世界を驚かせる新技術でありながら、ビジネスサイドへの浸透には壁がある。第3回では、ダイヤモンド半導体の生成プロセスをはじめ、堀江氏が着目した「人工冬眠」ベンチャーとの共通点、データセンターの熱問題を解決する5万倍の省エネ効果、そして「宇宙戦略基金」という勝機について語られる。
・その1:地球温暖化を止める「ダイヤモンド半導体」の可能性。堀江貴文×佐賀大学・嘉数誠教授
・その2:午前9時と午後5時の大発見!「不可能」を覆したドーピング技術
プラズマでメタンを分解。ダイヤモンド半導体の生成プロセス
堀江貴文(以下、堀江):あれ全部。じゃあ結晶構造的にいうと、要は炭素(C)がババババっとあるわけですよね。
佐賀大学理工学部 教授 嘉数誠(以下、嘉数):はい。
堀江:具体的にその中にNO2が入っちゃうと。表面についているという感じなんですか?
嘉数:表面についている感じなんですね。はい。表面について、それでホールというキャリアを出しているということです。
堀江:表面だけでいいんですか?
嘉数:電気が流れるので、まずは表面にキャリアがあればと。もちろん中にもできればいいのですが、今のところは表面にできています。
堀江:中にも作れるんですか?
嘉数:それはこれからの課題です。
堀江:結晶はどういうふうに生成するんですか?
嘉数:生成してNO2をつけて、また生成して、と。
堀江:今の結晶生成というのは、具体的には炭素をふわふわさせてくっつけていく?
嘉数:原料ガスにはメタンガスを使っています。
堀江:あ、そうなんですか。CH4。
嘉数:はい、CH4です。それを流して、プラズマの中に入れて分解させ、炭素(C)だけが堆積していくような形です。
堀江:堆積していく感じなんですね。
嘉数:堆積なんです。
堀江:へー。で、表面にNO2をつけると。
嘉数:最後にですね、はい、そういうことです。
堀江:表面の結晶構造はどうなっているんですか?
嘉数:NO2がついた後ですか?
堀江:NO2はどのようについているんですか?
嘉数:そこはまだよくわからないのですが、ちゃんとついているみたいです。炭素にNO2が。NO2という形ではないかもしれませんが、形を変えてきっちりとついています。
堀江:それはまだよくわかっていないんですか?
嘉数:それについては今いろいろと調べています。ちゃんとついているというのは見えているのですが、構造自体はまだ研究中で、よくわかっていないところもあります。
堀江:でも、もうこういうものはできているわけですよね。
嘉数:そうですね。作り方はわかっているので、再現性もありますし、間違いありません。同じ方法でちゃんと作れば、ちゃんと動きます。
堀江:実際のところ、どんなタイミングで実用化されるんですか?
嘉数:今は研究室レベルで動いています。それを実際の機器の中に入れて、ちゃんと動くことを実証し、それから皆さんに使っていただくという順番になるかと思います。
「人工冬眠」ベンチャーとの共通点。ビジネス化の壁

堀江:実証に向けてのハードルはあるんですか?
嘉数:そうですね。本当に高い寿命があるのか、特性が悪くならないかといったことや、まだわかっていないメカニズムの解明などがあります。そうした課題に取り組みながら、今実用化に向かっているところです。
堀江:ビジネスサイドとしては、こういうものができたらすぐに実用化させたいと思っちゃうんですが、それはできないんですか?
嘉数:近いうちにできるとは思います。ただ、一番の問題は、堀江さんのように「すごい」と言ってくださる方がなかなかいらっしゃらないことですね。
堀江:そうなんですか。
嘉数:はい。興味はあるんですけどね。
堀江:いや、僕なんかでも、逆に僕らみたいな人間からすると「遅いな」とか思っちゃったりするんですよね。
嘉数:でも、これ動き出してからここまで来るのに2、3年で来ていますので、ものすごいスピードで私たちは進めているんですよ。
堀江:アカデミアの世界の人ってみんなそんな感じなんですよね。こちらからすると「すごいな」と思っちゃったりするんですけど。
嘉数:私としては全速力です。
堀江:ですよね。だから多分、2つあると思っていて。1つはアカデミアの人たち、特に日本のアカデミアの人たちって、やっぱりちょっと時間感覚が遅い感じがすごくしています。で、もう1つは、やっぱりビジネス、あとお金の問題なんかもあるのかなと思っていて。グローバルなビジネスサイドの話からすると「これすごいじゃないですか」という感じで。
実は、この取材もそういうところを結構やっているんですよ。こういう最先端分野の発明をされた方々を取材していて、実際にビジネスにつながった例もあるんです。
嘉数:はい。
堀江:例えば最近、僕は人工冬眠の会社を作ったんですよ。最初にお話を伺ったのは6、7年前で、「人工冬眠ができました」というニュースを見て会いに行きました。そしたら本当にマウスで人工冬眠ができていて、「すごいですね、本当に冬眠ってさせられるんですね」と。面白くないですか?
