本稿は、ジャパングッズ株式会社(東京都新宿区 代表取締役社長 吉永尚平)が企画開発したポータブル型燃料電池発電機「H2 PowerBox mini」について、同社代表取締役社長の吉永氏への取材をもとに作成した記事である。製品の特徴だけでなく、その背後にある事業戦略と社会的な意味までを含めて整理する。
停電リスクが常態化する時代の、備え直し
日本では地震や台風などの自然災害に伴う停電リスクが継続的な課題であり、自治体、企業のBCP、家庭防災のいずれにおいても、非常時の電源確保は重要性を増している。現在、非常用電源として広く普及しているのはリチウムイオン電池を用いたポータブル電源であるが、長期保管においては自然放電や定期充電管理、経年劣化といった課題が残る。必要な時に確実に使えることが求められる備蓄用途では、この弱点は小さくない。
吉永氏はこの点に着目し、水素は効率面では課題を抱える一方で、保存性に優れるエネルギーであり、防災用途と相性がよいと判断したという。取材では、同氏が「蓄電しているのではなく、必要な時に発電する仕組みを置いておく」ことに意味があると語っており、H2 PowerBox mini を水素事業の第一弾として位置づけた理由も、まさにそこにある。
水素を“持ち運ぶ”という製品設計
H2 PowerBox mini は、水素を燃料に発電するポータブル型燃料電池発電機である。ジャパングッズの公表情報によれば、本体重量は4.6kg、カートリッジ装着時で6.6kg、サイズは350×150×290mmで、出力端子はUSB-Cが1口、USB-Aが3口、水素カートリッジ1本あたりの最大発電量は約300Wとされる。
停電時や災害時に、スマートフォンや通信機器などへ電力を供給する小型電源として設計されている。なお同社は、2026年2月時点で「ポータブル水素燃料電池電源として世界初」としている(同社調べ)。
この製品の中核にあるのは、「水素を持ち運ぶ」という発想である。一般的なポータブル電源が本体内部に電気をためる蓄電型であるのに対し、H2 PowerBox mini は本体に発電機構を持ち、エネルギーそのものは交換式の水素カートリッジ側に保持する。吉永氏は取材で、水素の保存性こそがこの製品の本質であり、防災の現場で意味を持つと語っている。水素を電池の代替として見るのではなく、長期備蓄可能な燃料として扱う点が、この製品の構造的な特徴である。

吸蔵合金カートリッジが支える“保存電源”の考え方
H2 PowerBox mini では、水素を吸蔵合金カートリッジに保存する。プレスリリースでは、水素を合金の分子間に取り込むことで内部圧力を1MPa未満に抑え、高圧ガス保安法上の「適用除外」となる構造だと説明している。発電時の排出物は水のみであり、騒音や振動も少ないことから、避難所やオフィス内などでの利用も想定している。
取材でも吉永氏は、水素は金属の原子・分子の隙間に吸着させる形で保存されており、急激に大量放出しにくい設計であること、一般に想起されがちな「高圧ボンベの水素」とは扱い方が異なることを説明している。一方で、氷点下などの低温環境では水素が出にくくなるため、使用温度には条件があるとも述べている。こうした点から見ても、本製品は単に「水素を使う」ことを打ち出したものではなく、家庭や防災用途に持ち込むための保存・運用設計まで含めて考えられた製品である。
蓄電池ではなく、備蓄電源として見るべき製品である
H2 PowerBox mini を理解するうえで重要なのは、従来のポータブル電源と同じ基準で評価し切らないことである。リチウムイオン電池型は、平時の利便性や高出力用途では優位性がある一方で、備蓄用途では自然放電や充電管理が避けられない。これに対してH2 PowerBox mini は、電気をためるのではなく、水素を保存し、必要時に発電する。したがって競争軸は「どちらが大容量か」ではなく、「どちらが長期備蓄に向くか」にある。
吉永氏は取材の中で、防災分野に長く関わってきた経験から、バッテリー備蓄の弱点を補える点に水素の価値を見いだしたと語っている。備蓄電源として見た場合、この製品は蓄電池の代替というより、長期保存向けの別カテゴリとして位置づけるのが妥当である。
本質はハードではなく、供給モデルにある
この製品のもう一つの重要な論点は、エネルギー供給の仕組みそのものにある。ジャパングッズは、使い終えたカートリッジを郵送で回収し、充填済みのものを返送する交換サービスと、専用の小型水素生成機による家庭内充填の両方を構想として示している。プレスリリースでも「交換サービス」と「自宅充填システム」の二つの供給スタイルが明示されている。
取材では、家庭用の充填機は昔のパソコン本体程度のサイズで、価格は約50万円、H2 PowerBox mini 本体もカートリッジ込みで約50万円を想定しているとの説明があった。また、カートリッジ1本で10Wの電球なら約30時間、スマートフォンなら18〜20回程度の充電ができるとの試算も示された。現時点では価格面のハードルは小さくないが、供給モデルが成立すれば、これは単なる電源機器ではなく、交換型エネルギーのサービスモデルへと変わっていく可能性がある。
ジャパングッズが水素に向かう理由
ジャパングッズは、公式サイト上で防災・備蓄用品、衛生用品などの企画販売を主な事業として掲げる企業である。会社概要によれば、本社は東京都新宿区にあり、2017年設立、代表者は吉永尚平氏である。
吉永氏は取材で、同社は「競争のあまりない商品」を軸に、新しい市場性のある製品を探してきたと語っている。その延長線上で、防災との親和性が高く、将来性のあるエネルギーとして水素に着目したという。さらに同氏は、同社として目指すのは「日常生活の中で利用できる水素製品」であり、ポータブル電源だけでなく、ガスコンロやストーブなど、小型カートリッジを起点にした製品群の展開も視野に入れていると述べている。水素事業は単発の話題づくりではなく、生活と防災を接続する新たな事業軸として構想されている。
