WITH

リニアなど多分野に革新をもたらす!?【“永久電流技術”が誕生した話 その3】

堀江貴文氏は、国立研究開発法人理化学研究所生命機能科学研究センター所属の柳澤吉紀氏と山崎俊夫氏から、“永久電流技術”の詳細や想定する活用事例について話を聞いた。

“永久電流技術”の活用事例とは

堀江 これ(高温超電導接合の技術)ができるといろいろ応用できますよね。

山崎俊夫(以下、山崎) はい。我々はこの高温超電導接合の技術を使って、医療検査などで使うMRI (磁気共鳴画像診断装置=磁場と電波を使って体内の状態を画像にする技術)の兄弟にあたる「NMR(核磁気共鳴装置)」を作ろうとしています。
(*NMRは化学、生物学、構造生物学、材料科学、薬学など幅広い分野で利用できる分析機器)

堀江 へー。

山崎 高性能のNMRができれば、例えばアルツハイマー病にかかわるアミロイドβペプチドの構造を微量な試料で分析することができるのではないかと期待されています。

堀江 それは、より高い磁場が作れれば、より細かいものが見られるようになるということですか?

山崎 そうです。高温超伝導の使い方には2通りあって、「比較的高い温度で簡易的に超電導が実現できる」だけでなく、「極端に冷やすことでさらに大きな電流を流せる」んです。

堀江 そうですよね。

山崎 NMRは後者の使い方です。まあ、NMRはかなりマニアックが装置ですが、今回、我々が開発した技術は送電ケーブルや医療用MRI、リニアモーターカー、核融合炉などにも生きてくると思います。リニアモーターカーには永久電流の技術が必要です。高温超電導接合でつなぐことができれば、電流を供給し直さなくても長時間使えます。

堀江 それに、液体窒素はヘリウムより扱いが簡単だし、コストダウンにもなる。そもそもヘリウムの供給が逼迫していますからね。

山崎 そうなんですよ。

堀江 ヘリウムはアメリカの油田から採れるんですけど、軽いのでどんどん蒸発して宇宙に行ってしまう。

山崎 地上にとどまってくれませんよね。

堀江 だから、油田とかに閉じ込められているやつしかない。そのうち、風船とか声を変えるおもしろガスとかなくなっちゃうんじゃないかな。

山崎 そうかもしれませんね。

堀江 まあ、何年後かには高温超電導 を使った医療用MRIやリニアモーターカーができているということでよすね。

山崎 そうです。現在でも、デモ機や技術実証レベルは、かなり進んでいるものがありますから。

堀江 MRIは大電流を流せば、どんどん細かい部分まで見えて、画像診断の技術も上がってくるということですが、大電流を使った高磁場を人体に使っても問題ないんですか ?

山崎  MRIに使う程度の磁場で悪影響があるという報告はないのですが、MRIでは電波も使うので、周波数をあげすぎると電子レンジ効果が出てしまい危険ですね。

堀江 ああ、今度は周波数の問題が出てくるんだ。

山崎  でも、その工夫もいろいろしています。

堀江 血中のヘモグロビンとかは大丈夫なんですか? あれは鉄ですよね?

山崎  影響は多少あって画像は乱れます。でも、逆にそれを利用したのが「fMRI(functional magnetic resonance imaging/磁気共鳴機能画像法)」で、脳内の血流を見ることができるんです。

堀江 へー。やっぱり、人体もある程度の影響は受けるんですね。さっき、実験用の高温超電導装置に近づいたとき、なんかちょっと違和感を覚えたんですよ。だって、僕たちの血液の中には鉄分が流れているわけだから。

柳澤 確かにそうですね。

この続きは『WISS』で全文ご覧いただけます。購読はコチラ

その4へ続く

柳澤吉紀

国立研究開発法人理化学研究所生命機能科学研究センター・機能性超高磁場マグネット技術研究ユニット・ユニットリーダー

山崎俊夫

国立研究開発法人理化学研究所生命機能科学研究センター・構造NMR技術研究ユニット・ユニットリーダー