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「アンモニアの常圧合成が農業を救う⁉︎」 【東工大・細野秀雄教授が語る 材料工学の現在と未来 その1】

堀江貴文氏は12月19日、東工大の細野秀雄氏を取材。「材料工学」の現在と未来などについて話を聞いた。(初回配信日:2016年12月19日)

「ゴリラガラス」は約50年前にできていた!

堀江貴文(以下、堀江) 細野先生は“材料工学”がご専門ですが、どういう流れでそうなったんですか?

細野秀雄(以下、細野) 僕は、もともと物質の研究が好きだったということもあるんですが、大学で博士課程を終了した後に名古屋工業大学の材料工学科というところで助手として働き始めた。それが材料工学をやることになった直接の理由です。

堀江 へー。

細野 それに“材料”って、なんか面白そうじゃないですか。

堀江 そうですね(笑)。

細野 当時、僕の親分(阿部良弘教授)が「曲がるセラミックス」を作っていたんです。これが非常に画期的な材料で大勢の人が説明を聞きにやって来た。研究室の廊下に行列ができるくらいでしたから(笑)。その時に「世の中の役立つものを作ると、これだけインパクトがあるんだ」って興奮したのを覚えています。

堀江 そもそも、なんで曲がるセラミックスなんて作ろうと思ったんですかね?

細野 研究者には2つのパターンに分かれていて、ひとつは「今あるものをもっと深くほり下げよう」という人。もうひとつが「今までにないものを作ろう」「できないと言われているものを作ろう」という人。

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堀江 はい。

細野 新しいジャンルを作ろうというのと同じですよ。

堀江 でも、例えば曲がるセラミックスを作ろうというのは、どういう発想から生まれるんですか?

細野 それは「セラミックスって曲がらないから、曲がるものを作ってやろう」っていう単純な発想ですよ。

堀江 なるほど。

細野 セラミックスって、ポキッと折れるじゃないですか。でも、例えば竹って折れないですよね。

堀江 はい。繊維があるからですよね。

細野 そう。だから、セラミックスも繊維のものを作れば、やっぱり曲がるわけです。それから『パイレックス』(耐熱ガラス/ホウケイ酸ガラスの一種)ってありますよね?

堀江 パイレックス?

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細野 若い人は知らないかもしれないけど、昔はガラスのコップに熱いお湯を入れるとパリッと割れたんです。しかし、パイレックスなどの耐熱ガラスが普及してからは割れなくなった。それは急激に熱しても膨張しにくいガラスになったからです。

堀江 なるほど。低膨張なんですね。

細野 今、iPhoneなどで使っているのは『ゴリラガラス』ですけど、これは割れにくい。

堀江 ゴリラガラスっていつ頃できたんですか?

細野 ゴリラガラスのような強化ガラスは、50年くらい前にできているんですよ。だから、すごく古い。

堀江 そんなに古いんだ。

細野 そう。むちゃくちゃ古いんだけれども、これまであまり需要がなかった。

堀江 へー、そうだったんですか。

その2に続く

細野秀雄 Hideo Hosono

東京工業大学教授、工学博士。1953年生まれ。埼玉県出身。東京都立大学大学院工学部博士課程終了。名古屋工業大学助教授などを経て、1999年に東京工業大学教授に。現在は東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所教授、元素戦略研究センター長。ノーベル物理学賞の有力候補といわれている。