ファンズ株式会社(東京都渋谷区 代表取締役CEO 藤田雄一郎氏)が展開する固定利回り投資サービス「Funds」は、これまで個人の資産運用サービスとして語られることが多かった。
しかし今、同社が向き合っているのは、個人の投資判断にとどまらないテーマである。マンション管理組合の修繕積立金という、極めて保守的に扱われてきた共同体資金の運用である。
本記事は、ファンズ株式会社 執行役員/マーケットプレイス本部長の坂本直樹氏への取材をもとに構成したものである。
取材を通じて見えてきたのは、単なる金融商品の新しい活用事例ではない。
インフレや建築費高騰を背景に、住まいを維持するための資金防衛の前提そのものが変わり始めているという現実である。
「積み立てておけば安心」が通用しなくなった
修繕積立金は、本来、将来の大規模修繕に備えるための資金である。
従来のマンション管理実務では、元本毀損リスクを避ける観点から、預金や安全性の高い商品を中心に保有する考え方が一般的であった。
実際、取材の中でも、これまで多くの管理組合が「預金」や「すまい・る債」といった方法で積み立ててきたことが語られた。
だが、その前提は揺らいでいる。建築費、人件費、資材費の上昇によって、過去の想定に基づいて組まれた長期修繕計画が、そのままでは成立しにくくなっているからである。
資金を安全に寝かせていても、修繕費の上昇に追いつかなければ、実質的には目減りしていく。
問題は、投資をするか否かではない。住まいを守るために、どう備えるかという問いに変わっているのである。

坂本氏も、修繕積立金不足の問題は今後さらに深刻化するとの認識を示す。
ここで重要なのは、「運用で増やす」という発想ではなく、「運用しなければ守れなくなる局面が来ている」という認識である。修繕積立金の運用は、投機ではなく、防衛策として立ち上がってきている。
運用が必要でも、何でも選べるわけではない
もっとも、修繕積立金は個人資産ではない。住民全体の共有資金であり、その扱いには高い説明責任が伴う。
だからこそ、一般的な資産運用の文脈で語られるような、価格変動の大きい商品や長期拘束の強い商品は、そのまま受け入れられにくい。
理事長や一部役員の判断で動かしているように見える資金運用は、ガバナンス上の不安も呼びやすい。
管理組合が求めるのは、高いリターンではなく、短期であり、仕組みが理解しやすく、住民に説明しやすい選択肢である。
言い換えれば、このテーマの本質は投資商品の比較ではない。共同体資金の意思決定構造に適合する運用手段が存在するかどうかにある。

ここを見誤ると、このテーマは単なる「新しいファンドの話」に矮小化されてしまう。
Fundsはなぜ、この領域に入り込めたのか
Fundsは、1円から投資できる固定利回り投資サービスとして展開されており、募集時に利回り条件が示されるファンドを扱う。
ファンズ株式会社の公式情報では、2026年2月末時点で120社が組成する581ファンドを募集し、分配遅延・貸し倒れは0件としている。ただし、元本保証の商品ではなく、各ファンドにはリスクが存在する点は明示されている。
取材で浮かび上がったのは、管理組合にとって重要なのは利回りの高さそのものではないという点である。説明のしやすさ、期間の現実性、価格変動のなさ、そして共同体資金として扱える仕組みであることが重視されていた。
坂本氏は、変動リスクの大きい商品であれば、住民の抵抗はもっと強くなった可能性があると語る。ここで効いているのは金融商品の派手さではなく、守りの運用として理解しやすい設計である。
さらに重要なのは、Fundsが商品性だけでこの領域に入っているわけではないことだ。
坂本氏は、「Funds for マンション修繕積立金 応援パック」を通じて、単なる運用サービスの提供にとどまらず、管理組合が抱える合意形成や制度設計のハードルを共に乗り越えるパートナーでありたいと述べている。
ファンズ株式会社は2024年12月、マンション修繕積立金不足問題の解決に向けた取り組みとして、同パックの提供開始を公表している。
つまり、同社の強みは金融スペックだけでなく、共同体資金の運用実装まで射程に入れている点にある。
本当の壁は、商品選びではなく合意形成にある
このテーマで最大の障壁は、商品理解ではない。住民合意である。
取材で紹介された神奈川県茅ヶ崎市のマンション事例では、約120世帯の住民が運用開始に合意したとされるが、その背景には、住民への丁寧な説明があった。
まず共有されたのは、「このままでは将来的に資金ショートに陥る可能性がある」という現実であった。住戸あたり100万円単位の一時金負担が発生し得るという厳しい見通しを、数字とともに住民に伝えたことが出発点だったのである。
その上で、アンケートを通じて住民の本音を可視化し、借入も一時金負担も避けたいという共通認識を確認していった。
