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「情報格差」が生むリースバックの不信構造──ダブルチームが挑む“透明化モデル”とは

不動産×テクノロジーで市場の歪みを是正する「家つぐ」の構造

高齢化の進行や住宅資産の活用ニーズの高まりを背景に、近年「リースバック」という仕組みへの関心が高まっている。自宅を売却しながら同じ住まいに住み続けられるこの手法は、老後資金の確保や事業継続のための資金捻出など、生活と資産の両立を図る選択肢の一つとして位置付けられている。

もっとも、その一方で、価格の妥当性の見えにくさや契約条件の複雑さ、業者選びの難しさなどから、市場全体に対する不信感も根強い。こうした構造的な歪みに対し、「情報格差の是正」という視点から向き合おうとしているのが、株式会社ダブルチーム(東京都渋谷区 代表取締役 富永亘)である。

同社は、リースバック専門の一括査定サービス「家つぐ」を中核に、情報の透明化を通じた市場健全化を志向している。本稿は、株式会社ダブルチームの主要株主の一人である名津井飛雅龍氏への取材をもとに、同社の事業構造と市場認識を整理したものである。

リースバック市場に存在する「情報格差」

リースバックは、所有不動産を売却したうえで賃貸借契約を結び、引き続きその住まいに居住する仕組みである。資産を現金化しながら生活拠点を維持できる点に特徴があり、資金需要を抱える個人や事業者にとっては有力な選択肢となり得る。

実際、株式会社ダブルチームが公表したリリースでも、住宅ローン負担、老後資金、住み替えといった背景からリースバックへの関心が高まっていると説明されている。

しかし、この市場では、利用者が十分な情報を持たないまま意思決定を迫られやすい。価格が適正かどうかを判断しづらく、契約内容も複雑であり、事業者ごとの条件差も大きい。そのため、制度としての有用性とは別に、「よく分からないまま契約してしまうのではないか」「本当に安心して利用できるのか」といった不安が先行しやすい領域でもある。

株式会社ダブルチームの今回のオウンドメディア開設も、まさにこうした不安や情報の不透明さを背景としている。

「情報格差をなくす」──ダブルチームの問題意識

株式会社ダブルチームは、コーポレートサイト上で「不動産×テクノロジーで社会課題を解決する」というビジョンを掲げている。今回の原文リリースでも、不動産業界に残る“情報の不透明さ”を解消し、利用者が納得して住まいの意思決定を行える社会を目指すとして、情報発信の強化を打ち出した。

取材で名津井氏が繰り返し強調したのは、リースバック市場における根本課題は、個別のトラブル事例そのものよりも、その手前にある「情報格差」にあるという認識であった。

資金的に切迫した状況にある所有者ほど、十分な比較材料や判断材料を持たないまま結論を急がされやすい。結果として、制度自体に問題があるのか、説明不足や比較不足のまま進んだ個別取引に問題があるのかが混同され、市場全体が不信の対象になっていく。

名津井氏の語りから見えてきたのは、同社が単にリースバック案件を仲介する会社としてではなく、「意思決定に必要な情報を整える側」に自らを置こうとしていることである。

リースバック市場で、資金ニーズの発生から情報不足、比較不足、不信や不利な意思決定につながる流れと、それに対して家つぐが一括査定、コンシェルジュ、投資家ネットワーク、オウンドメディアで対応する構造図
図1:リースバック市場で生じやすい情報格差と、「家つぐ」が対応しようとする課題の全体像

リースバックの価格を守る「一括査定モデル」

株式会社ダブルチームの主力サービス「家つぐ」は、リースバック専門の一括査定サービスとして、複数のリースバック事業者の条件を比較できることを特徴としている。原文リリースでも、「住み続けながら資金化したい」「できるだけ良い条件で比較したい」「信頼できる会社を選びたい」といったニーズに対し、透明性のある選択肢を提供するとしている。 

取材内容を踏まえると、この「比較」は単なる価格一覧の提示にとどまらない。ダブルチームでは、案件ごとに複数の不動産業者へ価格提示を依頼し、相見積もりの構造をつくることで、一社依存による価格の偏りを避けようとしているという。

ここで重要なのは、リースバックを希望する所有者にとって、比較先の存在そのものが交渉力になる点である。価格形成の過程が閉じたままだと、利用者はその提示額が妥当かどうか判断しづらい。

反対に、比較の土台があれば、極端に低い条件での決着を避けやすくなる。ダブルチームが強調する「透明性」とは、まさにこの価格形成過程の可視化に関わるものである。

不動産業界では珍しい「完全分業モデル」

同社の特徴は、サービス内容だけでなく、その業務設計にも表れている。取材によれば、ダブルチームでは自社でマーケティング機能を持ち、問い合わせの初期接点を担うコールチーム、すなわちコンシェルジュ機能を設け、さらに現地対応を担う担当者へとつなぐ分業体制を敷いているという。この構造は、不動産業界においてなお属人的な営業オペレーションが色濃く残る中では、比較的整理された設計である。

分業の効用は明確である。初期相談では、利用者の不安や資金状況、住み続けたい事情などを丁寧に聞き取る必要がある。一方、現地対応では物件や契約条件の確認、各事業者との実務的な調整が求められる。

これらを一人の担当者に過度に集中させるのではなく、役割ごとに機能を分けることで、相談品質と実務精度の両立を図る設計である。とりわけ、リースバックのように利用者の心理的不安が強い領域においては、最初の応対品質がその後の信頼形成を左右する。

この意味で、同社のコンシェルジュ体制は単なる受付機能ではなく、意思決定支援の入り口として位置付けるべきものだろう。

投資家ネットワークが生む「もう一つの出口」

取材で浮かび上がったもう一つの特徴が、投資家ネットワークの厚さである。名津井氏によれば、ダブルチームは日常的にやり取りする投資家層を抱え、通常の不動産事業者への打診とは異なる出口も持っているという。