嘉数:いや、面白いです。
堀江:でも結局そこも同じで、メカニズムが完全にわかっているわけではないんです。面白いことに、ラボで冬眠させたのもほぼ世界初だったらしいんですよ。リスやクマのような冬眠する動物でも、実験室に連れてきても条件が揃わないと冬眠しない。クマの冬眠のメカニズムすら誰も知らなくて、最近になって同じようなニューロンが発見され、どうやら同じメカニズムで冬眠しているらしいとわかってきたくらい最近のことなんです。
でも、僕たちからすると「こんなすごい技術、早く事業化しましょうよ、人間でやりましょうよ」ってなるんです。実験はサルなどの霊長類から始まっているので、それなら人間もできるでしょ、と。だから、この技術も同じくらいすごいです。さっきの話で言うと、これも宇宙に応用できるんですよね。
嘉数:そうですね、はい。
堀江:冬眠すると放射線に強くなるんですよ。ちょっと似ていますよね。それはなぜ強くなるかというと、細胞分裂が遅くなるので、すべての代謝が落ちるからなんです。細胞分裂している時がDNAって一番弱いんですよ。二重螺旋が解けているから、修復酵素が使えないんですよね。だからそこで放射線が当たると、原爆症みたいな病気になるんです。原爆症で髪の毛が抜けたり、抗がん剤などでも吐血したりするじゃないですか。あれは細胞分裂が早いところに当たるからなんですよ。僕らからすると、「こんなものに使えるんだったら、すぐに実用化してビジネスをどんどん進めていきましょうよ」と思うんです。実はこの連載でずっと取材していて、第1回目の取材が、まさに窒化ガリウムのLEDの先生だったんですよ。ノーベル賞を取られる前にね。中村先生。
嘉数:はい。中村さん。
堀江:中村さん。この取材の第1号が中村さんだったんですよ。
嘉数:あ、そうなんですか。
堀江:そうなんです。もう10年ぐらい前で、まだノーベル賞を取る前であまり注目されていなかった頃でしたけど。ブルーLED自体は実用化されていましたけどね。でも彼もノーベル賞を取ってからめちゃくちゃ注目されて。
嘉数:そうです、はい。
堀江:今は高効率のLEDレーザーとか、レーザー核融合もやっているのをご存知ですか?
嘉数:聞いています。すごいなと思いました。
堀江:分野が近いですもんね、半導体ですから。
嘉数:ガリウムの話ですが、ちょうど中村さんが「ブルーLEDができた」と言っていた頃の段階に、今の私たちの研究もあるのかなと思っています。実は私も以前、会社にいたんですよ。
堀江:どちらにいらっしゃったんですか?
