リモデラのAI退去立会サービス画面のイメージ。管理画面とスマートフォン上の点検画面が表示されている
BUSINESS

退去立会は、AIで代替できるのか。REMODELAが挑む“原状回復の標準化”

賃貸住宅の退去時に発生する原状回復精算は、いまなお揉めやすい領域である。入居者にとっては「不当に請求されるのではないか」という不安が残り、オーナーや管理会社にとっては「本来請求できるものまで回収しきれない」という現実もある。

問題の本質は、誰か一方が常に損をしていることではなく、判断基準の曖昧さにある。

この曖昧な領域を、記録、ルール、そして保証の接続によって整理しようとしているのが、REMODELA株式会社(大阪府大阪市 代表取締役 福本拓磨)である。

本記事は、同社代表取締役の福本氏への取材をもとに構成したものである。AIという言葉だけでは捉えきれない、この取り組みの実像を追った。

退去立会は、なぜこれほど曖昧なのか

原状回復費をめぐる判断は、現場ではなお属人的である。どの損傷を借主負担と見るか、どこまでを通常損耗とみなすかは、担当者の経験や現場判断に左右されやすい。

同じ部屋、同じような傷であっても、立ち会う人によって説明や請求の線引きが変わることは珍しくない。

不動産テックの進展によって、契約や申込、募集といった領域のデジタル化は進んできた。一方で、退去立会や原状回復精算は、紙、目視、経験則への依存がなお色濃く残る領域である。

現場の判断がそのまま精算に反映される以上、入居者、管理会社、オーナー、保証会社のあいだで認識のズレが起きやすく、そのズレが紛争の火種になってきた。

福本氏は、この領域を「最後までアナログが残ってきた場所」と捉えていた。だからこそ、ここに手をつける意味があるというのである。

同社は、この領域をどう再設計しようとしているのか

リモデラが提供するのは、入居時の物件状態をスマートフォンで記録する「入居時チェック」と、退去時に借主がスマートフォンで室内を撮影し、AIが損傷検知や負担算定を支援する「AI退去立会」である。

特徴は、単に画像を解析するだけではない点にある。福本氏によれば、退去時の判定は、室内の状態把握に加え、国土交通省のガイドライン、賃貸借契約書、入居年数なども踏まえて整理される設計である。

つまり、単なる画像認識ではなく、原状回復の判断に必要なルール群を実務に落とし込もうとしているのである。

同氏がこのサービスの独自性として挙げたのは、「人が現地に行かなくてよくなったこと」であった。従来、不動産会社の担当者が現場へ赴き、その場で損傷箇所を確認し、説明し、精算に向けた整理を進めていた。

そのプロセスそのものを、非対面でも成立する形へ組み替えようとしているのである。

従来の退去立会とAI退去立会の工程を左右で比較した図。従来は受付、日程調整、契約確認、移動、現地立会、合意、請求作成があり、AI退去立会では案件登録、借主撮影、AI支援、確認、請求作成へ整理されている
従来の現地対応中心の立会と比べ、AI退去立会では記録と解析を軸にした運用へ再設計されている

独自性は、AIそのものより“成立条件の設計”にある

「入居時に写真を残す」「退去時に比較する」「AIで精算を支援する」という発想自体は、完全な新発明とは言いがたい。

実務上の必要性が高い領域であるだけに、類似する考え方や近い機能はこれまでも存在してきた。

それでもREMODELAの取り組みが一段異なるのは、非対面立会を単なる理想論として語るのではなく、実務として成立させる条件まで設計しようとしている点である。

REMODELA株式会社代表取締役の福本拓磨氏が話している様子
REMODELA株式会社代表取締役の福本氏。退去立会を入口に、不動産管理業務全体の再設計を見据える

取材では当然、「借主が都合の悪い箇所を撮らないのではないか」「見落としが起きた場合はどうするのか」といった懸念も投げかけた。

福本氏は、AIによる撮影漏れの検知や、後日の追加請求、さらに保証会社との連携によって、その弱点を埋める設計を進めていると説明した。

ここで重要なのは、独自性が“AIを使っていること”そのものではなく、“AIだけでは弱く見える部分をどう運用で補うか”まで考えられていることにある点である。

派手な機能よりも、現場で起きる穴をどう塞ぐか。その視点が、このサービスの輪郭を決めている。

保証会社との接続が意味するもの

今回の発表は、まったく新しい保険商品の誕生というより、保証会社の既存保証サービスにリモデラの機能が付帯されたものと見るのが自然である。

だが、そこには事業上の大きな意味がある。保証会社にとって、退去精算の曖昧さはリスクである。何を、どこまで、どの根拠で保証するのかが不明瞭であれば、代位弁済の判断もしづらい。