普及に向けた壁は、技術だけではない
もっとも、水素ポータブル電源の普及には課題も明確である。吉永氏は取材の中で、水素の安全性に対する社会的な心理的ハードル、供給インフラの不足、法規制、コストの高さを主要な課題として挙げている。特に、既存の水素ステーションから同社のボトルに充填できないことや、高圧水素ガスを扱うための許可・資格の問題は、供給の自由度を大きく制限しているという認識である。
また、水素は電気から生成し、再び電気へ戻す過程で効率が下がるため、日常の主電源として見ればコスト面で不利であることも吉永氏自身が認めている。取材では、電力を水素に変換し、再度電力に戻すと30〜40%程度しか残らないとの説明があり、効率ではなく保存性に価値があるという整理がなされていた。つまりH2 PowerBox mini は、万能な電源ではない。長期保存が必要な備蓄用途や、分散型の非常用電源として見たときに、意味が立ち上がる製品なのである。
分散型エネルギーの入口としての社会的意義
それでも本製品が持つ意義は小さくない。災害時に本当に必要とされるのは、家電全体を動かす大出力ではなく、通信、情報取得、最低限の照明といったインフラ代替機能である。その用途に限れば、長期保存可能で、必要な時だけ発電できるポータブル水素電源は、既存の蓄電池とは異なる価値を持つ。
加えて、H2 PowerBox mini は、水素社会を巨大なインフラ論としてではなく、生活圏の小型機器から社会実装していく入口として読むことができる。吉永氏は、10年後には人々が水素製品を知り、必要ならどこかで触れられる状態になっているのではないかと語っている。水素の普及はまだ途上であるが、本製品はその普及を抽象論から具体物へと引き寄せる試みである。
ポータブル型燃料電池発電機「H2 PowerBox mini」詳細
詳細は、同社発表をベースに編集部で一部表現を整理して掲載している。


主な仕様
- 製品名:H2 PowerBox mini
- 発電方式:水素燃料電池
- 最大発電量:約300W(吸蔵合金水素カートリッジ1本の場合)
- 定格出力:約68W
- 出力:USB-C ×1、USB-A ×3
- サイズ:350 × 150 × 290mm
- 重量: 本体4.6kg(カートリッジ装着時 約6.6kg)
想定用途
- 自治体の防災備蓄・避難所電源
- 企業のBCP対策(通信機器のバックアップなど)
- アウトドア・レジャーの移動電源
- オフグリッド環境下での精密機器使用
製品の特長
1. 水素によるクリーンな発電(排出物は水のみ)
燃料電池技術により、発電時の排出物は「水」のみ。発電時の排出物は水のみであり、発電時にCO2を排出しない。騒音や振動も極めて少ないため、避難所やオフィス内などの騒音や振動が少なく、避難所やオフィス内などでの利用を想定しています。
2. 「自然放電がほとんどない」ため、防災備蓄に適する
水素を「吸蔵合金カートリッジ」に閉じ込めて貯蔵するため、リチウムイオン電池のような自然放電がほとんどありません。数年単位の長期保管でも、必要な時にカートリッジを挿すだけで即座に発電を開始します。
3. 高圧ガス保安法「適用除外」の安全設計
水素を合金の分子間に取り込む「水素吸蔵合金」を採用。内部圧力は1MPa未満と低く、日本の高圧ガス保安法において「適用除外」となる構造です。万が一の破損時も水素が急噴出する危険性が低く、専門知識がなくても扱いやすい設計を志向しています。
4. エネルギーを「着せ替える」カートリッジ交換式
最大の特徴は、独自開発の「吸蔵合金水素カートリッジ」交換システムです。
- 容量は自由自在: カートリッジを差し替えることで、用途や滞在時間に応じてエネルギー量を拡張できます。
- 選べる2つの供給スタイル:
①交換サービス: 使い終わったカートリッジを郵送し、充填済みを受け取る利便性の高いモデル。
②自宅充填システム: 専用の小型水素生成機により、自宅で「エネルギーの自給自足」を可能にします。
会社概要
企業名:ジャパングッズ株式会社
住所:〒160-0023東京都新宿区西新宿7丁目4-6ストーク新宿IOKA9階
代表者:吉永尚平
設立:2017年02月
HP:https://jpgoods.co.jp/
主な事業内容:
- 水素製品の企画販売及び輸出入・販売および導入支援
- 防災・備蓄用品、衛生用品の企画・販売
- 医療機器、ラボ用消耗品の輸出入・販売
ZEROICHI編集部の注目点
ZEROICHI編集部が本件に注目した理由は、H2 PowerBox mini が単なる新型ポータブル電源ではなく、エネルギーの保存と供給の設計を問い直す製品だからである。大容量や高出力を競う電源市場とは異なる文脈で、「長期備蓄できる電源」という別の軸を立てようとしている点に新規性がある。
同時に、この製品はハード単体で完結しない。カートリッジ交換、家庭用充填、将来的な供給インフラとの接続まで含めて初めて意味を持つ。そのため、評価すべき対象は製品スペックだけではなく、供給モデル、社会受容、規制環境を含めた構造全体である。水素社会の実装は依然として未成熟であるが、その入口を生活と防災の現場から切り開こうとする試みとして、本件は継続的に追うべきテーマであると判断した。
■原文リリース(参照)
原文リリース発表日付:2026年2月17日
タイトル:【新製品】世界初※、4.6kgの「ポータブル水素電源」を企画開発!水素を日常の備えに。防災・停電対策を革新する次世代電源が誕生
原文リリースのURL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000059648.html