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「ロボットによる、安全でハイレベルな低侵襲手術を」 【リバーフィールド・原口大輔氏と東工大・只野耕太郎准教授が語る 手術支援ロボットの未来とは?その1】

堀江貴文氏は1月11日、リバーフィールドの原口大輔氏(当時)と東京工業大学の只野耕太郎氏を取材。「手術支援ロボット」の未来などについて話を聞いた。(初回配信日:2016年1月11日)

内視鏡手術時の医師に触感を与えたい

堀江貴文(以下、堀江) 『EMARO(Endoscope MAnipulator Robot・エマロ/内視鏡操作ロボット)』は、どんな製品なんですか?

原口大輔(以下、原口) 内視鏡手術をする時に、慣れていない助手が内視鏡を持っていると手ブレを起こしたり、執刀医の見たい場所が映し出されなかったりすることがあるんです。そこでロボットアームに内視鏡を持たせました。ロボットアームだと手ブレは起きませんし、執刀医の頭にジャイロセンサーがついていて顔を右に振ると画面が右に、左に振れば左に動くので、自分の見たい場所をストレスなく見ることができます。

堀江 これは“今までありそうで、なかった”製品なんですか?

只野耕太郎(以下、只野) いや、類似の装置はすでにありました。でも、それは電動モーターを使用したもので、ボタンを押したり、言葉で「ムーブレフト(左へ)」などと指示を出して内視鏡を操作していました。それに対してEMAROは、見たい方向に顔を向ければそのまま視野がシフトしますし、駆動に空気を使っているので非常に滑らかでやわらかい動きができるんです。

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堀江 なんで空気圧駆動でやろうと思ったんですか?

只野 最大の動機は“触感”です。現在のもの(EMARO)は内視鏡を持つだけのホルダータイプですが、次世代機には鉗子などの手術機器を備えて力覚フィードバックを実現したいと思っているからです。

堀江 力覚フィードバックは空気じゃないとできないんですか?

只野 一般的なロボットの場合、力をフィードバックするためには力覚センサーをつけますが、手術用のロボットは人間の体の中に入っていくので使用する前に装置を洗浄殺菌します。ひとつは、そうした処理に従来のセンサーが耐えられるかという問題があります。

堀江 ああ、なるほど。

只野 次にサイズ的な制約です。腹腔鏡手術をする場合、10mmくらいの穴に内視鏡を通すことになるので、そのサイズの力覚センサーを作ることが難しい。3つめは、手術では電気メスなどを頻繁に使うので、もし内視鏡に電流が流れ混んだ場合にセンサーとしてきちんと機能するかということ。こうした手術用ロボットならではの問題があるんです。そこで、それらの問題をクリアするために「空気圧でやろう」ということになりました。

堀江 内視鏡手術の時には、力覚フィードバックがあった方が絶対にいいですもんね。

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原口 そうですね。

堀江 でも、今はそれがなくても手術してるわけですよね。

原口 そうなんです。

只野 今、医師は見た目の変形具合などから、患部にどれくらいの力がかかっているかを推測して内視鏡手術を行なっています。ですから、たまに力を入れすぎて縫合中の糸が切れてしまうこともあるそうです。そうしたことをなくすためにも、力をフィードバックする機能は必要です。そこで、今、EMAROの次世代機として、鉗子などのツールを備えた手術支援ロボットを開発しているところです。

堀江 次世代機はコンパクトになっているとか、そういう違いもあるんですか?

原口 次世代機(ロボット鉗子システム)は、内視鏡に加えて鉗子も人間の手のように自由に動かせるものになっており、高機能で、医療機器としてクラスの高いシステムです。もちろんコンパクト化も目指しています。

その2に続く

原口大輔(Daisuke Haraguchi)

博士(工学)、リバーフィールド株式会社代表取締役(当時)。1980年生まれ。佐賀県出身。2013年、東京工業大学大学院博士後期課程修了後、東京工業大学精密工学研究所特任助教を経て、2015年、リバーフィールド株式会社代表取締役に就任。

只野耕太郎(Kotaro Tadano)

博士(工学)、東京工業大学精密工学研究所准教授。1980年生まれ。北海道出身。2007年、東京工業大学大学院博士後期課程修了。2008年、東京工業大学精密工学研究所助教に就任。2013年、現職に。