逆にいえば、精算根拠が整理され、借主負担と貸主負担の線が引きやすくなれば、保証会社はその範囲を扱いやすくなる。

この意味で、リモデラのサービスは、管理会社向けの効率化SaaSにとどまらず、保証判断の基盤にも接続され始めたことになる。

退去立会の話でありながら、単なる現場支援の話では終わらない理由はここにある。

もっとも、それがそのまま管理会社側の安心材料になるわけではない。保証会社は請求の不透明さを抑えたい立場にある一方、管理会社は回収漏れや説明責任の低下を懸念しうる。

利害が完全に一致しているわけではないからこそ、この仕組みは単純な歓迎一色にはならないのである。

それでも残る問い──本当に成立するのか

最大の論点は、借主主導の非対面立会がどこまで信頼に足るものとして運用できるかである。

効率化の魅力は明確である。日程調整や現地対応の負荷は下がり、人手不足に悩む管理会社にとっても一定の意義がある。

一方で、「見せたくない箇所を撮らないのではないか」「AIの見落としが起きたとき、誰が責任を持つのか」という疑問は自然に残る。ここは、取材を通じても、最も慎重に見るべき点だと感じた。

福本氏は、そこに対して追加請求や保証対応を含めた運用で成立性を担保していく考えを示した。設計思想としては筋が通っている。

ただし、こうしたサービスの評価を最終的に決めるのは、やはり実運用の蓄積である。

どれだけ見落としを防げるのか、どこまで納得性を保てるのか、異議や再精査がどの程度発生するのか。そうした運用面の蓄積が今後の説得力を左右するであろう。

現時点で言えるのは、この構造が「筋の良い仮説」であることまでは見える一方で、「完全に答えが出た」と断じる段階ではない、ということである。

福本氏が描く、退去立会の先にある不動産管理の再編

取材で印象的だったのは、福本氏が退去立会をゴールではなく入口として語っていた点である。

原状回復工事、入居中データの管理、入居者対応など、不動産管理業務全体にAIが関わる未来像を視野に入れているという。

この見方に立つと、今回のサービスは単独の便利機能ではない。退去立会という、最後までアナログ性の強かった業務を押さえることで、その周辺に広がる管理オペレーション全体へ接続していく入口である。

つまりREMODELAが目指しているのは、一機能SaaSの提供にとどまらず、不動産管理の運用そのものを再編していくための基盤づくりであるように見える。

退去立会を取れれば、原状回復、工事、データ管理、入居者オペレーションへと広がる構造的な必然がある。その先には、業界ルールの実装者としての立ち位置も見えてくる。

ZEROICHIがこの取り組みを取り上げる理由

本件は、単なるAI導入事例ではない。ZEROICHIが注目したのは、曖昧で属人的であった退去精算を、記録、ルール、保証の接続によってどこまで標準化できるかという問いそのものである。

不動産管理DXと聞くと、表層的な効率化や省力化の話に見えやすい。

しかし本件が踏み込んでいるのは、紛争、納得、判断基準といった、より深いレイヤーである。

誰が強いか、誰が得をするかではなく、何が妥当かという基準をどう共有するか。その試みに、ZEROICHIは記事化の意味を見出した。

もちろん、現時点ですべてが実証済みだと言い切ることはできない。だが、だからこそ取材する価値がある。構想だけで終わるのか、実装によって新しい標準になりうるのか。

その緊張感を含んだ挑戦として、この取り組みは見るに値すると判断した。

REMODELAの試みは、不動産業界の一サービスとして片づけるには惜しい。ルールの曖昧さが対立を生み、情報の非対称性が不信を生む領域において、何を根拠に判断するかを設計し直そうとする動きだからである。

ZEROICHIは、その構造的な問いにこそ注目している。

企業概要

企業名:REMODELA株式会社
所在地:大阪市北区中崎西2-2-1 東梅田八千代ビル2階
代表取締役:福本拓磨
事業内容:不動産管理業務における業務支援SaaSの運営・開発
URL:https://www.remodela.jp/

原文リリース(参照)

原文リリース発表日付:2026年3月16日
タイトル:ジェイリース×リモデラ「入居時チェック・AI退去立会」付保証商品を共同開発 ~退去トラブルの未然防止と管理業務の効率化を同時に実現~
原文リリースのURL
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000075721.html

※本記事は、取材および公開情報をもとに構成している。事実関係や固有情報については、公開情報を参照のうえ確認した。