茨城県土浦市、日本屈指の有機農業を営む「久松農園」。そこには、泥にまみれた若者たちが操る、見慣れない小型ロボットの姿がありました。「安価に、あり合わせの材料で、既存の農家に寄り添う道具を作りたい」。そう語るのは、長岡高専のロボコンメンバーを中心に結成されたベンチャー企業「株式会社FieldWorks」代表の山岸開氏です。
第1回では、堀江貴文氏が久松農園を訪れ、過酷な農作業の現実と、それを解決する「畝間(うねま)特化型」ロボットの可能性について、現場の会話を余すことなくお届けします。
・その2:「親機・子機」連携で自動化。高専スピリッツが生んだ“枯れた技術”の最適解
・その3:「ガレージから世界へ」。つくばの拠点で描く、持続可能な農業の未来
堀江貴文、久松農園を訪ねる

堀江貴文(以下、堀江):さあ、おなじみの久松農園さんです。今日は、近くでゴルフをしておりまして、ゴルフの帰りに寄らせていただきました。どうも、いつもありがとうございます。
久松達央(以下、久松):どうも、いつもありがとうございます。
堀江:さて、本が出ましたね。『僕の野菜は美味しい』。これ、すごくないですか?本当に帯にしてしまったのですね。「これ、帯にすればいいじゃないですか」と言ったら、本当に帯になってしまいました。
久松:堀江さんのアイデアですから。よろしくお願いします。
堀江:ということで、今日はなんだか、いつもと違って機械のようなものがあるのですが。これ、何なのですか?
ロボコンの情熱を農業へ

久松:あのね、ロボットベンチャーで「FieldWorks(フィールドワークス)」という面白い会社がありまして。長岡高専のロボコンをやっていた子たちが、そのまま起業してしまったという。夢を捨てきれない男の子たちの。
堀江:へー!なるほど、なるほど。
久松:その色々な出口を考えていたみたいですけれど、農業に着目して「農業の役に立ちたい」ということで、安価にあり合わせの材料で小型のロボットを作って、既存の農家に使ってもらえないかというコンセプトなのです。やっぱり今はほら、全体がモジュール化しているじゃないですか。なんだけれど、そうではない農家群がいかにしたたかにやっていくかということは、結構大事なことではないですか。そこで結構有力な武器になりそうな会社で、僕の方から連絡して、去年もデモに来てもらったのですけれど、その時よりもだいぶ進化しているので、ぜひ。ご紹介させてください。
堀江:ちょっと楽しみです。
久松:じゃあ、山岸さんどうぞ。
山岸開(以下、山岸):よろしくお願いします!株式会社FieldWorks代表の山岸と申します。よろしくお願いします。
堀江:山岸さん、よろしくお願いします。
山岸:はい。NHKのロボコンに出ていたメンバーの卒業生で構成されています。自分のチームメイトと一緒に農業ロボットを作ろうということで立ち上がった会社です。
堀江:長岡高専。
山岸:長岡高専と、その上に長岡技術科学大学という大学があるのですが。
堀江:長岡技術科学大学というのがあるのですか?
山岸:はい。国立で一応あって、高専の編入先として作られている大学で、
久松:結構注目されています。
山岸:そこに作った会社なんですが、僕たちはこの4月につくばの方にほとんどの機能を移転しまして、久松さんの方にもちょっとお世話になっているところです。
堀江:近所ですよね。すぐそこですものね。
山岸:車で15分くらいで。
堀江:いや、だから最近茨城づいているんですよ。
久松:なぜかね。
堀江:僕はその、牛久の方にあるゴルフ場の会員で、クラブの会員です。あとあの、あれですよ。この辺りだと美浦トレーニングセンターも近い。僕、馬主を復活させたので、めちゃくちゃ調子がいいんです。
久松:実際に見に行くことはあるのですか?
堀江:あります、あります。本当は今日も終わった後で見に行こうかなと思ったら、今週末は京都のレースに出るからもう行ってしまっているんです、京都に。うちの馬が。さすがに。「もういない」と言われてしまいまして。
久松:堀江さんが唯一ネクタイを締める。
堀江:馬主席はね。あ、でもそろそろクールビズなので、もう締めなくていいのですね。あと、最近は龍ケ崎飛行場にもよく行っています。パイロットの訓練をしているので、この上、この辺りを飛んでいますよ、よく。
久松: なるほどね(笑)。今日も野菜を用意しているので、ぜひ後で。まずはロボットの方を。
「20kgの苦行」を機械に任せる