ここでいう出口とは、単に査定先が多いという意味ではない。場合によっては、自社が物件を買い取り、その後に投資家へ流通させる形を取ることもあるというのである。

この構造が意味するのは、同社が仲介会社でありながら、案件ごとに出口設計を組み替えられる余地を持っていることである。通常の仲介だけでなく、投資家との接続を通じて、より良い条件が成り立つ可能性を探ることができる。

リースバックを希望する所有者にとって重要なのは、最初から一つの型に当てはめられることではなく、自身の状況に応じて複数の解が比較できることである。その意味で、ダブルチームの強みは「リースバックを売ること」そのものではなく、「リースバックを含む出口の選択肢を広げること」にあると言える。

家つぐの事業構造を示すフロー図。オーナーからの問い合わせを起点に、コンシェルジュによる初期対応、複数事業者や投資家への打診、条件比較と調整を経て、リースバック成立や投資家成約、自社買取、他の選択肢提示へつながる流れを示している
図2:「家つぐ」の事業構造。問い合わせから比較、調整、出口設計までを一体で担う流れ

「家つぐメディア」が担うもう一つの役割

株式会社ダブルチームは2026年2月20日、リースバック専門の一括査定サービス「家つぐ」に関する公式オウンドメディア「家つぐメディア」の開設を発表した。原文リリースによれば、同メディアでは、リースバックの仕組みと基礎知識、メリット・デメリット、注意点、業者比較のポイント、よくあるトラブル事例と回避策、実際の相談ケースや選択肢などを体系的に発信していくとしている。 

このメディアの意味は、単なる集客導線の追加ではない。取材で名津井氏が示した認識に即して言えば、問い合わせ時点で既に情報不足に陥っている利用者が多い以上、相談窓口の手前で理解の土台を整える必要があるということである。

つまり、問い合わせ前段階の知識格差を縮めなければ、どれほど相談対応を丁寧にしても、市場全体に残る不信の構造は変わらない。家つぐメディアは、その意味で「売るための情報発信」ではなく、「誤解を減らすための情報発信」として位置付けられている。

制度理解、比較視点、トラブル回避の観点まで扱う方針を明示している点も、その思想を裏付けている。 

リースバック市場の未来とダブルチームの役割

日本では今後も、高齢化、住宅資産の偏在、将来資金への不安といった要因を背景に、住まいを維持しながら資産を流動化したいというニーズは一定程度続くとみられる。リースバックは、そうした社会状況の中で存在感を持ちうる仕組みである一方、利用者の理解不足や比較不足が残る限り、制度の有用性と市場の信頼性は一致しないままである。

この点でダブルチームが向き合っているのは、単なる不動産仲介の効率化ではない。比較可能な査定構造、分業による相談品質、投資家ネットワークによる出口の拡張、そしてオウンドメディアによる事前理解の補助を組み合わせることで、リースバック市場における「判断材料の不足」という構造課題に対応しようとしている。

市場の信頼形成は、優良な一社が存在するだけでは進まない。利用者が納得して選べる条件が、仕組みとして整っているかどうかが問われる。その意味で同社の試みは、リースバックという制度の社会的受容を左右する一つの実践として見ることができる。

企業情報等

会社名:株式会社ダブルチーム
所在地:〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-23-15 A-PLACE代々木5階
代表者:代表取締役 富永 亘
コーポレートサイト:https://wteam-fudousan.com/

サービス詳細

  • サービス名:家つぐ(リースバック専門 一括査定サービス)
  • サービスサイト:https://ietugu.co.jp/

ZEROICHI編集部が注目する理由

ZEROICHI編集部が今回ダブルチームを取り上げる理由は、同社がリースバック市場を単なる集客市場としてではなく、「情報格差を起点とする構造課題の集積地」として捉えている点にある。

リースバックという言葉は、利用者にとってしばしば資金繰りの最終局面で接触する制度であり、そこでは価格の問題と同じか、それ以上に、理解の不足や比較の不足が重大な意味を持つ。ダブルチームの取り組みは、その局面で発生する判断の歪みをどう補正するかという問いに向けられている。

とりわけ注目したいのは、同社が「仲介」にとどまらず、「比較の設計」「出口の設計」「理解の設計」に踏み込んでいる点である。複数査定によって価格の視野を確保し、コンシェルジュ機能によって相談の質を支え、投資家ネットワークによって出口を増やし、さらにオウンドメディアによって相談前の理解不足にまで手を打つ。

この一連の構造は、単体のサービス改善ではなく、市場に横たわる不信の発生源を順番に潰していこうとする設計に近い。

リースバック市場は、今後も需要が見込まれる一方で、言葉の印象や過去の報道だけで判断されやすい領域でもある。だからこそ、制度の是非を単純化して語るのではなく、どのような情報が不足し、どのような比較軸が必要で、どのような事業者設計が利用者の納得につながるのかを見ていく必要がある。

ZEROICHI編集部がダブルチームに注目するのは、その論点を、理念ではなく事業構造として組み上げようとしているからである。

リースバックは、単なる不動産取引ではなく、生活と資産の意思決定が交差する領域である。そのために必要なのは、価格だけではなく、透明性と理解可能性である。ダブルチームの取り組みは、その両方を支える仕組みをどう実装するかという問いに対する一つの回答であり、今後の展開を追う価値がある。

■原文リリース(参照)
2026年2月20日:株式会社ダブルチーム、リースバック専門一括査定サービス「家つぐ」公式オウンドメディアを開設
原文リリースのURL
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000177984.html