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倒産危機にあった老舗旅館を ITで立ち直らせた! 【『陣屋』社長・宮﨑富夫が語る 旅館の未来とは? その4】

堀江貴文氏は9月27日、陣屋社長 (当時) の宮﨑富夫氏を取材。「旅館」の未来などについて話を聞いた。(初回配信日:2016年10月8日)

将来的には女将の仕事をAIにやらせたい

堀江 以前、陣屋さんには120人の従業員がいたと言ってましたが、今は何名くらいになったんですか?

宮﨑 50人です。

堀江 それでも50人はいるんですか?

宮﨑 それは宿泊だけでなく、日帰りもやってたり、ブライダルもあったりするので、やはり50名は必要なんです。

堀江 日帰りって、どういう利用の仕方なんですか?

宮﨑 接待とか、結納とか、あとは日帰り温泉のお客様とか……。

堀江 食事だけとかも?

宮﨑 そうですね。実は、婚礼関係とか日帰り温泉とか、お食事の売り上げが半分くらいなんです。

堀江 泊まらないで、ご飯食べて帰るだけ?

宮﨑 はい。ですから、料亭というか、日帰り施設的な面もありますね。

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堀江 じゃあ、食事には自信があるんですね。

宮﨑 それは、もちろん一番力を入れています。もともと建物に投資できなかったので、料理の質を上げて、単価を上げるということを最初にやりましたから。

堀江 手っ取り早く業績を上げやすいのは、確かに料理ですからね。すぐに変えることができるし、効果も出やすい。

宮﨑 僕が入った時、3000円とか4000円の料理がメインだったんですけど、だんだん質を上げていって、今は売れ筋が1万2000円とか1万6000円になりました。

堀江 じゃあ、だいぶ客単価は上がったんですね。

宮﨑 上がりましたね。

堀江 でも、食事って本当に大事ですよね。僕、たまに講演とかで地方の旅館に泊まることがあるんですけど、あいかわらず古い会席料理みたいなのを出し続けているところって多いんですよ。

宮﨑 ああ。宴会場についた時には、もう料理が配膳されていて、鍋に火をつけるだけみたいな。

堀江 そうそう。伊勢エビのグラタンみたいなやつが、ちょっと冷めちゃってるみたいな(笑)。

宮﨑 うちは、“旅館だけれども都内の有名料亭以上の料理を出そう”ということを目標にして、料理長と一緒に味にはこだわっています。

堀江 こういう旅館が増えてくると利用者としては助かるんですけどね。

宮﨑 でも、無理せずに少しずつ広がってくれればいいかなと思っています。焦って一気に増やしても、サポートが追いつかないとクオリティが下がりますから。

堀江 旅館のIT化の流れは本当に興味深いですね。

宮﨑 将来的には、今、女将がやっている部屋割りとか、シフトとかをAI(人工知能)でできればと思っています。例えば、このお客様は小さいお子さんがいらっしゃるので、ここのグループとは部屋を離そうとか、このお客様は脚がお悪いので1階の部屋にしようとか。この日は予約が増えたから、このエリアを見る人を増やそうとか、まだまだ人が判断することが多いので、それをAIでできるようにしたいんです。そのためには、たくさんの情報をクラウドに集めなくてはいけない。そうすれば、人が辞めてもノウハウは継続していけるので。そういうことに力を入れていこうと思っています。

堀江 そうですね。ぜひ、頑張ってください。本日はありがとうございました。

宮﨑 いえ、こちらこそありがとうございました。

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その1はこちら

Photograph/Edit=柚木大介 Text=村上隆保

宮﨑富夫 Tomio Miyazaki

神奈川県秦野市・鶴巻温泉『元湯陣屋』4代目社長(当時)。1977年生まれ。慶應義塾大学大学院理工学部修士課程修了。2002年、本田技術研究所に入所に、次世代燃料電池の開発に携わる。2009年、陣屋の代表取締役社長就任。2012年、陣屋コネクトを設立。映画監督の宮崎駿氏は叔父にあたる