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「 集積回路と一緒に 開発したのが良かった」【東工大・益一哉教授が語る MEMS(微小機械)の進化とは?その4】

堀江貴文氏は6月21日、東工大の益一哉氏を取材。「MEMS(微小機械)」の進化などについて話を聞いた。(初回配信日:2016年7月19日)

8インチの集積回路なら、日本は世界一の生産量

 実は今回、これだけは言っておきたいことがあるんです。それは「よく、日本の半導体は斜陽になったと言われているけれど、本当なのか?」ということです。

堀江 どういうことですか?

 フラッシュメモリとか、インテルのプロセッサといった12インチのウェハー(集積回路の基盤となる材料)で作る半導体の製造量でいうと、確かに日本は遅れをとっています。最先端の一番小さいトランジスタを作る技術開発でも、10年前よりパワーが落ちている。でも、8インチのウェハーで作る集積回路の生産量は、まだ世界一なんですよ。みなさん、「日本の半導体は終わった」というような言い方をするけれど、そんなことはない。

堀江 8インチが世界一だと、何ができるんですか?

 スマホに入っている集積回路で、12インチで作っているものは約30%です。通信用のアームとGPU(Graphics Processing Unit/グラフィックプロセッシングユニット)くらい。その他のセンサーなどは8インチで十分対応できています。

堀江 へー。

 これからはIoTなどで、いろんなセンサーが必要とされます。でも、何も最先端の12インチのプロセッサを使わなくても、8インチで十分対応できるんです。しかも、安い。これからは「トリリオン・センサー(1兆個のセンサーを使う)の時代がくる」とか言われてるんですから、日本の8インチの生産ラインを使わなくてどうするんですか。

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堀江 「せっかくあるんだから使おうよ」という話ですよね。

 そうです。これからは世界中のいろんな場所でセンサーを使おうとしているのに、そういう意識がないのは間違っていると思います。

堀江 なるほど。半導体の工場は、やはりアジアに多いんですか?

益 いや、世界中にあります。アジアでは日本、マレーシア、シンガポール、韓国。あとはアメリカやヨーロッパにもあります。それぞれにいろんな特徴があって、8インチのものだけを見ると日本は世界一の生産能力を持っているんです。問題があるとすれば、設計ツールのソフトがアメリカのものであるということ。だから、そこに高いお金を払わなければならない。でも、そういう設計ツールがオープンソース化されれば、生産能力の高い日本の半導体はより優位になれます。

堀江 オープンソース化の流れはないんですか?

益 最近、やっと出始めたところです。

堀江 そうなんですね。

 はい。今日は、「何かを作れば、使ってくれる人がいる」ということを堀江さんとのお話で再認識できたのがよかったです。

堀江 あとは、今、DJがやっているようなことが、これからは大事になってくるということです。音楽の世界で行われていることは、必ず技術の世界にも波及してきます。

益 そういうことを学生たちにぜひ講演していただきたいです。

堀江 機会があればぜひ。今日は貴重なお話を伺えました。どうもありがとうございました。

 こちらこそ、ありがとうございました。

その1はこちら

益一哉 Kazuya Masu

東京工業大学・科学技術創成研究院院長(当時)。1982年、東京工業大学理工学研究科博士課程修了後、東北大学助手、助教授を経て、2000年に東京工業大学教授に。2016年から現職。