本業を手放さずに事業づくりへ踏み出したい社会人は多いが、「仲間」と「時間」が足りない――。
そうした起業家予備軍のジレンマに正面から向き合う共同創業者マッチングアプリ「Nakamar(ナカマー)」が、メタルモ株式会社から正式リリースされた。
本記事では、プレスリリースの内容をもとに、ZEROICHI編集部が、「なぜ今このサービスなのか」という観点から注目点をまとめるものである。
1.背景──「志は高い」が、仲間と時間が足りない起業家予備軍の現実
働き方改革や副業解禁の流れの中で、「いつかは自分の事業を立ち上げたい」と考える社会人・専門職は確実に増えている。高いスキルや現場経験を持ち、マーケティング、開発、企画などの実務に精通した人材であっても、「本業を辞める」という大きな決断に踏み切れないケースは少なくない。
多くの人にとって最大のハードルとなるのは、「生活の安定を守りながら、どこまでリスクを取れるか」という点である。収入が途切れるリスク、本業での評価低下の懸念、家族への説明責任など、起業にまつわる判断は人生単位の重みを持つ。その一方で、起業初期の立ち上げをともに担う“人的リソース”を個人で確保することは難しく、アイデアや熱量があっても一歩目が出ないまま時間だけが過ぎていくという構図がある。
従来のビジネスマッチングサービスは、この層のニーズを十分には捉えきれていない。短期案件の受発注に特化した業務委託マッチングや副業仲介サービスは、「タスクをこなして報酬を得る」構造になっており、事業初期の負担やリスクを分かち合いながら、泥臭く立ち上げを進める“共同創業者”を見つける場にはなりにくいのである。
こうした状況のもと、「情熱は、それを共有する仲間がいて初めて実現力となる」とする思想から生まれたのが、今回の「Nakamar」である。
2.サービス概要──「辞めずに起業」を支える共同創業者マッチングアプリ
「Nakamar(ナカマー)」は、本業を続けながら共同創業に挑みたい社会人・プロフェッショナルを対象としたマッチングアプリである。ユーザーが登録するのは、職種やスキルといった表面的な条件だけではない。事業ビジョン、解決したい社会課題、キャリアの志向性、行動規範といった「志(こころざし)」の情報を重視し、それらをもとにマッチングが行われる設計である。
特徴的なのは、「本業を続けながら、共同創業の仲間を見つける」という前提に立っている点である。すぐにフルコミットするのか、夜や週末から段階的に参画するのかといったリスク許容度の違いまで含めてマッチングすることで、「辞めるか、辞めないか」という二択ではなく、「まず試す」「段階的に深める」という中間の選択肢を用意している。
公式サイト(https://www.nakamar.jp/)から利用が可能であり、スタートアップの立ち上げを志す個人同士の新しい接点となることをめざしている。
3.「Nakamar」の3つの特徴
3-1.AIレコメンドによる「志向性」マッチング
Nakamarの中核には、ユーザーの志向性をもとにしたAIレコメンド機能がある。従来の職種・キーワード検索に対し、次のような情報を総合的に分析することで、熱量の近い相手を日々レコメンドする仕組みである。
- 事業ビジョンの相互理解度:どの社会課題を解決したいのか、プロダクトを通じてどのような未来像を描いているのか。
- キャリアパスの志向性:今すぐにフルコミットしたいのか、本業を続けつつ段階的に関わりたいのか、といったリスク許容度と時間の使い方。
- 行動規範(Work Style):意思決定のスピード、フィードバックの受け止め方、トラブル時のスタンスなど、困難な局面で現れる価値観。
リリースでは、従来サービスの「Webデザイナーを探している」といったスキルベースの検索に対し、Nakamarでは「独立を見据えた社会人のアイデアに共感し、毎週土曜午前に一定の時間をコミットできるエンジニア」といった、温度感や時間の使い方まで含めたマッチングのイメージが示されている。ここに、「運命共同体となり得る仲間」を探すというコンセプトが体現されている。
3-2.「副業」ではなく、共同創業に向けたテスト期間
2つ目の特徴は、いわゆるタスク型の「副業」とは異なる、共同創業者候補としての参画を前提とした「テスト期間」の位置づけである。
一般的な業務委託型の副業は、時間単位・タスク単位で報酬を得る構造であり、成果物の納品とともに関係は完結しがちである。一方、Nakamarにおけるプロジェクト参画は、将来的な共同創業者や役員ポジションを見据えた試行段階として設計されている。初期から高額な役員報酬を支払うのではなく、将来的なエクイティやストックオプションなどを視野に入れつつ、まずは「一緒にやってみる」期間を確保するイメージである。
これにより、「いきなり出資や正式契約を結ぶのは重いが、熱量の高いチームに本気で関わってみたい」という社会人にとって、リスクを抑えながら踏み出せる選択肢が生まれる。
3-3.「仲間」「資金」「経験」をワンスポットで
3つ目の特徴は、スタートアップ初期に必要な「仲間(マン)」「資金(マネー)」「経験(メンターシップ)」の3要素を、1つのプラットフォーム上でカバーしようとしている点である。
リリースでは、従来の選択肢として、仲間探しにはSNSやビジネスマッチングサービス、複業機会には副業エージェントやクラウドソーシング、資金や経験には投資家コミュニティやメンターサービスなどが挙げられている。そのうえで、Nakamarは以下のような解決策を提示している。
- 仲間集め:志向性マッチングによる共同創業者候補探し
- 複業/スキル活用:熱量の高い初期プロジェクトへの参画機会
- 資金/経験:AIレコメンドを活かした、メンターや投資家との接点創出