運用は「利益を得るための手段」ではなく、「将来の痛みをできるだけ小さくするための防衛策」として位置づけられた。
この文脈転換が、合意形成における決定的なポイントであったと読み取れる。
また、検討から実施までを比較的短期間で進められた背景には、専門委員会の設置もあった。月1回程度の理事会だけでは進みにくい論点を、修繕や運用に特化した枠組みで先に検討し、理事会・総会へと接続する。
共同体資金の意思決定は、商品を選べば終わるものではない。現状把握、危機感の共有、資料整備、役割分担、意思決定の段取りまで含めて初めて動くのである。
Fundsがこの領域で意味を持つのは、そうした合意形成の実装支援まで含めて関わっているからである。
これは一つの事例ではなく、構造変化の入口かもしれない
現時点では、この動きはなお先進事例の側面を持つ。少なくとも現段階では、広く一般化した標準解とまでは言えない。
しかし、背景にある課題は個別事情ではない。物価高、建築コスト上昇、老朽化ストックの増加という条件は、多くのマンションに共通する構造課題である。
だからこそ、この事例は一つの珍しい話としてではなく、今後広がり得る問題意識の先行ケースとして読むべきである。
従来のように「安全に積み立てておけばよい」という発想だけでは、住まいを守りきれなくなる可能性がある。その現実が、修繕積立金という最も保守的な資金のあり方を変え始めている。
坂本氏は、今後も管理組合の合意形成や制度設計の支援に関わっていきたいとの考えを示している。将来的には、小規模組合にも届く仕組みや、管理会社を巻き込んだ標準化など、拡張の余地も考えられる。
この事例の重要性は、珍しさそのものにあるのではない。共同体資金の守り方が、インフレ時代に合わせて更新を迫られていることを、具体的に示している点にある。
住まいの問題を、金融から見直す
このテーマは、一見すると金融サービスの記事に見える。だが、実際には住まい、老朽化、資産価値維持、地域の持続性にまでつながっている。
修繕積立金不足は、単に会計上の問題ではない。必要な修繕が先送りされれば、建物の安全性や住環境、さらには将来の資産価値にも影響が及ぶ。つまり問われているのは、どの商品で運用するかではなく、都市居住をどう持続可能にしていくかである。
Fundsの事例が持つ意味は、金融を生活インフラ維持の領域に接続している点にある。
住民の暮らしを支える建物を、将来にわたって維持するための手段として金融を再配置しているのである。
そこにあるのは投資ノウハウではない。共同体のお金をどう守るかという発想の更新である。
なぜ今、このテーマを取り上げるのか
このテーマに注目すべき理由は、企業の新サービスを紹介するためではない。
社会の前提が変わり始めている兆候が、ここに凝縮されているからである。
修繕積立金は、長く「安全に貯めるもの」と見なされてきた。だが、インフレとコスト上昇のなかで、その前提は静かに崩れつつある。
守るために、運用という選択肢を持たざるを得ない局面が現れ始めているのである。
重要なのは、Fundsという企業の固有名詞よりも、修繕積立金という極めて保守的なお金が、運用を必要とする文脈に入ったことだ。
そこには、共同体資金の危機と、それに対する現実的な対処法の萌芽がある。
珍しい事例として面白がるだけでは不十分である。
自分たちのマンション、自分たちの共同体、自分たちの将来負担に直結する話として、この構造変化を見なければならない。
本件を取り上げる価値は、まさにそこにある。
新しい金融商品を紹介することではなく、インフレ時代の共同体資金防衛をめぐる先行ケースとして、いま何が起き始めているのかを可視化すること。
その変化を早い段階で言語化することに意味があるのである。
企業概要
企業名:ファンズ株式会社
所在地:東京都渋谷区恵比寿西1-10-11 フジワラビルディング5階
代表者名:代表取締役CEO 藤田雄一郎
設立:2016年11月1日
資本金:100,000,000円
第二種金融商品取引業
登録番号 関東財務局長(金商)第3103号
一般社団法人 第二種金融商品取引業協会 加入
URL:https://funds.jp/
原文リリース(参照)
- 2026年2月10日:「貯める」だけでは資産は守れない。マンション住民120世帯の合意をスムーズに引き出した、修繕積立金運用の新常識
URL:https://prtimes.jp/story/detail/arlnnEIWW7B - 2024年12月17日:Fundsがマンションの修繕積立金不足問題解決に向けて新たな運用商品「Funds for マンション修繕積立金 応援パック」をリリース
URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000202.000023781.html
※本記事は、取材および公開情報をもとに構成している。事実関係や固有情報については、公開情報を参照のうえ確認した。