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機械はどこまで人の声に近づけるのか?【Syrinx(サイリンクス)開発者、竹内雅樹氏 その2】

2019年から「サイリンクスプロジェクト」を始動した、東京大学大学院工学系研究科博士課程の竹内雅樹氏。

竹内氏は、日本最大級のオリジナルハードウエアコンテスト「GUGEN」グランプリ受賞、「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト アイディアコンテスト」グランプリ受賞など、数々の賞を受賞している工学系の若手ホープである。
堀江氏は竹内氏の開発する、声を失った方のための新しいウェアラブルデバイス『Syrinx(サイリンクス)』を装着し、声を出さずに会話ができることに驚愕した。

振動源を変化させる

竹内 それで普段、ELを使っている人に聞いたら、やはりこれを使って話すことに少し恥ずかしさを感じているそうなんです。街中とかで話していると周りからの視線が気になると。そこで、その課題を改善するために私たちがつくったのがサイリンクスです。従来のELから出てくる振動音は、ただの機械音です。ですから、出てくる声も機械音になってしまう。でも、私たちのは振動音を人の声の録音データからつくり出しています。だから、自然な声に近い。

堀江 へー。

竹内 それから、従来のELは手で持って喉にあてるため、常に片手がふさがってしまいます。サイリンクスは首輪型なので両手があきます。さらにデザインもカッコ良くして、カラーバリエーションも増やしました。

堀江 デザインは大事ですよね。

竹内 今、私の声からつくった音で堀江さんに試してもらってもいいですか。

堀江 いいですけど、僕、首が太いんですよね。

竹内 大丈夫です(笑)。どうですか、さっきみたいに口をパクパクしてみてください。

堀江 「アイウエオ、アイウエオ……」あ、喋れますね。さっきより、機械音じゃない気もします。

竹内 ただ、これはまだ開発途中なんです。課題としては、抑揚がつけられていない。扇風機に向かって声を出しているようなフラットな感じになってしまいます。それで今、声の高低をつけられるように研究しているんです。

堀江 抑揚っていうのはどうやってつけるんですか?

竹内 人の声には基本周波数というものがあって、僕だとだいたい100ヘルツです。抑揚はこの基本周波数を上下させることでつけます。声帯は筋肉のひだのようなもので、振動することで声になります。例えば、100ヘルツだったら1秒間に100回振動する。抑揚は、この振動が多くなると高い音が出て、少ないと低い音が出る仕組みです。

堀江 じゃあ、振動源を変化させなきゃいけないわけですね。

竹内 そうです。

堀江 それ、難しいですよね。

竹内 難しいです(笑)。まず、言葉の抑揚をマイクとスピーカーで機械学習するところから始めます。ただ、それをどうリアルタイムで出すかというのは現在、考えている最中です。

堀江 リアルタイムで抑揚を出すとなると、さらに難しいですよね。でも、それをやらないと意味ないですよね。

竹内 そうなんです。私たちもリアルタイムでの抑揚づけを追求していきたいと思っています。

その3へ続く

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竹内雅樹 (Masaki Takeuchi)
東京大学大学院工学系研究科博士課程
1995年生まれ。埼玉県所沢市で生まれ、神奈川県横浜市で育つ。
2018年、慶應義塾大学卒業後、理化学研究所勤務。2019年、東京大学大学院入学。同年、「サイリンクスプロジェクト」始動。2020年5月、マイクロソフト主催の学生の開発コンテスト「Microsoft Imagine Cup」で準優勝。10月、国際エンジニアリングアワード「James Dyson Award」でトップ20入り、及び国内最優秀賞受賞。12月、日本最大級のオリジナルハードウエアコンテスト「GUGEN」でグランプリ受賞。2021年、「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト アイディアコンテスト」でグランプリ受賞