嘉数:NTTです。
堀江:NTTの研究所もいろいろなことをやっていますよね。
嘉数:そうですね。自由に研究させてもらえました。
堀江:研究所はどこでしたっけ。湘南の方にある……。
嘉数:横須賀の研究所ですね。
堀江:横須賀にもこの取材で行きました。
嘉数:ああ、そうですか。
堀江:その時は音叉型のMSジャイロの研究などを拝見しました。もう原子レベルで動いているんですね。
嘉数:私は自由に研究をさせてもらえる環境だったので、こういう研究をしていても許されていましたが、大学に移ってからは少し貧しい環境でした。
堀江: 貧しい環境。
嘉数:貧しい環境でしたけれども、ここまで来て、1日も早く皆さんに使ってもらえるように。
堀江:いや、まさにそれはビジネスとしての売り込みの話で。最近の話でいうと、先日、半導体の取材で東北大学に行ってきたんですよ。そこは「スピントロニクス半導体」をやっているところで。これなんですけど。
嘉数:はいはい。
堀江:このスマート計測デバイス、もう10日くらいバッテリーが持つんですよ。その基礎技術なんです。もともとその方はNANDフラッシュメモリなどの仕事をされていたそうです。
嘉数:そうなんですか。
堀江:ええ。スピントロニクス半導体の元となる技術って、最初はメモリなんですよね。でも、最初からいきなりパソコンに入ったわけではなくて、今はSSDなどにみんな入れていますけど、最初はUSBメモリから実用化が始まったらしいんですよ。
嘉数:そうですか。
堀江:なぜかというと、USBメモリなら最悪データがなくなっても「一時的な記憶領域だから許されるかもしれない」ということで、そこから実用化が始まったと。
嘉数:なるほど。
堀江:それでUSBメモリなどで実績を積んでいって、大型化して「パソコンのメインメモリに使っても大丈夫かも」となって。今はもうデータセンターなどで結構使われていますけど。だから、そんな感じなのかなと思って。スピントロニクス半導体も、今はこういう持ち歩き用のデバイスにしか使われていないんですよね。一番電力消費を抑えたいところですから。これが長寿命化しているのもそれが理由なんです。だからそのうち、スマホなどももっとバッテリーが持つようになってくるかもしれない。
嘉数:なるほど。
堀江:日本の良くないところって、よくこんな貧しい環境で素晴らしい発明をされると思うんですけど、だったらそこにお金を投資すべきなんです。さっきの人工冬眠も、絶対にここから国際間競争になってくると思うんですよ。論文で発表されて研究がオープンになっていますから。だから、いろんなパテント(特許)を押さえながら、グローバルでビジネスを一気に展開していかないといけない。そういうところに資金が必要になるので、僕たちがそういうビジネス展開のお手伝いをしているんです。
嘉数:なるほど。
堀江:なので、まさにこれ(ダイヤモンド半導体)もそうですよね。
5万倍の省エネ効果。データセンターの熱問題を解決する
堀江:パワー半導体って、ビジネスサイドの人からするとどこに使われているのかピンとくる人がいないと思うんですよね。新幹線のような大電流が流れる制御装置に使われているということですが、パワー半導体がない時代はどうしていたんですか?
嘉数:トランスなどを使って、物理的なボリュームのつまみを回して電流を変えていました。
堀江:物理的に回して変えていたんですね。だから繊細な制御やデジタル制御はできなかったと。
嘉数:全然できなかったですね。
堀江:だから今はデジタルで自動制御などができるわけですよね。
嘉数:はい。しかもエネルギー効率は、これを使えば格段に上がるはずなんですよね。
堀江:そんなに捨てているんですか?エネルギーを。
嘉数:そうですね。一般的に50パーセントぐらいは熱になっていると言われています。
堀江:もう発熱電球みたいなものですか?
嘉数:一つ一つのエネルギー効率はいいんですけれども、発電所から私たちの手元で使われるまで、何回もパワー半導体で電力変換しています。それを積み重ねていくと、おそらく半分ぐらいは熱になっていると言われています。
堀江:そうなんだ。
嘉数:その無駄なエネルギーが少しでも抑えられると、本当に大きな違いになりそうですね。
堀江:どれくらい抑えられるんですか?
嘉数:一応、5万倍良くなると計算しています。
堀江:5万倍良くなると言われてもピンとこないですが、例えば1回パワー半導体を通すことで無駄になる電力が、数パーセントから0.01パーセントになるような、そんな世界ですか?
嘉数:そうですね、はい。
堀江:ということは、電力消費がめっちゃ抑えられるじゃないですか。
嘉数:そうですよ。だから、パソコンとかでも熱くなるじゃないですか。携帯も熱くなりますけれど、もう全然熱くならないということです。
堀江:全然熱くならないんですね。
嘉数:バッテリーも持つということで。
堀江:なるほど。
嘉数:生活が一変すると思うんですけど。
堀江:そうですね。EV(電気自動車)などもそうですよね。
嘉数:そうですよね。EVもラジエーターがいらなくなるとか。
堀江:実際、今のモーターや制御装置のラジエーターってすごいらしいですからね。
嘉数:そうですね。
堀江:電気自動車などにも関係してきますよね。
嘉数:そうですね。データセンターの冷却なんかも、今は空冷では間に合わなくて水冷にするとか、液浸冷却(冷却液)で冷やすといった話が出ていますからね。本当に至るところで熱問題があります。
堀江:これ、GPUみたいなものにも使えるんですか?
