TECH

AIとファンが共にアイドルを創る ― KLabが仕掛ける“共創型エンタメ”の新次元『ゆめかいろプロダクション』

2025年10月、KLab株式会社(東証プライム:3656)は、生成AI技術を活用した新プロジェクト『ゆめかいろプロダクション』を始動させた。AIとファンが共にアイドルを育てる日本初の試みとして、同社が掲げる「KLab AI Entertainment」構想の第一弾となる。第1期生として発表された5名のAIアイドルを中心に、AIと人間の“共創”をエンターテインメントの形で可視化するという。

「みんながプロデューサー」—AI時代の新しい関係性

KLabが打ち出したのは、“国民総プロデューサー計画”を標榜する「みんながプロデューサー(#みんプロ)」構想である。
 従来、ファンは“消費者”であり、プロダクション側が提示するアイドル像を受け取る立場にあった。しかし本企画では、ファンが意見・選択・投票・創作を通じてAIアイドルの個性や成長方向に関与する。まさに「AIとファンが共に創る」次世代型の参加モデルだ。
AIが自ら歌い、語り、世界観を形成するプロセスに、ファンが共に“共演者”として介入していく。ここで重要なのは「AIが人を模倣する」のではなく、「人とAIが互いを変化させる」という双方向性である。KLabはこれを“共創進化型IP”と呼び、単発的なキャラクター展開ではなく、長期的な文化的成長を目指す。

KLab AI Entertainment構想の中核

本プロジェクトは、同社が掲げる「KLab AI Entertainment構想」の中核に位置づけられている。
 同構想は、生成AIによるキャラクター・音楽・ストーリーの生成と、ファンによる参加・共創を組み合わせ、IP創出のプロセスそのものをエンターテインメント化する試みである。単なるAIコンテンツではなく、IP(知的財産)を“共に作る仕組み”として設計されている点が特徴的だ。
KLabは2025年8月の発表でも、AIエンタメ事業・AIスクール事業・AI人材事業の三層構造を提示していた。AIが生み出す創作力と、学び・支援・育成を含むエコシステムを整えることで、「AIクリエイティブ産業の持続的発展」を目指している。
 『ゆめかいろプロダクション』は、その最初の“可視化された実装モデル”であり、事業構想を現実に落とし込む重要な一歩となる。

AIアイドルの「DNA」を記録する

『ゆめかいろプロダクション』のユニークな点の一つが、“AIの進化履歴”を可視化する仕組みである。
 AIアイドルたちは、音楽・ストーリー・ファン交流などを通じて成長し、その学習データを「DNA」として記録していくという。ファンはこの変化を共有し、まるで“記憶をともに育てる”かのような体験を得ることになる。
AIは固定的なキャラクターではなく、社会と共に更新される存在へ。そうした“成長を見守る文化”の形成こそ、KLabが目指すAI時代のIP資産化モデルである。

公式サイト:http://yumekairo.ai-ent.klab.com/campaign/minpro/
公式X:https://x.com/yumekairo_ent

ZEROICHI編集部が注目する3つのポイント

① エンタメの「再民主化」
KLabのアプローチは、“創作の民主化”をエンタメ領域に再導入するものである。個人がAIを用いて創造する時代において、企業がその集合知をIP生成の中枢に取り込む構造は、産業化された同人文化とも言える。ファンと企業の境界を越える設計思想が見て取れる。

② 「AIタレント」概念の社会的実装
AIがタレントとして活動すること自体は新しい現象ではないが、「プロダクション」や「ファン運営」の文脈で明示的に制度化する点は国内初である。これにより、AIキャラクターの権利・収益・継承などの議論が一段進む可能性がある。
 ZEROICHIはこの試みを“AI人格の制度化”の初期事例として注目する。

③ “記録と共創”の構造美
AIの学習履歴=DNAを共有するという発想は、透明性と連続性を両立する新たなデザインである。どのように学び、どのように変化するかをユーザーと共に確認できるシステムは、AI生成物に“物語的責任”を付与する。
 ZEROICHIでは、この構造を「AIの倫理をエンタメで可視化する試み」として評価する。

総括

エンターテインメントの未来は「関係のデザイン」
AIがつくる、AIと共に育つ、そしてAIと共に喜ぶ――。
 『ゆめかいろプロダクション』は、AIが主役になる未来を描くのではなく、“AIと人が共にプロデュースする社会”を描く
 生成AIの台頭が個人の創造を拡張したように、今度は企業がその「共創知性」を社会的IPとして結晶化する段階に入ったといえる。
“ゆめかいろ”という名前が象徴するように、AIと人の夢が交わる回路。その中で、どんな歌声や物語が生まれるのか。
 AIエンタメ元年を標榜するKLabの動きは、エンターテインメントが「AIを使う産業」から「AIと共に暮らす文化」へと変化する転換点を告げている。

出典:KLab株式会社「日本初!AIとファンが共にアイドルを創る『ゆめかいろプロダクション』始動」(2025年10月27日)、同社「総合AIエンタテインメント事業開始」(2025年8月7日

 ※本記事は、原文から一部編集・要約して掲載しています。