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「脂肪が作り出す酵素で、 老化に対抗することができる」 【ワシントン大・今井眞一郎教授が語る 「抗老化と長寿」研究の最前線 その4】

堀江貴文氏は7月26日、ワシントン大学の今井眞一郎教授を取材。抗老化と長寿などについて話を聞いた。老化に対抗するための酵素とは?(初回配信日:2017年8月7日)

数年以内に抗老化の商品が広く流通する

堀江 もうひとつ根本的な質問があるんですけど、生まれてからの人間の体内のNAD量はどんな感じになるんですか? 増えていくんですか? 変わらないんですか?

今井 それは非常に重要な問題で今、調べているところです。実は最近、面白い報告がありました。イタリアの研究グループが、人の母乳の中にNMNが大量に含まれているという論文を発表しました。ということは、新生児はNMNをおそらく母乳から採っているんです。

堀江 あー。

今井 ですから、母乳を飲むことによってNADの合成を一気に上げているというのが、ひとつの説明として考えられる。そうして成長していくうちに自分でNADを供給する能力を獲得するようになる、と。

堀江 ということは、人工的にNADの量を上げることもできるわけですよね。

今井 そうですね。NMNを供給することで、非常に顕著な抗老化作用があることが私たちの研究でわかってきましたから。

堀江 そのNMNは、いつ頃広く普及しそうなんでしょうか。

今井 たぶん、2、3年以内だと思います。

堀江 え、そうなんですか?

今井 はい。というのは、すでに売られていますから。ただ、今は非常に値段が高い。それをもっと安くするのに時間がかかるというだけです。

堀江 そうなんですね。

今井 今、いろいろな方が飲んでいますが、それでわかったのはどうも人によって必要な量が違うということ。まあ、当たり前のことですが……。

堀江 そうでしょうね。

今井 あと、現在、市販されているNMNやサンプル商品の結果や感想は、科学的にきちんと検証されたものではありません。それを検証する研究が今、始まったばかりですから。でも、その研究も何年もかかるものではありません。それらの研究結果を基に、2、3年のうちにNMNが抗老化の具体的な物質として使われるようになると思います。

堀江 もし今後、多くの人がNMNなどによって若返ったとして、その後に来る社会がユートピアなのかディストピアなのかというのは、人によって評価が分かれると思いますが。

今井 はい、そうだと思います。例えば私たちが脳を操作して長寿にしたマウスは、中間寿命(群の個体の半数が死亡する時期)と呼ばれるものがメスで16%、オスで9%伸びました。これを人間に換算すると女性は13 、14年くらい寿命が延びる計算で、平均100歳くらいです。男性は7、8年余分に生きられる時間が持てるという感じです。大雑把に言うと健康でいられる時間が10年間伸びた時に、自分はいったい何をするかということをきちんと考えておくことが大事になってくるのだと思います。それはもはや決してサイエンスフィクションではありませんから。

堀江 そうですね。先生、とにかく頑張って研究して、安くなるようにしてください。そして広くみんなが普通に飲めるようにしてください。

今井 わかりました、努力します(笑)。

堀江 NADワールドの話、とても面白かったです。ありがとうございました。

今井 こちらこそ、ありがとうございました。

その1はこちら

Photograph/Edit=柚木大介 Text=村上隆保

今井眞一郎 Shinichiro Imai

1964年生まれ。医学博士。米国ワシントン大学医学部教授。慶應義塾大学医学部卒。哺乳類における老化・寿命のメカニズムの研究及びその理解に基づく抗老化方法論の確立が専門。