嘉数:使えますよ、ダイヤモンドで。原理的には作れます。一番簡単なのは、今のGPUの裏側にダイヤモンドを堆積させて熱を逃がすという方法で、そういった研究もなされています。これ自体を将来的にGPUにするということも可能です。
堀江:だから、シリコンウェハーじゃなくて、ダイヤモンドウェハーのような。
嘉数:全部ダイヤモンド。
堀江:最初はそんなに微細なプロセスじゃないかもしれないけど、あれ微細化しているのはどういう技術なんですか?
嘉数:微細化しているのは、電子線や紫外線を使って微細な構造を加工しているわけです。
堀江:それもダイヤモンド半導体でできるようになるんですか?
嘉数:もちろんダイヤモンドは硬いので作りにくいことは作りにくいのですが、原理的にはできるはずです。
堀江:今のウェハーってこれくらいでしたっけ?もうちょっと大きいんでしたっけ?シリコンの。
嘉数:シリコンはもう30センチとか45センチぐらいまで大きくできます。
堀江:今、ダイヤモンドは5センチくらいですかね。
嘉数:今は5センチぐらいですね。ちょっとその研究もまた進めないといけないのですが。
堀江:今、パワー半導体や真空管などが使われているようなところには使いたいですよね。
嘉数:そうですね。まずは過酷な環境で使われるレーダーなどに入っていって、そこからじわじわと全体に広げていこうという戦略です。
堀江:まずはこれしか使われないようなところを目指して。放射線に強いのもいいですね。
嘉数:そうなんです。
堀江:いやー面白い。
職人芸の回路設計から脱却。宇宙戦略基金とつながる未来

堀江:うちのアビオニクス(航空機等の電子機器)を開発している担当者たちが、高周波アナログ回路の話をしていたことがあって。高周波アナログ回路の設計って、すごくオカルト的らしいんですよ。コンデンサーや抵抗を置く場所によって動作しなかったりするみたいで。
嘉数:なるほど、細かいですね。
堀江:おそらく周波数と共振しているのか何なのかわからないですが、波長と回路のサイズが似ているから共振のような現象が起きるらしいんです。だから回路のパターン設計が結構大事だったりして、職人芸みたいになっているそうですね。 要はその辺り、例えば3Gとか6Gとか、それぐらいの周波数を使うわけですよね。今、Sバンドと言われている帯域を、宇宙間通信などで使ったりするじゃないですか。
嘉数:そうなんですよ。そういうところを今、私たちもやろうと思っているんです。
堀江:特に今、宇宙の分野で一番盛り上がっているのが「SAR(合成開口レーダー)」という技術で、すごく注目されています。日本のベンチャーも結構頑張っていて、九州のQPS研究所やSynspectiveといった会社があり、SAR衛星がしっかりビジネスになっているんですよ。
例えば、アメリカのグレートプレーンズでの小麦の生育状況をモニタリングして、シカゴのマーケットでアービトラージ(裁定)取引をするとか。あるいは、テスラの工場に止まっている車の台数を調べて、会社発表の業績予測との差異で裁定取引をするとか。そういうことに使われていて、ビジネスになるから今バンバン打ち上がっているんです。
嘉数:なるほど。
堀江:まさにこれ(ダイヤモンド半導体)の出番ですね。
嘉数:そうなんですよ。
堀江:あれって今、真空管などをそのまま打ち上げているんですか?
嘉数:そうですね。
堀江:ですよね。
嘉数: そうです。地上との通信だけでなく衛星間通信も大事になってきますよね。
堀江:合成開口レーダーも、マイクロ波を地上に当てるからすごく電力を使うんですよ。バッテリーに太陽光パネルで発電した電力を貯めて、20〜30分だけバーっとスキャンしてまたお休み、みたいな感じらしいです。最近、宇宙太陽光発電で「地上にマイクロ波で落とす」なんて言われていますが、そんな非効率なことをせずに、衛星間で電力を送ればいいじゃないかという話も出てきています。イーロン・マスクが言っている「AIデータセンター」みたいな構想にも、多分これ(ダイヤモンド半導体)が使われますよね。
嘉数:なるほど。そうしていただけるとありがたいです。
堀江:多分そういう話だと思うんですよ。先ほど少し出てきた「スピントロニクス半導体」のメモリともつながりますよね。あれはスピンでデータを記録する仕組みなので、構造的に放射線に強いらしいんです。
嘉数:ダイヤモンドもスピンとの相性がいいらしいですね。
堀江:あ、そうなんですか。じゃあハイブリッドでできますね。6Gの通信にも使えるし、放射線にも強い。これはちょっと宇宙っぽくていいですね。ぜひ実証をやりましょう。
嘉数:ありがとうございます。
堀江:最近、「宇宙戦略基金」という制度があるのはご存知ですか?