特に資金・経験の面では、提携するシード投資家や起業家コミュニティに対し、Nakamar上で「共同創業テスト期間」を終えたチームを優先的に紹介する仕組みを構築している点が特徴である。これにより、「どこで誰に相談すべきか」という情報探索コストを下げ、事業検証に集中しやすい環境づくりを意図している。
4.ターゲット像と活用シーン
4-1.ターゲット:明確なビジョンを持つ社会人・プロフェッショナル
Nakamarの主なターゲットは、明確なビジョンやアイデアを持ちながらも、人的リソース不足や本業を辞めるリスクによって最初の一歩を踏み出せずにいる社会人層である。週末や平日夜の時間を活用し、「週末起業を本格化させたい」「複業から将来の独立につなげたい」と考える人々のニーズに特化している。
4-2.活用シーン例
リリースでは、想定される活用シーンとして、次のような具体例が挙げられている。
- 専門スキルはあるが、仲間と機会がないケース
大手企業でマーケティング経験を積んだ社会人が、自らの関心領域と合致する新規事業チームと出会い、週5時間のコミットからスタート。3カ月のテスト期間を経て、共同創業者として本格参画する。
- アイデアはあるが、技術力が足りないケース
事業アイデアを持つ企画職の社会人が、副業からの独立を視野に入れたエンジニアとマッチングし、週末の作業でプロトタイプを開発。初期段階からサービスの形を具体化していく。
- ビジネス経験はあるが、法務・財務が弱いケース
新規事業立ち上げ経験を持つビジネスリーダーが、弁護士や公認会計士などの専門家と「将来のエクイティ提供」を前提にチームを組み、初期から契約や資本政策の土台を整える。
これらの例は、いずれも「本業をすぐには手放さない」という前提を維持しつつ、将来の共同創業につながる関係性を試行できる点に共通点がある。
5.ZEROICHI編集部が注目したポイント
5-1.「辞めずに起業」という現実的な問いへの正面回答
ZEROICHI編集部がまず注目したのは、「辞めずに起業」というフレーズである。起業に関する情報発信は多いが、その多くは「思い切って飛び込むべきかどうか」という二項対立に収束しがちである。一方、本リリースは、「辞めない」「段階的」「テスト期間」という現実的な選択肢を前提に設計されたサービスである点が特徴的である。
起業家予備軍の多くが抱えるのは、アイデアや能力の不足ではなく、「どのタイミングで、どこまでリスクを取るべきか」という具体的な意思決定の悩みである。そうした層に対し、いきなりの独立ではなく「共に試す」場を用意するアプローチは、今後のスタートアップ人材供給にも影響を与え得ると考えられる。
5-2.スキルではなく「行動規範」でつなぐ設計思想
2つ目の注目点は、「ビジョン」と「行動規範」を重視したマッチング思想である。スタートアップ初期においては、スキルや肩書き以上に、「困難な状況でどう決断し、どう振る舞うか」という価値観の近さが、事業継続の成否を左右することが多い。
Nakamarは、意思決定のスピードやトラブル時のスタンスといった行動規範をマッチング要素として組み込むことで、「うまくいっているとき」だけでなく「うまくいかないとき」にも一緒にいられるかどうかに着目している。この視点は、単なるマッチングサービスにとどまらず、「起業チームの崩壊リスク」を構造的に下げようとする試みとも解釈できる。
5-3.起業エコシステムの“前段階”を埋めるインフラ可能性
3つ目として、本サービスが「仲間」「資金」「経験」を一体で扱おうとしている点も見逃せない。資金調達やメンタリングのプラットフォームは既に複数存在するが、その前段階にあたる「チームの仮組み」や「共同創業候補と試す場」は、体系的に整備されているとは言いがたい。
Nakamarがこの“前段階”に特化し、共同創業テスト期間を経たチームを投資家やメンターに結びつける流れが確立すれば、日本の起業エコシステム全体の底上げにつながる可能性がある。単なるアプリという枠を超え、「起業家予備軍のインフラ」として機能するポテンシャルに期待したい。
6.今後の展望──「くすぶる志」を社会のエネルギーへ
メタルモ株式会社は、「Nakamar」を通じて、日本各地でくすぶっている熱い志を持つ人々の出会いを加速させ、イノベーションが次々と生まれる社会の実現に貢献していくと述べている。
起業という言葉は華やかに語られがちだが、その実態は、限られた時間とリソースの中で積み重ねる地道な試行錯誤である。本業を続けながら一歩を踏み出す人々にとって、「志向性が近い仲間」「納得感のあるリスクの取り方」「経験豊富な支援者」との接点をどう確保するかは、今後ますます重要なテーマになっていくだろう。
「辞めずに起業」というキーワードとともに正式リリースされたNakamarが、どのようなチームづくりや事業創出の事例を生み出していくのか。ZEROICHI編集部としても、今後の動向を継続的に追っていきたい。
7.サービス・運営会社情報
- サービス名:Nakamar(ナカマー)
- 提供形態:共同創業者マッチングアプリ
- 公式サイト:https://www.nakamar.jp/
- 運営会社:メタルモ株式会社
- 所在地:東京都中央区銀座1-12-4 N&E BLD. 7階
- 代表者:須江幸輝
- 設立:2025年5月
■原文リリース
原文リリース発表日付:2025年12月8日「〖志は高いが「仲間」と「時間」が足りない起業家へ〗『辞めずに起業』を実現。共同創業者マッチングアプリ『Nakamar(ナカマー)』正式リリース」
原文リリースのURL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000172991.html
※本記事は、上記プレスリリースから一部編集・要約して掲載している。誤解や偏りが生じる可能性のある表現については、原文の意図を損なわない範囲で表現を調整している。