WITH

「太陽系の近くに生命居住可能惑星はある」 【天文学者・成田憲保氏が語る 系外惑星観測の未来とは?その2】

堀江貴文氏は11月9日、天文学者の成田憲保氏を取材。「系外惑星観測」の未来などについて話を聞いた。(初回配信日:2015年11月9日)

宇宙望遠鏡「テス」の打ち上げ1年目で、生命居住可能惑星が見つかることも

成田 天文学の分野では、毎年のように“地球に似た惑星”が見つかっていて、2017年にもNASAが新しい宇宙望遠鏡を打ち上げるんですよ。

堀江 なんていう名前でしたっけ?

成田 『TESS(テス)』です。

堀江 そうだ、テスだ。

成田 テスが打ち上がると、太陽系にかなり近いところにある生命居住可能な惑星が見つかるかもしれないんです。今まで発見されているのは、遠くて……。数百光年先とかなんですよ。

堀江 ケプラー(宇宙望遠鏡)が見つけてるやつですよね。

成田 はい。

堀江 ケプラーとテスの違いっていうのは?

成田 ケプラーは観測視野が10度×10度くらいで、正方形の領域をずっと見続けているんです。同じ視野を4年以上観測していました。テスは24度×96度の長方形の領域を観測する。

堀江 広い!

成田 すごい広いんです。しかも、27日ごとに少しずつ領域を変えていって、2年間でほぼ全天を観測できる。全天を観測するためにひとつの領域の観測時間が短いわけで、だから近いところにある惑星しか見つけられない。

堀江 それは「トランジット法」で見つけるんですか?(編集部注:トランジット法は、惑星が主星の前を通る時に主星が減光することで、その惑星を発見する方法)

DSC_9941

成田 はい。テスだと太陽系の近くにある生命居住可能惑星を10個から20個くらいは発見できるだろうと言われています。

堀江 考えてみれば当たり前のことですけど、ほとんどの恒星に惑星ってあるんですよね。

成田 あるはずです。今のところわかっているだけでも、数十%の割合で生命居住可能領域(ハビタブルゾーン)に惑星があるんですよ。ただ、それがまだ見つけられていないんです。

堀江 見つけるためには、トランジット法くらいしかない?

成田 トランジット法と「視線速度法」というのがあります。視線速度法というのは、惑星が公転しているとその中心にある星が惑星の重力によって微妙に揺さぶられるという……。

堀江 「ドップラーシフト法」ですか?

成田 そうです。ですから、トランジット法とドップラーシフト法を使って、太陽系に近い低温度星の生命居住可能惑星を探すということが、これから5年後、10年後の研究テーマになるはずです。そして、その先にあるのが発見された惑星をTMT(Thirty Meter Telescope/口径30mの光学赤外線・次世代超大型望遠鏡)などで観測することです。

堀江 この分野って、この10年くらいでワーっと盛り上がってきたじゃないですか。それまでは何で盛り上がらなかったんですか?

成田 「技術が追いついていなかった」というのが大きな理由でしょうね。20年くらい前に初めて太陽系外惑星が発見されたんですよ。それまでは系外惑星を発見できるような技術レベルに達していなかった。それが、最近は系外惑星の中で地球と似たような惑星を発見できるようになったんです。だから、今度は、その地球と似たような惑星の性質を調べようとしているわけです。

堀江 それをTMTとかでやろうとしているわけですね。

成田 そうですね。TMT以外にも、去年、僕たちのチームが岡山県に作った「MuSCAT」(マスカット/主に太陽系外惑星の大気を観測するための装置)というのがあります。ケプラーは今「K2」という観測をやっていて、K2とテスで発見された惑星の中から「これだ」というものをマスカットで調べようと思っています。

堀江 2017年に打ち上げるテスの成果が出始めるのは、その5年後くらいですか?

DSC_9944

その3に続く

この続きはメルマガで全文ご覧いただけます。登録はコチラ

Photograph/Edit=柚木大介 Text=村上隆保

成田憲保(Norio Narita)

天文学者、アストロバイオロジーセンター特任助教(当時)。1981年生まれ。千葉県出身。東京大学大学院博士課程修了後、日本学術振興特別研究員、国立天文台研究員を経て、国立天文台特任助教に。2015年から現職。専門分野は太陽系外惑星の観測と装置開発。太陽以外の恒星にある惑星がその親星の前を通過する食の現象を用いて、惑星の大気や起源を調べている。