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投稿するだけで権利記録は残るのか。国産SNS「Writter」が実装したPicDNAの狙い

生成AIの普及に伴い、画像作品の権利管理を巡る環境は急速に変化している。従来の著作権表示や透かしだけでは対応しきれない課題が顕在化する中、権利情報の記録そのものを日常行動に組み込もうとする動きが出てきた。

こうした状況下で、新たなアプローチを提示したのが国産SNS「Writter」である。

株式会社GOLDENBEAM(神奈川県横浜市港北区 代表取締役 山田火星)は、同社が開発・運営するSNSアプリ「Writter」において、画像投稿と同時に権利記録を行う機能「ピクディー(PicDNA)」を実装したと発表した。

本機能は、電子透かしの刻印、権利者情報の紐づけ、投稿記録の保全を一体化した設計を特徴としている。本稿では、その技術的狙いと制度環境の文脈、そして今後の論点を整理する。

AI時代に顕在化した「画像の所在不明問題」

近年、クリエイターが直面している課題は大きく二つに整理できる。

一つは、生成AIの学習データとして画像が利用される可能性に関する問題である。各国で議論や訴訟が進む一方、技術的にAI学習を完全に制御する手段は限定的であると指摘されている。

もう一つは、2026年4月に運用開始予定の未管理著作物裁定制度への対応である。この制度では、著作権者に連絡がつかない作品について、一定の手続きを経て第三者利用が可能となる仕組みが整備される。

ここで重要になるのが、「権利者に連絡が取れる状態をどう担保するか」という論点である。画像そのものに権利者情報が紐づいていなければ、作品の所在が不明確になる可能性がある。

PicDNAは、この構造課題への対応を主眼に設計された機能である。

PicDNAの基本設計:刻印と記録の二層構造

2つの課題

PicDNAの特徴は、単一の技術に依存しない二層構造にある。

第一層は、画像への電子透かし刻印である。ユーザーが任意で機能を選択すると、画像内に不可視の電子透かしが埋め込まれる。刻印情報にはユーザー名や投稿日時などが含まれ、「NoAI」タグによってAI学習への不許諾意思を記録する仕様となっている。

第二層は、サーバー側でのハッシュ値保管である。SHA-256アルゴリズムによるハッシュ値を保存し、投稿記録ページを生成することで、タイムスタンプ付きの記録として保持する。

同社は、この二重構造により、画像単体の改変や圧縮が発生した場合でも、投稿事実を補完的に確認できる設計であるとしている。

既存の刻印技術が抱える「使われない問題」

画像の真正性や出所を示す技術自体は、C2PAなど既に複数存在している。しかし、実務上の課題として指摘されてきたのが「利用の定着」である。

専用ツールを用いた刻印作業は、クリエイターの日常フローに組み込まれにくい。結果として、技術が存在しても広範な運用には至らないケースが少なくなかった。

PicDNAは、この摩擦コストに着目し、「SNSに投稿する」という日常行動そのものに権利記録機能を組み込む設計を採った点が特徴である。

ユーザーは追加のツールを使うことなく、投稿時の操作のみで記録を残せるとされる。

「証明」ではなく「記録」と定義した理由

同社はPicDNAの機能範囲について、「著作権の帰属を法的に確定するものではない」と明確に位置づけている。

あくまで「いつ、誰が、この画像を投稿したか」という事実の記録を保全する仕組みであり、権利の最終的な判断は法的枠組みに委ねられる。

この点は、過度な機能期待による誤解を避ける設計意図として注目される。権利保護技術の領域では、機能の範囲と限界を明示する姿勢が、利用者の信頼形成に直結するためである。

未管理著作物裁定制度への対応意図

引用:未管理著作物制定制度

PicDNAの記録ページには、権利管理窓口への導線が設けられている。著作権侵害の報告、ライセンス相談、裁定制度に関する事前協議などを受け付ける構造である。

同社の説明によれば、これにより「権利者に連絡がつかない」という状態の発生を技術的に抑制することを狙っている。

もっとも、制度運用との実務的な整合性については、今後の運用実績の蓄積が一つの検証ポイントになると考えられる。

会社概要等

会社名:株式会社GOLDENBEAM
所在地:神奈川県横浜市港北区新横浜三丁目17番地12 アルファスペース新横浜ビステーション新横浜内204
代表取締役:山田火星
設立:2024年1月
特許:第7706820号

参照束

アプリ:Wiritter

ZEROICHI編集部の注目点:技術ではなく“行動設計”への転換

ZEROICHI編集部が本件に注目した最大の理由は、技術そのものよりも「使われ方の設計」に踏み込んでいる点である。

画像の権利保護技術は過去にも多数提案されてきたが、多くはクリエイター側に追加作業を要求する構造であった。その結果、理論上は有効でも、実務では普及しないというギャップが生じていた。

PicDNAは、この摩擦を解消するために、投稿行動と権利記録を一体化した点に特徴がある。

もし「最初に投稿する場所=権利記録が残る場所」という行動習慣が形成されれば、従来の権利管理フローに一定の変化をもたらす可能性がある。

今後の論点と展開可能性

同社は海外版の展開やAPI提供も視野に入れている。画像流通は国境を越えて行われるため、各国法制度との整合や、他プラットフォームとの相互運用性は今後の重要論点となる。

また、ネットワーク型サービスとしては、クリエイター側と閲覧側の双方でどこまで利用が広がるかが普及の鍵を握る可能性がある。

画像生成AIの進展、著作権制度の変化、プラットフォーム間競争が同時進行する現在、権利記録のインフラ設計はなお流動的な領域である。PicDNAの試みが実務レベルでどこまで定着するのか、今後の動向が注視される。

■原文リリース(参照)

2026年2月20日:【生成AI対策】SNSに投稿するだけであなたの画像の権利記録が残る。国産SNS『Writter』が「ピクディー(PicDNA)」を実装
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000135547.html

※本記事は、原文から一部編集・要約して掲載しています。
誤解や偏りが生じる可能性のある表現については、原文の意味を損なわない範囲で調整しています。