:大嶋宏行
- 設立:2016年12月
- URL:https://leaneve.co/
ZEROICHI編集部の注目点
規制と収益の“非対称”に踏み込んでいる
ZEROICHI編集部が本件に注目した理由は、民泊規制の是非論ではない。宿泊需要が存在する一方で、人的配置義務が強化されるほど、小規模プレイヤーの退出圧力が高まるという構造的非対称に、真正面から手を入れている点にある。
常駐義務は今後も一定の方向性として続く可能性が高い。その中で「規制を回避する」のではなく、「規制条件を前提に採算モデルを組み替える」という発想は、宿泊業に限らず、規制産業全般に共通するアプローチである。
特に注目すべきは、コスト削減ではなく、待機時間や未稼働空間を収益側に転換する設計思想である。必要だが成立しにくい領域では、この“収益再配線”こそがボトルネック解消の鍵になる。
成立の鍵を握る運用密度
もっとも、このモデルが実務上どこまで機能するかは、運用の精度に大きく依存する。
常駐スタッフの兼務設計は、業務負荷の分散や品質維持とのバランスが重要になる。また、撮影ロケ地活用は需要の地域差が大きく、安定収益としてどこまで織り込めるかは物件特性に左右される可能性がある。
さらに、自社集客強化はマーケティング運用の継続力が問われる領域である。OTA依存からの脱却は理想的だが、実務では運用リソースとのトレードオフが発生しやすい。
言い換えれば、本モデルは“理論的に成立する設計”から“現場で回り続ける運用”へ移行できるかが分水嶺となる。
小規模宿泊の再定義は進むか
Leaneveは、「物件整形」という複合的な不動産企画・運営手法を軸に事業を展開してきたとする。今回のサービスも、その延長線上で、建築・運営・マーケティングを一体設計する思想が反映されている。
都市部の宿泊市場は、需要の回復と規制の高度化が同時進行するフェーズに入っている。こうした環境下では、単一要素の改善ではなく、収益構造全体の再設計が求められる。
小規模宿泊施設が今後どこまで持続可能な事業形態として再定義されるのか。本モデルが示したアプローチは、その試金石の一つとして注視に値する。
■原文リリース(参照)
原文リリース発表日付:2026年2月18日
タイトル:無人民泊規制エリアの“駆け込み寺”に。「常駐=コスト」という民泊の常識を、収益設計から組み替える民泊運営を開始
原文リリースのURL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000152376.html
※本記事は、原文から一部編集・要約して掲載しています。
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