堀江貴文氏は11月9日、天文学者の成田憲保氏を取材。「系外惑星観測」の未来などについて話を聞いた。(初回配信日:2015年11月9日)
銀河系の中に第2の地球と呼べるものは、数百億個のレベルで存在する
堀江 TMTはいつできるんでしたっけ?
成田 2024年稼動の予定です。でも、2018年からテスのデータが出始めて、それをフォローアップして、それが惑星であることを確認する。そして、「すばる望遠鏡」(国立天文台ハワイ観測所にある大型光学赤外線望遠鏡)で、その惑星の大気や質量を調べたりできれば、TMTが稼動した時にイニシアチブが取れると思うんです。
堀江 すばる望遠鏡で大気の組織までわかるんですか?
成田 細かい組織まではわからないと思います。TMTでも難しい。例えば「水素の大気をまとっている」とかなどは、すばる望遠鏡でもわかる。ただ、細かい「二酸化炭素」とか「酸素」とか「メタン」というやつまで見ようとすると、TMTの次世代の装置が必要になってきます。それは2030年とかにならないと登場しないでしょうね。
堀江 結構、先ですね。
成田 結構、先なんです(笑)。
堀江 でも、近くの星であれば観測しやすいんですよね。
成田 近くであればあるほど観測しやすい。
堀江 だとしたら、もっと早くわかる可能性もありますよね。
成田 そうですね。
堀江 実際、近くに恒星系ってありますよね。
成田 あります。非常に多くあります。
堀江 ということは、惑星もある。
成田 あると思います。見つかってないだけで……。
堀江 「シリウス(太陽を除き地球から見える最も明るい恒星)」とか「アルファケンタウリ(銀河系の中で最も太陽系に近い恒星)」とか……。
成田 アルファケンタウリにはあると言われていますが、「あれはノイズじゃないの?」という人もいて、まだハッキリしていないんですよね。
堀江 例えば「赤色矮星」とか「褐色矮星」って、惑星があると思いますか?
成田 思います。実は、太陽より赤色矮星の方がハビタブルプラネット(生命居住可能星)の存在確率が多いんじゃないかと言われているんです。
堀江 そうなんですか?
成田 宇宙の大多数の星は赤色矮星なので、そうなると銀河系の中に第2の地球と呼べるものが、本当に数百億個のレベルで存在するんじゃないかと。
堀江 赤色矮星って、核融合はできるんでしたっけ?
成田 できます。赤色矮星と褐色矮星の差は、水素で核融合するかどうかなんです。赤色矮星は水素でできるんですけど、褐色矮星はできない。重水素でしか核融合できないんです。
堀江 褐色矮星には、惑星はあるんですか?
成田 褐色矮星からずっと離れたところには発見されていますが、近いところは今、探されているところです。
堀江 ハビタブルゾーンは?
成田 絶対にあるはずです。どれだけ暮らしやすい環境かはわからないですけど……。
堀江 赤色矮星とか褐色矮星って、もっと近いところで発見される可能性はないんですか? 太陽系とか。
成田 褐色矮星はありえます。暗いので、見えてないだけかもしれませんから。
堀江 そうですよね、だいたい太陽系のことすらもわかってないですもんね。
成田 太陽系の外側の天体のことも、まだわかってないことが多いんです。
成田憲保(Norio Narita)
天文学者、アストロバイオロジーセンター特任助教(当時)。1981年生まれ。千葉県出身。東京大学大学院博士課程修了後、日本学術振興特別研究員、国立天文台研究員を経て、国立天文台特任助教に。2015年から現職。専門分野は太陽系外惑星の観測と装置開発。太陽以外の恒星にある惑星がその親星の前を通過する食の現象を用いて、惑星の大気や起源を調べている。