堀江貴文氏は6月8日、金沢大学の菅沼直樹氏を取材。「車の自動運転研究」の最前線などについて話を聞いた。(初回配信日:2015年6月11日)
自動運転になると個人ではなく、みんなで車をシェアすることになる
菅沼 実は今、石川県の珠洲市(すずし)で公道実験をすすめているんです。
堀江 へえー。実際に公道を走らせる場合、トラブルへの対処法はどうなんですか? 例えば子どもがパッと飛び出してきた時など、止まれるんですか?
菅沼 誤解のないように言っておかないといけないのですが、自動運転になれば事故がゼロになるわけではありません。車には物理的な性能や機械的な限界がありますから。ですから、例えば、それまで100あった事故が10とか5とかに減るかもしれない、ということです。
堀江 それはそうでしょうね。
菅沼 今は、実際に運転する時にどんな問題が発生して、それをどう解決していくのかというケーススタディを細かくやっているところです。今から2年後くらいをめどに、誰が乗っても問題ないレベルにすることを目指しています。珠洲市は高齢化が進んでいる地域なので、年配の方が移動に困らないものを作っていきたいと思っています。
堀江 実験に使っているのは普通の車ですか?
菅沼 『トヨタ自動車』のプリウスです。プリウスはスロットルやブレーキなど、ほとんどが電気的なシステムで動いているので、他の車に比べて改造が楽なんですよ。
堀江 僕は、「電気自動車と自動運転はセット」だと思っているんです。
菅沼 確かに親和性が高いですねよ。電気で動いているから、機械的な要素が少なくて制御しやすい。
堀江 それに、車が自動運転になると個人が所有している意味がなくなってきますよね。
菅沼 確かにそれはあるかもしれません。価格的にも、これまでのように一家に一台というのが難しくなる可能性があります。センサーを含めた車のメンテナンスという面から考えても、みんなでシェアするという使い方は現実的ですね。
堀江 「個人で所有するのは、富裕層かカーレースが趣味のような一部の人」になるんじゃないですかね。そう考えていくと、まず「駐車場がいらなくなる」。例えば、ひとつの集落に何台かの自動運転の電気自動車があって、それに乗ってみんながいろんな場所に自由に移動できる時代になると思います。
菅沼 そういう小さなコミュニティの中で動く車もあるし、長距離を移動する車もあるんじゃないでしょうか。使う場所や目的、規模によって、必要とされる車の形がまったく変わってくるでしょうね。
堀江 長距離移動の時は電車みたいなのに自動的に連結されるのが、僕のイメージなんです。家からは車椅子みたいなものに乗って、バス停でバスに連結されて、駅についたら今度は列車に連結されてそのまま移動する。
菅沼 欧州で似たようなプロジェクトをやっていますよ。高速道路をプロのドライバーがずっと走っていて、合流を要求すると勝手に隊列にくっついて目的地まで連れて行ってくれる。そして、離脱ボタンを押すと隊列から離れて自分で走っていく。
堀江 面倒な長距離の移動は、誰かに連れて行ってもらうのがラクですよね。
菅沼 高速道路では連結して自動で動いたり、目的地の近くでは自分で運転したり……自動運転の使い方はいろいろあると思います。1台の車で高度な自動運転をすべてできるようにする方法もあるんですけど、1台でできる機能を絞って、全体としてうまくやっていく枠組みを作る方法もありますね。
菅沼直樹(Naoki Suganuma)
金沢大学理工研究域准教授(当時)。1975年生まれ。金沢大学大学院卒業後、日本学術振興会特別研究員を経て、金沢大准教授に。