嘉数:はい、名前は聞いたことがあります。
堀江:ちょうどいいじゃないですか。宇宙で使える超最先端技術に対して補助金が出る制度なんですよ。これだったら、別に普通に打ち上げるだけでも実証できるじゃないですか。
嘉数:なるほど、そうですね。
堀江:めちゃくちゃ高度なことをやらなくても、次世代SAR衛星の基礎技術として「地球を少しだけスキャンしてデータを送信する」といったことがこれでできると、非常にいいアピールになりますよね。
嘉数:そうですね。
堀江:だから、この技術は宇宙戦略基金などのお金がつきやすいと思いますよ。実証して「これだけ寿命が持ちますよ」と証明できるといいですよね。ちなみに、耐久試験はどのような形でやっているんですか?
嘉数:今は大学レベルで、実際に動かし続けて寿命試験を行っています。
堀江:寿命試験というのは、具体的に過酷な環境に置くとか?
嘉数:いえ、プロがやるようなものではなく、単に動かしているだけです。
堀江:ですよね。だから、プロがやるような試験もやった方がいいですよね。
嘉数:そうですね。
堀江:まず、どの領域が一番売れると思いますか?最初のアプリケーションというか、人工衛星ですかね?
嘉数:いろいろ考えてはいます。
堀江:高出力のレーダーとか。
嘉数:まだそこまで強い電波が出るわけではなく基礎段階ですが、いくつかの可能性を考えながら、今は学生たちがはんだ付けをして機器を作っています。マイクロ波までいかなくても、普通のテレビのような周波数の電波でもいいんじゃないかとか。「君は何メガヘルツ、君は何ギガヘルツ」と周波数を分けて、みんなではんだごてを持って作っているところです。
堀江:なるほど。今は窒化ガリウムが使われているんですね。
嘉数:そうですね。窒化ガリウムもかなり性能がいいので、同じレベルを示すのはなかなか難しいですが、ダイヤモンドにはそれを超えるポテンシャルがあります。これからだと思います。
堀江:今、SAR衛星が注目されている理由の一つも、窒化ガリウムの半導体が使えるようになったことらしいですね。それまでは真空管を使っていたので、どうしてもシステムが大きくなってしまい、H3やファルコン9のような大型ロケットでしか打ち上げられなかった。それが小型ロケットでも打ち上げられるようになったのが、今のSAR衛星ブームの原因だと聞いています。
嘉数:なるほど。
堀江:だから、より耐久性があって小型化できるダイヤモンドの方がさらに良いということですよね。
嘉数:はい。
堀江:これからロケットの打ち上げ回数もどんどん増えますし、スターリンクのように宇宙で稼げることが実証されていますからね。だから、よりこういった技術に対する注目度が上がってきている。僕は、こういった日本発の優れた技術を、ちゃんと日本の企業がコア技術として持って伸ばしてほしいと思っているんです。日本で最初にやったことを、全部アメリカや中国に持っていかれてしまいますから。
嘉数:そうなんですよね。
堀江:なぜそれを放っておくかというと、先ほど先生が「貧しい環境」とおっしゃっていましたが、アカデミアの貧しい環境は変えていかなきゃいけない。そこにお金が回るようにするためには、こうやって得た技術でちゃんとキャピタルゲインを得て、再投資できるようにしなきゃいけないと思っているんです。そこが今、一番足りないところだと思うので。
嘉数:ありがとうございます。ぜひお力添えをお願いします。
堀江:はい、ぜひ。だから、宇宙での実証みたいなことができればいいですね。
嘉数:そうですね、はい。
堀江:多分、宇宙戦略基金向きですね。
嘉数:ありがとうございます。よろしくお願いします。
堀江:よろしくお願いいたします。今日はありがとうございました。
嘉数 誠(Makoto Kasu)
株式会社ダイヤモンドセミコンダクター最高技術責任者(CTO)、佐賀大学特任教授、名誉教授。
東京都出身。京都大学大学院博士課程電気工学専攻修了、博士(工学)。NTT研究所勤務後、2011年佐賀大学教授。2025年株式会社ダイヤモンドセミコンダクターを設立。2026年佐賀大学特任教授(現職に至る)。
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