堀江貴文と東北大学大学院歯学研究科教授・菅野太郎氏
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【堀江貴文×菅野太郎東北大学大学院歯学研究科教授】口腔ケアは歯磨きより

堀江貴文氏が歯周病治療器『ブルーラジカル』の開発者・菅野太郎氏に話を聞いた。歯と歯の間のケアは歯周病予防において不可欠。欧米と日本の口腔ケア習慣の違いから、日本での口腔ケアの未来を探る。

歯ブラシだけでは不十分。正しい口腔ケア習慣を

堀江貴文と東北大学大学院歯学研究科教授・菅野太郎氏
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堀江 僕は、20歳くらいの頃に歯根嚢胞(しこんのうほう・歯の根の部分に膿がたまること)になって東大病院に行ったら、歯磨きの仕方とデンタルフロスの使い方を徹底的に仕込まれたんですよ。「堀江君、私は君がきちんと歯磨きができるようになるまで治療しないから」って。

菅野 それは、素晴らしい先生ですね。『ペリミル』にも歯磨きによってバイオフィルムがしっかりとれているかを見るスコアがあるんですが、そのスコアが高すぎると「もう治療しませんよ」という基準になったりするんです。

堀江 その先生に歯磨きの仕方を教わって、その後に町の歯科医に行ったんですけど、そこがまたマニアックな歯医者さんがいて、腕はいいんですけど「治療5分、説教50分」なんですよ(笑)。で、その先生に歯間ブラシの方法を教わりました。

菅野 実は歯間ブラシやデンタルフロスの使用は、日本はすごく遅れているんです。

堀江 たぶん、その理由は日本は歯磨き粉のメーカーの力が強すぎるからじゃないですか。「歯ブラシで歯を磨いていれば虫歯にならない」みたいな誤解が刷り込まれているんですよ。

歯科ビジネスは治療から予防のサブスクモデルに変化中

堀江貴文と東北大学大学院歯学研究科教授・菅野太郎氏
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菅野 歯ブラシだけだと、歯の半分しかキレイにならないんです。歯と歯の間は歯ブラシでは届きません。ですから、歯ブラシと歯間ブラシやデンタルフロスを使うことで、本来の“口腔ケア”になるんです。本当は小学生の頃から、歯ブラシと歯間ブラシもしくはデンタルフロスをセットにして使って歯磨きなんだと教えた方がいいんですよね。そして、できるだけ若いうちに覚えたほうがいい。

堀江 僕は20歳で覚えたので、ラッキーでした(笑)。

菅野 欧米の男性の歯間ブラシやデンタルフロスの利用率は7、8割です。一方で日本の男性は4割もいかない。歯間ブラシやデンタルフロスの利用率を高めていかないと口腔ケアは進みません。

堀江 でも、虫歯になる人が少なくなると歯周病治療器の『ブルーラジカル』が必要なくなっちゃうんじゃないですか?

菅野 大丈夫です。予防でも使えますから。今の歯科ビジネスは虫歯を治して治療費をいただく時代から、定額制のサブスクモデルに変わってきています。つまり「あなたの歯の面倒を一生見ますから、かかりつけ医としてうちに来てください」という流れです。それで、歯科衛生士さんが虫歯予防のために毎月メンテナンスをしてくれる。

ブルーラジカル
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堀江 そういう感じになってきているんですか。

菅野 歯のメンテナンスはかなり定着してきています。日本国民の58%が年に1回、定期検診に行くというデータもあります。一方で、途中で治療を辞めちゃうとか、予約のキャンセルが多いのが働き盛りの男性です。ですから、今は“働き盛りの男性をどうやって歯科医院にきちんと通わせるか”というのが大きな問題として残っています。

堀江 歯が痛くなると行くんですけどね。

菅野 そうなんです。歯が痛くなれば来るんですけど“痛くなったときにはもう歯を抜かなくてはいけなくない”という状況だったりするんです。

堀江 でも、そのときが歯医者にちゃんと来てもらうチャンスですよね。それに、まだ因果関係がはっきりしない部分もあるでしょうけれど、歯周病は全身のさまざまな疾患と深く関与しているという話もありますよね。

菅野 はい。例えば、歯周病菌が心臓の血管につくと、心臓病の発症率が2、3倍になるというデータもありますが、そもそも、なぜ歯周病菌が体の中に入るのかというと、歯周病治療で歯と歯茎の間にスケーラーを入れているからという報告もあります。

堀江 そうなんですか。

菅野 はい。

殺菌をしながらバイオフィルムや歯石が取り除ける「ブルーラジカル」

堀江貴文とブルーラジカル
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菅野 あと歯周病の検査で歯と歯茎の間に針状の器具を使ってチクチク刺しているじゃないですか。そして、炎症があると出血しますよね。あれで菌が体の中に入るとも報告されているんです。健常者は問題ありませんが、歯周病がある患者さんは体の中に菌が入るリスクがあります。ですから、そうした菌を体に入れないような治療ができないかということで、殺菌をしながらバイオフィルムや歯石が取り除ける『ブルーラジカル』を開発したという面もあるんです。これだと体の中に菌が入りづらいですから。

堀江 これ青色レーザー光じゃないと殺菌できないんですか。

菅野 いや、赤色でも緑色でも殺菌できます。ただ、波長が短ければ短いほどエネルギーが高くなり過酸化水素をより分解できるので、殺菌力が高いヒドロキシルラジカルを効率良く発生させることができるんです。そして、青色から紫外線、X線、ガンマ線と波長が短くなっていけば結果的に殺菌力もさらに強くなっていきます。
ただ、今回は目に入っても大丈夫な光ということで、可視光のなかから選んだので青色にしました。今後は殺菌力がもっと高くて、短時間で殺菌できる紫外線のものを開発しようと思っています。

堀江貴文とブルーラジカル
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堀江 なるほどね。

菅野 それから、インプラントも歯周病になるんですよ。インプラント自体はチタンなので虫歯のように溶けないんですが、インプラントの周りに歯周病菌がつくことでインプラントを支えている骨が溶け始めるんです。現在はインプラントの歯周病の治療方法が確立していなくて、欧米では5%や10%の過酸化水素でよく洗うという治療をしているんですが、青色レーザー光と3%の過酸化水素を使うとそれ以上の効果があるので、今後はインプラントの歯周病の治療にも使えるのではないかと思っています。

堀江 これは今、どれくらい普及しているんですか?

菅野 実働しているのは100台くらいです。今、1週間に10台くらいしか作れないんですよ。ですから、年間だと500台程度です。一応、3年で2,000台を目標にしているんですけど……。

堀江 どうするんですか?

菅野 今は半導体が手に入らないので、なかなか難しいんです。

堀江 半導体か……。でも、歯周病治療にも予防にも効果があるのなら、ぜひ、たくさん作ってほしいですね。本日はありがとうございました。

菅野 こちらこそ、ありがとうございました。

その1はコチラ

Text:村上隆保

菅野太郎(Taro Kanno)東北大学大学院歯学研究科教授
1967年生まれ。宮城県出身。東北大学歯学部・同大学院を卒業後、スウェーデンのイエテボリ大学客員研究員などを経て現職に。約17年かけて歯周病治療器『ブルーラジカル P-01』を開発。2024年より販売を開始した。