山岸:うちのロボットなのですけれども、何種類か今見えていますが、元々作っていたのが草刈りロボットですね。やはり農家さんの負担を聞いていると、大きい部分に除草があるということで、だったら草刈りだろうということで作っていたのが、この「ウネカル」というロボットです。コンセプトとしては、草刈りラジコンみたいなものは結構いろいろなメーカーさんが出されているのですけれど、畑の畝間(うねま)、畝と畝の間に入っていけるような小さいロボット製品が全くなかった。それに入っていけるような、ここ久松さんの畑は比較的畝が広い方ですけれど、もっと狭い畝でも入っていけるような草刈りロボット、ラジコンとして今作ったものになります。ロボットの底面に今、刈り刃が付いていて、刈っていけるようになっています。
堀江:なるほど。
山岸:久松さんのところは綺麗だから、これ以上刈る必要はなさそうですけれど。「ウネカル」というロボットから派生しまして、やはり久松さんのところとかですと結構、有機農業をこだわっていらっしゃるので使わないのですけれど、数としては多くの農家さんが「草刈りではなく、除草剤散布で基本的には何とかする」という方が多い。それって、もう人がタンクを背負ってやっていますよね。皆さんやられていますので、「草刈りではなくて、これをロボットでできないか」というのはやはり現場で言われまして。それのために作ったロボットがこちら、「ウネマキ」というロボットになります。
堀江:これは農薬が入っているわけではないのですよね?
山岸:これは水道水です。非常にシンプルなのですけれど、23リットルのタンクが積まれていて、ポンプがあって。人が手で持っていた、あの部分がそのまま付いている形です。高さとかも調整してもらえるので。除草剤は作物にかかってしまうとダメージが出てしまうので、高さを一定に保って精密に撒く必要がある。
堀江:もうこれは販売しているんですか?
山岸:はい、販売を始めました。
堀江:これいいね。
山岸:ありがとうございます。
久松:やはり、除草剤を作物にかけてはいけないから人間がやっているという、本来なら人間がすべきではない作業の最たるものですね。大規模な機械で一気にやるか、さもなければ手作業しかないという間の、かなり大きな可能性を。
堀江:確かに確かに。
久松:前にお話しした「石窯のピザ屋の設備が重すぎる」という話と同じで、高い設備を入れられない農家が、もっとうまくしたたかにやるための道具ですね。
堀江:これはいくらくらいですか?
山岸:今このタイプで、ラジコンとして80万円前後で売っています。結構その、どれだけ規模の大きいサツマイモ農家さんでも、タンクを背負ってやるしかない作業なのですね。
堀江:規模の大きいサツマイモ農家というのはどれくらいやっているのですか?
久松:平均して6ヘクタールくらいですね。百メートル×六百メートル分くらい。東京ドームでいえば約1.3個分。それを20kg背負った人間が歩いているというのは、なかなかのものです。平準化できない労働力というのは、経営的に一番難しいところですからね。
堀江:なるほど。
久松:ただやっぱり土質もいろいろ、路面の状態もいろいろなので、各メーカーがこれを機械的にやろうとしているけど、意外と難しいんですよ。人間が歩いたままやる機械はあるんですけど、それを人間が歩かないでということ、そこに彼らは着目している。
山岸:バックグラウンドとしては、ロボコンに出てた仲間と小型ロボットを作るノウハウはやっぱりたまっているので、
堀江:なるほど。
山岸:小型ロボットであれば土質などにもあまり影響されずに入って、撒いていけるというのがやっぱりメリットになってくるかなと思います。
山岸開(Kai Yamagishi)
新潟県出身。長岡高専、長岡技術科学大学で高専ロボコン、学生ロボコンにチームリーダーとして参加。その後、2020年にDJI主催のロボット競技大会(RoboMaster)に参加するための団体Phoenix Robotsを立ち上げる。筑波大学大学院に進学中に、延べ10年近くロボコンに参加したときの仲間と共に農業用ロボットの開発を開始。2023年6月に株式会社FieldWorksを創業。現在に至る。