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無担保・無保証の1.8億円が示すもの―—外国人材紹介のLivCoが「販路拡大」と「DX・AI推進」に踏み込む理由

株式会社LivCo(東京都新宿区 代表取締役CEO 佐々翔太郎)は、みずほ銀行・りそな銀行・日本政策金融公庫から、デットファイナンスにより総額1.8億円の資金調達を実施した。借入は長期約定返済(10年)に加え、当座貸越、資本性ローンを含み、無担保・無保証を含む形態であるという。累計調達額は3.4億円に到達し、資金使途として販路拡大、社内DX・AI推進、組織拡大・採用を掲げている。

※本稿は、公開情報をもとに編集部が要点を整理し再構成したものであり、独自取材によるものではない

人手不足は「採用難」から「供給構造」の問題へ

国内の人手不足は、特定の業界の採用難にとどまらず、供給構造そのものの課題として顕在化している。受け皿となる制度も拡張フェーズに入り、政府は「特定技能」で5年間に82万人の受入れを見込む方針が報じられている。
また、技能実習制度を巡っては、批判を踏まえた見直しが進み、新たな在留資格(育成就労)へ移行する議論も進行してきた。

こうした動きが示すのは、外国人雇用が「例外的な補充策」から「産業を維持する前提」に近づいているという現実である。だからこそ、現場は“人を集める”だけでなく、“定着し働き続けられる設計”を求め始めている。

LivCoが狙うのは「紹介」よりも、外国人就労のインフラ化である

LivCoは自社を、外国人特化のHRプラットフォーム事業者(特定技能外国人紹介事業)として位置付けるだけでなく、教育・不動産・通信・生活サポートなど複数領域で新規事業を連続的に立ち上げる「外国人特化のインフラ企業」を標榜する。

同社の説明では、創業3年半で500社超の法人に、1,000人超の特定技能外国人を紹介してきたとしており、対象業種は外食、介護、宿泊、農業、食品製造などに広がる。国籍はインドネシア、ミャンマー、ベトナムが中心という。
さらに、在日外国人向けの就職SNSメディアとインドネシア現地日本語学校の運営を軸に、求職者集客力を強みとして挙げ、定着支援により離職率12%と説明している。

編集部が注目するのは、ここが単なる“採用の外注”ではなく、採用前後(教育・住まい・生活支援)まで含む「就労体験の設計」に踏み込もうとしている点である。人材不足の解決は、採用時点のマッチングだけでは完結しない。働く・暮らす・学ぶが連結したとき、初めて企業側の稼働が安定し、本人側の生活も継続可能になる。その連結を、事業として束ねにいく動きに見える。

「無担保の銀行融資」が映す、事業の成熟度と期待値

今回の調達はエクイティではなくデットであり、希薄化を伴う新株予約権付与などはないとされる。
加えて、無担保・無保証を含む形で、みずほ銀行・りそな銀行・日本政策金融公庫という金融機関が並ぶ構図は、スタートアップの資金調達として見ても象徴的である。

なぜ象徴的なのか。デットは「返済」が前提であり、金融機関は事業の継続性や収益の確度をより厳しく見る。ここで評価されやすいのは、短期の話題性ではなく、案件の反復性、解約・離脱の抑制、運用オペレーションの再現性といった“積み上がる構造”である。
LivCoが資金使途として掲げたのが、販路拡大と同時に「社内DX・AI推進」「マッチング精度向上」である点は、まさにこの“積み上げ”を押し上げるための投資に見える。

DX・AI推進は「効率化」ではなく、現場摩擦を減らす投資である

外国人材紹介は、書類、在留資格、言語、生活立ち上げ、受入れ体制、定着支援まで工程が多い。工程が多いほど、属人化と分断が起き、トラブル時に責任所在が曖昧になりやすい。
ここにDX・AIを入れる価値は、単なる作業削減ではなく、「情報の断絶を埋める」ことにある。例えば、候補者情報、受入れ企業側の要件、支援内容、面談ログ、課題の兆候などが分散していると、マッチング精度も定着率も上がらない。逆に言えば、データが連結されれば、ミスマッチは減り、現場の負荷も下がる。

LivCoは、社内DX・AI推進を資金使途の中心に据え、「業務効率化」と「マッチング精度向上」を明記している。
編集部としては、ここに“人材紹介の次”があると見る。人手不足の時代に伸びるのは、紹介そのものではなく、紹介後の稼働を安定させる運用能力である。運用能力を再現可能にするには、情報の一元化と意思決定の標準化が必要であり、その基盤としてDX・AIが位置付けられている。

市場が伸びるほど、問われるのは「持続可能性」と「透明性」

外国人雇用を巡る環境は、需要の拡大と同時に、制度変更、監督強化、受入れ企業側のコンプライアンス要求の高まりが並走する。制度は拡張するが、雑に拡張すれば摩擦が増える。現場で起こり得る問題は、労務・生活・文化の差異に起因するミスコミュニケーションから、支援体制の不足、定着不全まで幅広い。

だからこそ、サービス提供側には「定着支援」の設計が不可欠になる。LivCoが“コンサルティング型の定着支援”を強みとして言及しているのは、その要請に沿うものだ。

伸びる市場ほど、単なる規模競争ではなく、透明性・再現性・説明責任のある運用が勝ち筋になる。今回のデット調達は、その運用を厚くするための資金として読むのが自然である。

会社概要

会社名:株式会社LivCo
所在地:東京都新宿区西新宿5-10-4 YSビル
代表者:代表取締役CEO 佐々翔太郎
設立:2021年7月
従業員:50名
事業内容:
・グローバルHRプラットフォーム事業
・外国人向けライフサポート事業
・外国人向け不動産事業
・外国人向けメディアプラットフォーム事業
・インドネシア人材育成事業

公式サイト:https://livco.inc

ZEROICHI編集部の注目点

本件を取り上げる理由は、「外国人材紹介」そのものより、“労働力の流通を、持続可能なインフラへ変える局面”が見え始めているからである。

  • 無担保・無保証を含むデットで1.8億円という形は、事業の反復性・運用の確度が評価されている可能性を示唆する。
  • 資金使途が、販路拡大と同時にDX・AIによる精度と運用の強化に置かれている点は、短期拡大より“継続稼働”を優先する意思に見える。
  • 教育・不動産・生活支援まで含む複合展開は、採用の前後工程を含めた「就労体験の設計」に近い。
  • 制度拡張(特定技能の受入れ見込み拡大)と、技能実習の見直し議論が進む中で、運用の質が市場価値になるタイミングに入っている。 

要するに、LivCoの資金調達は「資金が入った」というニュースではない。人手不足という構造課題に対し、紹介・定着・生活・学習を結び直す“実装”へ踏み込む合図である。編集部は、その現在地を記録すべきタイミングだと判断した。

■原文リリース(参照)

原文リリース発表日付:2026年1月8日
タイトル:外国人紹介のLivCo、みずほ銀行・りそな銀行らからデットファイナンスによる総額1.8億円の資金調達を実施。販路拡大とDX・AI推進を強化。累計調達額は3.4億円に。
原文リリースのURL:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000089895.html 

※本記事は、原文から一部編集・要約して掲載しています。
誤解や偏りが生じる可能性のある表現については、原文の意味を損なわない範囲で調整しています。