「現地に行くこと」が前提だった行政業務
LAND INSIGHT株式会社(福島県南相馬市 代表取締役社長 藤田誠)は、内閣府主催「第7回 宇宙開発利用大賞」において農林水産大臣賞を受賞した。対象となったのは、南相馬市との共創により開発された農政の現地調査DX支援サービス「圃場DX」である。
農業行政において、農地の状況確認は長年、現地訪問を前提とした業務として行われてきた。自治体職員が圃場へ赴き、作付け状況や利用状況を確認する作業は、制度運用の基盤である一方、人的負担の大きい業務でもあった。
この確認作業は、正確性の担保という観点から不可欠とされてきたが、広域に分散する農地を対象とする自治体では、移動時間や天候条件に左右される側面も大きい。制度運用の重要性と業務負荷の高さが、同時に存在していた領域といえる。
衛星データによる「現地」の再定義
「圃場DX」は、人工衛星データをAIで解析することにより、農地の現地確認業務を支援するサービスである。これまで目視を中心としてきた確認作業を、データ解析により代替・補完することを目的としている。
現地に赴かずとも同等の確認を行える環境を整備することで、確認業務の効率化と職員の負担軽減を図る設計となっている。結果として創出される時間を、農業振興施策の検討など、より付加価値の高い業務へ振り向けることを想定している。
本取り組みは、国が進めるアナログ規制見直しの流れの中で評価され、全国の自治体へ展開が広がっている。
行政DXが意味するもの
行政のデジタル化は、単に作業を自動化することにとどまらない。制度の前提そのものを再設計する側面を持つ。「現地で確認する」という従来の原則は、技術的制約の中で合理性を持っていたが、データ取得手段の変化により再検討が可能となった。
圃場DXの特徴は、既存業務を置き換えるというより、確認方法の選択肢を拡張する点にある。現地訪問が必要な場面を残しつつ、全件訪問を前提としない運用を可能にすることで、制度運用の柔軟性を高める方向性を示している。
共創による実装プロセス
同サービスは、南相馬市との共同取り組みを通じて開発が進められてきた。行政現場の運用を踏まえた調整が行われた点は、単なる技術導入ではなく運用設計の側面を持つことを示している。
現場で実際に使われることを前提とした設計は、行政分野におけるDXの成否を左右する要素の一つである。制度と技術の双方を調整しながら実装された点が、今回の評価につながったと考えられる。
受賞概要
賞名:第7回 宇宙開発利用大賞 農林水産大臣賞
受賞事例名:南相馬市との共創による農政の現地調査DX支援サービス「圃場DX」の開発
■第7回 宇宙開発利用大賞
https://s-riyoutaishou7.jp
■LAND INSIGHT株式会社
https://landinsight.space/
ZEROICHI編集部が注目した理由
ZEROICHI編集部が本件に注目した理由は、宇宙データ活用という先端領域の話題でありながら、焦点が「行政の働き方」に置かれている点にある。
宇宙技術の社会実装はしばしば産業応用として語られるが、本事例は行政業務の運用改善という具体的な現場課題に結びついている。技術導入が目的化するのではなく、制度運用の効率と持続性の両立を志向している点が特徴的である。
また、現地調査の効率化は単なる負担軽減にとどまらず、行政リソースの再配分という観点を持つ。創出された時間を政策立案へ振り向けるという考え方は、DXが組織機能の再設計に及ぶ可能性を示している。
宇宙技術の社会実装という視点
宇宙関連技術はしばしば遠い領域のものとして認識されがちである。しかし本事例では、農業行政という身近な領域に適用されている。これは、宇宙開発の成果が社会基盤の運用に組み込まれていく過程の一端ともいえる。
行政の効率化と地域課題への対応を同時に進める取り組みとして、今後の展開が注目される領域である。
■原文リリース(参照)
原文リリース発表日付:2026年2月5日
タイトル:LAND INSIGHT、第7回宇宙開発利用大賞「農林水産大臣賞」を受賞
原文リリースのURL:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000145.000017155.html
※本記事は、原文から一部編集・要約して掲載しています。
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