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機械はどこまで人の声に近づけるのか?【Syrinx(サイリンクス)開発者、竹内雅樹氏 その3】

2019年から「サイリンクスプロジェクト」を始動した、東京大学大学院工学系研究科博士課程の竹内雅樹氏。

竹内氏は、日本最大級のオリジナルハードウエアコンテスト「GUGEN」グランプリ受賞、「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト アイディアコンテスト」グランプリ受賞など、数々の賞を受賞している工学系の若手ホープである。
堀江氏は竹内氏の開発する、声を失った方のための新しいウェアラブルデバイス『Syrinx(サイリンクス)』を装着し、声を出さずに会話ができることに驚愕した。

デバイスを広めるなら口コミ

堀江 なんか、トレーニングして声を出す方法もあるじゃないですか。

竹内 はい。食道発声ですね。食道発声は、簡単にいうとゲップをしながら口パクをしている感じです。そうすると声が出るんです。ただ、難点としてはトレーニングがけっこう大変で、毎日3・4時間の練習を続けなければいけない。食道は筋肉なのでトレーニングを休むと衰えます。ですから、毎日練習をして、なんとか話ができるようになるというレベルです。また、長く話をするためには、より練習時間を重ねなければいけない。

堀江 そうなりますよね。

竹内 こういう病気になる方は、高齢の方が多いんですね。そうすると体力的にしんどくなって諦めてしまう人も多いんです。

堀江 なるほど。でも、よく人工咽頭の新しいデバイスを自分たちで考えましたよね。

竹内 実は、銀鈴会という、声帯を摘出し声を失った人に対し、食道発声などの発声方法の練習により、社会復帰を支援する会(URL: https://www.ginreikai.net/)があって、そこに通っていたときにいろいろお話を伺ったんです。すると「手術前の自分の声で誰とでもどこででも話したい」という声が多かった。それでサイリンクスのプロトタイプをつくったんです。そして練習会に持っていって、またいろいろとフィードバックをもらいます。それを重ねていって改良していきました。

竹内 実は、堀江さんにお聞きしたいことがあるんです。

堀江 なんですか?

竹内 僕はビジネスの知識があまりないので、堀江さんだったら、この新しいデバイスをどういう形で患者さんに届けようとしますか?

堀江 それはもう、口コミしかないんじゃないですか。特に高齢者の方が多いということは、自分から探し出すということはあまり期待できないですよね。そうなると、患者さんより医師とかにアプローチした方がいいと思います。

竹内 やっぱり、そうですよね。

堀江 ええ。患者さんのQOL(クオリティオブライフ=生活の質)を上げるのは、大事なことですよ。すごくいいデバイスを作っていると思うので、ぜひ頑張ってください。

竹内 はい。頑張ります。ありがとうございました。

堀江 ありがとうございました。

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竹内雅樹 (Masaki Takeuchi)
東京大学大学院工学系研究科博士課程
1995年生まれ。埼玉県所沢市で生まれ、神奈川県横浜市で育つ。
2018年、慶應義塾大学卒業後、理化学研究所勤務。2019年、東京大学大学院入学。同年、「サイリンクスプロジェクト」始動。2020年5月、マイクロソフト主催の学生の開発コンテスト「Microsoft Imagine Cup」で準優勝。10月、国際エンジニアリングアワード「James Dyson Award」でトップ20入り、及び国内最優秀賞受賞。12月、日本最大級のオリジナルハードウエアコンテスト「GUGEN」でグランプリ受賞。2021年、「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト アイディアコンテスト」でグランプリ受賞